記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《31.宵 闇》

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目を覚ますと、宵闇の中にいた。
だが身体がとても暖かい何かに包まれている。とても心地よくて安心できる。

「まだ、夢の中に居るのかしら・・・・」

ポソリとそう呟けば、思いもよらず返答が帰って来た。

「そうですよ。まだ夢の中でまどろんでいてください」

優しい声にそう告げられギュッと絞め付けられた。
人の上で抱きすくめられているのだと気付き、一瞬固まった。

「えっ? えっ? ? あの!?」

意識すると急に恥ずかしくなりアーリアはバタバタと身を捩ってその腕から逃れようと試みる。

「お嫌でしたか? 私にこうされる事が・・・・」

「えっと・・・・!?」

さも当然な出来事な様な物言いに一瞬何を言われているのか分らず考え込んだ。

「分りませんか? ラルですよ。貴女のラルです」

「・・・・ラル?」

今までの夢の中の会話より、何処か現実的だ。
不思議と恐怖心は無かった。それ所が安心感に包まれている自分がそこに居た。

「はい。可笑しいですね。恋人の名を忘れてしまったのですか?」

「恋人? 」

「はい。私の愛するリア」  

「リア?」

何かを守ろうとするかのように優しく頭を撫ぜられ、額に濡れそぼった何かが降って来て、その温かさに包まれた。

「あっ・・・・」

とても心地よい。確かに私はこの暖かさを知っている。とても懐かしい感触だった。

「夢の様です。再び貴方をこの胸に抱けるなんて・・・・」

(「これはやはり夢だわ。夢。私があのリア姫の筈が無いもの・・・・」)

「あの・・・・私はどうしてここに?」

「ああ、宵闇の苦手な貴女は物音に驚いて意識を手放したのです。それを恋人の私が見つけて今お世話している所です」

その言葉にハッとして気が付いた!

「わっ、私リアじゃないわ。アーリアよ! 今日第一王子のセイラル様と婚約して・・・・そして‥‥」

現実に連れ戻されて、慌てて身を捩った。

「痛っ!!」

「暴れては傷に響きますよ。それに、辛い事は思い出されない方が良い・・・・」

「・・・・知っているの? 貴方は全てを・・・・。誰? 誰なの!?」

全身の筋肉が強張り、震え出す。一瞬にしてあの時の男の顔が思い出された。
まさか、この場に忍び込んで!?

「い・・・・イヤッ! ヤダ!! 離して!! お願い!!」

もぅ頭はパニックだ。

「落ち着いて下さい。暴れては傷に触ります! 怖がらせるつもりは無かったのです。私はあの者とは違う! それに、貴女を傷つける真似だけは絶対にしない! 命を掛けても良い!!」

気迫の籠ったその真剣な声音に、少し戸惑った。
確かによくよく聞いてみると声はあの者では無い・・・・。ならば誰? この部屋には護衛もしっかり付いていて、入れるとすれば侍女か従者か殿下しか・・・・。

「貴方はもしかして・・・・セイラル殿下なの?」

知る声と少し違う気がするが、正式の場での彼しか自分は知らない。
声質は確かに似ているし、もしかして寛げるとこのような声音になるのだろうか?

「それは御想像にお任せします。ですが、そうですね。唯一つ真実をお教えすると、私は過去においても現在も貴方の宵闇の夫とでも申しておきましょうか」

「・・・・宵闇の・・・・夫?」

「ええ、名前は貴方の御存じの通り、ラルです。ずっと先程まで意識を手放してなおも呼び続けて下さっていた貴女の愛しい者の名ですよ」

「・・・・私が・・・・呼んで・・・・いた?」

「はい。私を置いて行かないでと叫んで下さいましたよ?」

目を閉じて記憶を辿れば闇の中で、このラルと名乗る人物が優しく微笑んでいるのが感じられた。

「あっ‥‥」

「ねっ、思い出しましたか?」

そう告げられ、いつもの発作のような夢と記憶が重なる。
この者は本当にあのラルなの?
私の夢の言葉を聞いて、ラルのふりをしているだけでは無いのだろうか?

「何だか信用して頂けないようですね。良いでしょう。では、貴女が私をラルである事を信用して下さるまで待ちます。ですが認めて下さった暁には・・・・」

言葉はそこで途切れたが、この宵闇の夫と名乗る人物が何を告げようとしているかは理解出来た。思わず身が竦む。

「今日は色々あってお疲れでしょうからゆっくりこのまま休まれて下さい。勿論それまでは何もしませんから。お休みなさい。私の愛しいリア」

そう告げると先程と同じく額にそっと暖かな温もりを落すとラルと名乗る宵闇の夫はアーリアを横へと移動させ、背を向けると深い眠りについた様だった。
絶対に眠れる筈が無いと思っていたアーリアだったが、いつの間にか背中を介して伝わる暖かい温もりに安心し、夢の中へと微睡んで行った。

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