記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《35.戸 惑》

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毎夜、宵闇の夫ラルと名乗る者が現れて五日目。アーリアは自分の行動に戸惑っていた。
このままラルのペースに飲み込まれ身を任せてしまって良いものなのだろうか?
自分は今あの従者マジミールに想いを寄せていた筈なのだ。
それが最近マジミールの姿が見えないのを良い事に、いつの間にかラルにその姿を重ねて流されている自分に気付いたのだ・・・・。
自分の気持ちはこんなに浮ついたものだったのか?
あれ程焦がれた人が少し姿を見せぬだけで、想いがどんどんラルに傾いて行くのが自分でも手に取るように分かった。

(「私はこんなに軽薄な人間だったのかしら・・・・」)

自らに対し自責の念に駆られる。
それなのに今夜も主寝室に身を置き、ドキドキしながら宵闇の夫と名乗るラルの訪れを待っている自分が信じられなかった。


やがて宵闇の中から声が聞こえてくる。

「お待たせいたしました私の愛しい人」

(「ラル!」)

その声を聞けば思わず心が弾む。
自分の横にスルリと入る宵闇の夫ラルを自分は今宵も高鳴る気持ちで迎えようとしている。
良心への呵責を感じずにはいられない。

「今日は何処からお話ししましょうか」

そうなのだ、いつもこのペースでつい乱されてしまうのだ。
過去において自分が関わったかもしれない話について語ってくれると告げられれば興味が湧かずにはいられない。
今日こそはペースに飲み込まれてなるものかと必死で身構えていたら、自分を覗き込むような近い位置にラルの顔がある事に気付く。
彼の息遣いがその頬にかかりギョッとした。
自分でも思わず頬が真っ赤に染まり熱くなっているのが分かる。

「さ、昨夜の続きから・・・・。リアと再会したのですよね」

アーリアは戸惑いながらも結局話を返して昨夜の話の続きをねだってしまった。

「そうです。貴女は私の居る事に気付きもせずに私の名を呼んでくれていたのですよ。『私のラル、貴方は何処にいるの?』と」

「まぁ!」

失敗だ。ここで声を弾ませてどうする! 心の中で自分を戒める。

「抱きしめた私の腕の中で、貴女は泣きながら『会いたかった』と言ってくれたのです。私はこうやって今のように貴女をこの腕に抱きしめました」

物語を語る様に、宵闇の夫ラルの胸にギュッと抱きすくめられた。

「私では無くリア姫を!」

「そうでした・・・・」

少し厳しい口調で自分では無く、それはリアなのだと言ってはみたが、薄笑みの零れる中でそっと唇が重ねられてしまう。
軽く啄むような口づけの中でアーリアは戸惑いながらもいつも結局は抗えない事を知る。

ここ数日、宵闇の中で毎日ラルの優しい言葉と共に過去の話を聞いていると、とても心が震える。
彼の声を聞くだけで、胸の中が熱くなってくるこの衝動をどう抑えれば良いのか分らなくなってしまう。
話の中には、時折伝記に記されている事柄だけでは無く、告げられた事で失われたはずの記憶を呼び起こすかのような不思議な感覚に陥る事もある。
それは最初の頃より多くなっている気がする。もしかして、記憶が呼びさまされているのか?
それでもアーリアはここで肯定する訳には行かないと、何処かで心に蓋をしていた。
自分の中でのリアを、アーリアとして否定し続ける為に。
それなのにどうしてこんなにも易々と自分はラルに唇を許してしまっているのか?
流されては駄目だと自制しているつもりでいるのにどうして自分は抗えないのか?

「あっ‥‥ラル・・・・お願い・・・・やめて・・・・」

アーリアは急に身を固くし、ラルの胸を何とか押し戻した。

「・・・・リア・・・・」

切な気なその声音に胸が痛む。
拒絶するつもりが、その言葉が口から出て来ない。

「・・・・あ、あの・・・・。お、お話をもっと聞きたくて・・・・。そっ、それで、どうやって恋人同士に?」

ラルの動きを制するが為に何とか言葉を口にしてみたが、こんな子供騙しの話に大して効果があるとも思えない。
俯きながら話の続きが聞きたい等と誤魔化すが何処までこのラルに通用するのだろうか?
瞬間に怪訝そうな空気が流れ、もしかして機嫌を損ねてしまったのではないかと言う不安が過る。

ここ数日ラルを期待させるような素振りを続けていると言うのに、急に今更このような事を望むと言うのは流石に卑怯だ。
ラルはいつも期待している。アーリアがリアであると認めてくれる事を。
それなのに・・・・。
もしかしてラルを傷つけてしまうのではないかと思うと不安が突如沸き起こり戸惑っていたその時、鼻先でフッと笑われた。

(「何故ここで笑えるの!?」)

ラルは決して自分を責める事をしない。
いつもリアとアーリアの事を一番に考えてくれている。
ラルの寛容な想いの深さに心がズキリと痛んだ。

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~ Comment ~

NoTitle 

早く明かしてやろうよ~(笑)
嫉妬ってそれ自業自得だから~(^m^)ププ
あなたよりもアーリアちゃんのほうがカワイソだよ~!
自分はけっこう状況楽しんでんじゃん!(笑)
でもそりゃうきうきもしますわな…(笑)
やっぱ不憫だ~^^;
でもお話としてはいいわ~~~!^^b
ジレ大好き(^m^)

はのん 様 

明かす!?(笑)
もぅ私もどうしようかと考えあぐねて進めて行き、結局の判断はセイラルに任せちゃいました(爆)
本当に何処まで明かすか悩みに悩んでいたら彼が動いてくれたんだけど、その後収拾がつけ辛くなってしまい、どうするよって感じなんですが、何か頭を捻っております^^;(お蔭で進まない・・・・)
セイラルはどう見てもウキウキだよね(笑)
アーリアは何処までも不憫だけど、その負担の比重がまた今後どうなって行くのかお楽しみ下さい^^
ジレジレ大好きってとっても心強い言葉です♪

いつも有り難うございます^^
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