記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《32.爽 朝》

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心地よく微睡んでいたら、侍女が扉を叩く音がした。

『お嬢様!? アーリア様、お目覚めでございますか?』

その声にびっくりして慌てて飛び起きた。

「えっ、ええ、起きているわ」 

カーテンの隙間から朝の光がほんのりと差し込んでいる。
隣には誰も居ない。
昨夜の宵闇の夫と名のったラルは夢だったのだろうか?

『冷たいタオルもご用意しておりますが、お入りしても宜しゅうございますでしょうか』

「ええ」

『失礼致します』

そう告げ入って来た侍女は左手に杖を付きながら畳んだ濡れタオルを持って入って来た。

「おはようございますアーリア様」

「おはようターニア。杖、もう出来たのね」

「はい。今朝早くにマジミール様がこっそり持って来て下さいました。腰にも負担掛ける事無くとても歩きやすくて重宝しております」

「それは良かったわ」

「あら? アーリア様。昨夜は夢に魘されなかったのですか?」

「えっ!? あっ、そう言えば・・・・、とても良い目覚めだったわ」

「まぁ、それは良うございました。これもセイラル殿下のお蔭ですわね」

侍女は昨夜セイラル王子の訪れがあったと思っている様だ。

「・・・・あれは、現実の事なのかしら?」

「はぁっ!? お嬢様何を言って? でも夕べ・・・・」

「何?」

「あっ、いえ。別に何も・・・・」

含む様にそう告げるとターニアをクスクスと何かとても嬉しそうだ。

「何よ」

「いえ。お嬢様、お可愛いと思いまして」

ターニアはアーリアが恥ずかしがって王子の訪れを隠しているのだと思った。

「変なターニア」

そう言い冷たいタオルを受け取ると、アーリアはそれを顔に宛がった。

「やっぱり気持ちがいいわね。朝の冷たいタオルは」

「では、これからも毎日お持ちしましょうね」

「お願い」

従者に恋をし、あの伝記の夢を見るようになってから1か月。夢にうなされずに爽やかな朝を迎えたのは初めてだった。
夕べの出来事は現実だったのか、それとも夢だったのか?
でも、背にはとても暖かな温もりが残っている気がした。

着替えを済ませ、既に朝議を済ませたと言う王子と私室のリビングで朝食の席を並べた。

「おはようございます殿下。昨夜は色々とお気遣い、ご迷惑をおかけ致しまして申し訳ございませんでした」

「いえ。とんでもありません。こちらこそ数々の不手際、ご容赦ください」

爽やかな笑顔でそう告げられ、思い切って聞いてみる事にした。

「あの・・・・昨夜は・・・・その・・・・」

「ああ、マジミールが貴女の夜着姿を見てしまったと私に申し訳なく申しておりました。私も気にしておりませんので、貴女もそう気にする事はありませんよ。さぁ、早く頂きましょう。夕べは緊張のあまり私も食事が喉を通らず今日は腹ペコなのですよ」

にっこり微笑むと王子はそう告げた。

やはり、自分の気のせいなのだろうか?
二人きりだと言うのに昨夜の宵闇の事には全く触れる気配も無い。
もし、あれが夢で無いのであればラルがやはりセイラル王子なのではないかと結論付けていたアーリアだったが、王子の様子に更なる疑念を拭いきれず再び困惑する事になった。

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