記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《38.闇 間》R-15

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セイラルが宵闇の夫ラルと名乗って七日目。サニエルは明日にも放免されもう日が無い。
今日こそはゆったり構えているだけでは事は済まされない!

自分がリアであった事を認め、一昨日から身を預けてくれるようになったアーリアだったが、思う所があるようで途中で待ったをかけられた。
あの時自分が本当のセイラルだと告げていれば事は成就出来ていたのか?
だが、おそらくそれだけではない。
彼女の心の中には他にも思う所があるように感じた。それはリアでは無く、アーリアの想いだ・・・・。
誰もが羨む一国の跡継ぎとなる王子からの結婚の申し出に、中々色よい返事がもらえなかった事を想えば、おそらくアーリアには既に想う者が居た事を推測させる。
その者はどの様な者だったのか?
想像の域を超える事は出来ないが恐らくそれは間違いないと思う。
その者への想いの強さが、今も自分を受け入れながらも最終的に拒み続ける本当の理由ではないのかと思えば嫉妬に狂いそうになる。
初めてだったと言う口づけはあの鬼畜な弟に奪われた。これ以上奴に手を拱いて奴に何もかもを譲るつもりは無かった。
今この場で攻め落とせる可能性が唯一残されているのは、リアとしてのアーリアが抱えるラルへの強い想い。それだけだった。
だから今はそれに賭けるしか道は残されて居ないのだ。
ひたすら強い思いの丈を根気よく捧げ続け、その結果、昨夜は抗いながらもギリギリの所までラルを受け入れてくれた。
嬉しかった。やっとだ。やっとここまで来れたのだと思えば感慨もひとしおだった。
結局はこれでようやく想いが成就できると思った瞬間、またも拒否されてしまったが、ここまで火のついてしまった想いを押さえるには、もぅ一つしか道は残されていなかった。
今のアーリアにとって、やはりリアでは無くアーリアの感情の方が最終的には重いのだから。

『ごめんなさい・・・・ラルへの気持ちは変わらない・・・・。でも・・・・ごめんなさい・・・・やっぱり無理なの・・・・』

記憶の中で幾ら愛していても、結局アーリアが生きているのは過去では無く今であると言う事は昨夜狂おしい程に理解した。


目の前でしゃくり上げ、泣きじゃくる姿をどうしても断ち切れず、寸前の所で期待にわななく濡れそぼった己の相棒を歯噛みしながら引き上げた。
押し切ってしまおうと言う思いもあったが、嗚咽を伴う姿にどうしても無理強いが出来なかった。
惚れた弱みとしか言いようがない。
だが、その時既に己がそのまま放置できる状況では無く、前夜の様に肩を抱き、優しく隣で眠る等と言う芸当はとても出来る状態では無かった。
すぐさまローブを纏うと足早に主寝室を抜け出してしまった。
そのまま湯殿へと駆け込み自慰行為に至ってしまった事は言うまでも無い・・・・。

その後主寝室に戻る勇気も無く、気まずい雰囲気のまま最終日を迎える事になってしまった。
我ながら情け無い話だ。
ハッキリ言って今夜あの部屋に行くのはかなりバツが悪い。
だが、そのような事を言って居られる状況でも無い。今日を逃せば後は無い。
腹違いの弟サニエルが放免となり自由の身になれば、アーリアには近づかないようにと口では言ってはいても、この状況のままでは次に奴がどの様な行動に出て来るか分かったものでは無い。
もぅ奴の手に委ねる訳には絶対にいかない!
それに自身も、もう限界だった・・・・。 

目を閉じ、扉の前で大きく深呼吸するとそっと主寝室の扉を開いた。
いつも先に来ている筈のアーリアの姿が今日は無く、一瞬目の前が真っ暗になる。
喪失感が漂った・・・・。
昨夜途中で中々止めてやれなかった自分に対し、流石に恐怖の念を抱いたのかもしれない。
しかし、今夜このまま尻込みする訳には行かなかった。

奥歯を噛みしめ、アーリアの部屋の前まで向かうと、主寝室側から扉を叩いた。
暫く待たされたが、程なく侍女の声が聞こえて来て胸を撫ぜ下ろす。

『さぁ、お嬢様早くしてください。もう王子様はお待ちかねですよ』

『嫌よ!今日は行きたくないの!』

『何を馬鹿な事を言っているのですか!良いのですか?そんなに駄々を捏ねる様でしたら私は本当にここから出て行きますからね!! これ以上は付き合いきれません!!』

『そんなに人の弱みに付け込む事ないじゃない!』

『・・・・分りました。お嬢様、長らくお世話になりました。本日を持ちまして私は・・・・』

『わっ、分かったわよターニア!』

二人の会話を扉越しに聞きながら、思わず声を押さえつつも笑ってしまった。
何と良くできた侍女だろう。これは給金を見直してやるかと心の中で微笑んだ。


程なくして足音が近づいて来て、取っ手がカチャリと回される。
セイラルは内側から取っ手をグイッと思い切り引っ張った。

「キャッ!!」

取っ手を掴んでいたアーリアは扉と一緒に引き寄せられる形となり、倒れそうになったその身を受け止められた。
身を預けた者の姿が一瞬だが自室の明かりに照らされ、その見知らぬ男の姿にハッとした。

「あ、あ、あなたは、誰?」

柔らかな薄い金色の髪に深い薄紺の瞳。
精鍛な顔立ちに一瞬目を奪われたが、パタリと扉が閉められた瞬間、身を固くした。
一瞬にしてまた闇に埋もれてしまったが、それはアーリアの知る誰の姿でも無かった。

「ラルですよ」

「あなたが・・・・、ラル?」

やはり彼はセイラル王子では無かったのだ!
そう思うと、即刻声を荒げその場から立ち去りたくなる衝動に一瞬囚われたが、直ぐに唇を塞がれそのまま抱き上げられ、それは叶わなかった。

数日に渡り教え込まれた激しい口づけに翻弄されてしまう自分の行いを恥じていたと言うのに、塞がれてしまえばもぅ抗う事等到底無理で・・・・。
アーリアは途方に暮れた。

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NoTitle 

きゃー!いっちゃっていっちゃって~~~(笑)
惚れた弱み言ってる暇ないから~!^^b
うふふふふ~いいねぇ~v-238
らぶらぶe-266
…ちょっと微妙だけど(笑)
ラルかっけ~~~~ね(^m^)
好みだ~ププ^^
男が我慢してるのもいいねぇ~♪おほほほほ…
楽しすぎる…(笑)

はのん様 

喜んで貰えたようで良かったです^^
そうね、語る暇あったら先に進めって!?(笑)

ラル好みですか? 良かったです。超嬉しい(^^) /
今回金髪の初お目見えのラルの姿が書きながら目の前にチラついた時、しっかり描いて頂いたラルでした^^

楽しすぎる? 納得されるものになっているか皆無ですが今夜からもっと楽しんで頂ければ幸いです(笑)

いつも有り難うございます^^
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