記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《30.度 胸》

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湯上りのティータイムを楽しんだ後、先程の侍医の助手から湿布を貼って貰い、アーリアは今向かうべき部屋へと移動している最中だ。

主寝室の扉の取っ手を握る手が震える。

「・・・・・た、ターニア?」

「何でございましょうかお嬢様」

「私、今日はそちらのソファーで休んでは駄目かしら・・・・」

何を言い出すかと思えば・・・・。侍女は呆れ返った。

「お嬢様、往生際が悪すぎます! お心はお察し致しますが、きちんとご婚約もされた身です。何の問題もありません。それに今日はお気持ちをお察しして、お渡りがありましてもきっとお優しくして下さると思いますし、何よりまだいらっしゃるかも分らないでは無いですか。女は度胸ですよ、お嬢様。お休みなさいませ、お嬢様」

「・・・・おやすみなさい・・・・」

アーリアは思い切って主寝室の扉を叩いてみるが、中からは何の返答も無く、とりあえずホッとして扉を開いた。
すると・・・・。

「たっ、ターニアッ!!!!!」

「今度は何でございますか?お嬢様」

侍女は少し呆れ顔だ。

「まっ、真っ暗なの。・・・・怖くて中に入れない・・・・」

「ああ、そう言えばマジミール様がおっしゃっておりました。王子様は少しでも明かりがあると眠れないのだそうです。ですから明かりは持ち込まぬ様にと・・・・」

「そっ、そんなの無理ぃーーー!!」

実はアーリアはかなりの怖がりだ。この年になっても暗い所に一人で出かけられない。夜目に弱いと言うせいもあるだろうが、微弱の明かりでも殆ど見えないのだ。

「アーリア様、ここは王宮です。それも王子様の部屋との続間です。怖い輩など出ませんし、例え出たとしても王子様もマジミール様も騎士称号をお持ちです。直ぐに退治してくださいます。安心してお休みくださいませ」

「・・・・でも・・・・」

「で・も・は、無しです! 次に戻られたら、私・・・・、辞めさせて頂きますよ!」

「・・・・そんなぁ‥‥」

「では、おやすみなさいませ」

「・・・・・おやすみなさい」

結局アーリアは、怖くても主寝室に足を踏み入れる他なく、そろりと足を進めると、その扉を閉めた。
もう心臓は自分のものとは思えぬほどバクバクと高鳴っていた。


セイラルは髪を拭き、夜着に着替えると直ぐに主寝室の扉を開いた。
直ぐに視界に入って来たベッドには誰の姿も無く、少しがっかりしたが、とりあえずベッドの上に腰を下ろしていた。
流石にここまで暗いと場合によっては明かりも必要かと小脇に置いてあるサイドテーブルの引き出しの中に置かれてある筈の簡易ランプの有無を確認しようと引き出しを開けた途端、カタッと微かに音がしたのが原因か?

「キャぁーーーー!!」

と、叫ぶ声が聞こえ、セイラルの方が一瞬驚いた。

「ア、アーリア?」

おそるおそる声を掛けてみるが返事が無かった。

宵闇の中、目を凝らしてみれば、対側の扉の側で倒れているアーリアの姿を見つけ慌てて駆け寄った。

「アーリア、アーリア!?」

ペチペチと頬を軽く打つが、返事が無い。

『あ、アーリア様!?』

傍の扉から、侍女の声が聞こえて来た。

「大事ない。少し驚かれて気をやられたようだ。夜目は弱いのか?」

『あっ、はい。微弱の光では殆ど見えないそうで、大層の怖がりでございます』

その返答に、セイラルは声を殺してクツクツと笑い出した。

『あ、あの、私何か変な事を申しましたでしょうか!?』

「ああ、済まない。あまりにその反応が可愛らしくて・・・・。今宵は私が介抱して差し上げるから貴方はゆっくり足を休めて下さい」

『は、はい。おやすみなさいませ』

「おやすみ」

セイラルはアーリアを抱き上げると、宵闇をものともせずベッドまでスタスタと歩き出した。
フカフカなベッドの中腹にアーリアを横たえると、優しくその頬を撫ぜ、愛しげに唇を寄せた。

「ここまで同じだなんて、嬉しい限りですよ、アーリア」

ラルの知るリアも、アーリアと同じなのだ。夜目の効かない怖がりな娘。
その事にとても喜びを感じるセイラルだった。


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~ Comment ~

NoTitle 

や~だ~!気を失って終わり~?チッ←(笑)
侍女もなにげにいいキャラしてますね~~~~!(^m^)
おもわずニヤニヤしながら拝読してました~(笑)

まぁ王子様はお姫様が気を失ってもなんでも自分の手の中にいればなんでもいいのでしょうが~^^

このまんま朝になっちゃうの~?え~!…とか(笑)
うふふふ(^m^)
先を楽しみにしてます~♪

はのん様 

気を失って終わりですが、結構この話は個人的に気に入っていたりします♪

このまま朝? ビクッ!! えっとぉ、・・・・少し? (笑)
まぁ、セイラルに与えられた時間はとりあえず1週間あるので・・・・。
まぁ、この二人かなり複雑なので、書くのも苦労しまくってます。
なんでこんな難しい設定にしたかなぁ^^;(隠し事多すぎだわ^^;)
もぅ最後何処まで明かすかはセイラルに任せました。
ああ、見直しに手を掛け過ぎてストック増えない^^;頑張らなきゃ。

いつも有り難うございます^^
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