記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《28.遭 遇》

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湯殿で何度も何度もあのサニエルから触られた部分を必死に洗った。
それでも植え付けられた記憶は掻き消せなかった。
未遂に防げたとは言え、初めての口づけを奪われ、首筋から胸元を汚された事には変わりなかった。
この傷は決して消えることは無い。きっといつまでも自分の中に刻まれたままなのだろうと思うと自然と涙が溢れて来た。

(「駄目よ、アーリア。しっかりしなきゃ!」)

ターニアは今もこんなに心配してくれている。それにマジミール様も自分の咎められる事を物ともせずに必死になって自分を庇ってくれた。
セイラル王子も、王妃様、そして退王様も自分を気遣ってくれた。
その方たちの為にも自分は一日も早く元気にならなくてはいけないのだ。
湯には浸からず洗い流す程度にして下さいと言われていた為、湯には勿論浸からなかったが、何度も何度も洗う内に湯船のお湯は既に半分以下まで減っていた。
その状況からもアーリアがどれだけ真剣に肌を清めようとしたかが伺える。
心を強く持とうと自分に言い聞かせ、脱衣場で身体を拭き侍女が用意してくれていた、夜着を開いてみてアーリアは狼狽えた。

(「なななな、何? 何故こんなに生地が薄いの!?」)

生地の薄いナイトドレスに浸かっても居ないのに湯あたりのような眩暈を覚えた。
とりあえず着るものがそれしか無いので身に纏ってはみたが、今まで着ていた物と全く異なる薄い生地のナイトドレスに慌てて湯殿を出ると侍女のいる部屋まで駆け抜けた。

「た、ターニア! ターニア!? これは一体どういう事なの!!」

自室を横切りリビングに顔を覗かせた途端侍女以外の者の姿を目にし、アーリアは驚愕した。

「キャッ!!」

出た先で少し遠目ではあるが侍女のターニアと話していた者の姿は・・・・。
慌てて再びまた湯殿へと駆け込んだ。

(「ど、どどどどどうしてマジミール様がここにいるの!?」)

もぅ頭は完全にパニックだ。何が何だか分らない。
すっかり『また後程』と言った言葉は抜け落ちていた。

(「って、言うか、今見られた!? あんなスケスケのシュミーズのようなナイトドレスをマジミール様に!?」)

(「もぅ駄目だ!」)

アーリアは身を隠した脱衣場で力なく座り込んだ。ここから一歩も出る事が出来そうな気がしない・・・・。
完全に助けて貰った時に既に見られているかもしれない事等は、頭の隅にも残っていなかった。

『アーリア様。そちらにローブがございますでしょう?』

考え込んでいる先で侍女の声が聞こえて来て、再び慌てた。

「なっ、無いわ!」

『あら、可笑しいですわね。お忘れかしら!? すみません。あの先のチェストまで宜しいですか?』

『はい』

少し布ズレするような音が聞こえ、どうやらターニアは従者に肩でも貸して貰い移動しているようだった。
程なくして再び戻って来たターニアからアーリアは無事ローブを受け取る事が出来た。

ナイトドレスの上からしっかり身に纏う。勿論今度はスケスケではない。
所がアーリアは中々脱衣場から出られない。先程の姿をあの従者に見られたかと思うと、とても直ぐには顔を合わせられそうになかったのだ。
脱衣場でずっと、もじもじしていると・・・・。

『アーリア様、マジミール様が湯冷ましのハーブティーをご用意下さいましたから、早く出ていらして下さいね』

「えっ、は、はい」

ずっとここに留まっておくことも出来ず、結局アーリアは心を決め、私室への扉を開き、その先のリビングへ顔を覗かせた。

「あっ、あら? マジミール様は!?」

「お嬢様にこれ以上嫌われては不味いからと、お茶の用意だけなさって退散いたしました」

「えっ!?」

「冗談です。ご自分がここにいては、アーリア様は出て来られないでしょうからと王子様のお部屋へ戻られました」

「そっ、そうなの・・・・。それで、まっ、マジミール様は何用でこちらへ!?」

「私に杖を作ってくれるそうですわ。そうすれば多少不便でも動けますし」

「そう。それは良かったわね」

「はい。良くできたお方です」

そう言いながら侍女が注いでくれたお茶からは、レモンに似た香りがし、飲めばスーと喉ごし爽やかなものだった。

「・・・・美味しい・・・・」

それに何処かとても懐かしい味がした。

(「この味、何処かで・・・・。でも、一体何処だったかしら・・・・?」)

レモングラスとペパーミントが入っているのには気づいたが、それともぅ一つ何かがこのお茶には入っている?
アーリアは遠い記憶を呼び起こす様に暫く少し考え込んだ。

「今度調合習っておきますね」

「お願いね」

セイラルはある事を願いこのお茶を用意した。
リアが・・・・、アーリアの記憶が呼び覚まされますようにと・・・・深い記憶を辿って。

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