記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《45.突 然》

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微睡みの中で目を覚ますと、カーテンの隙間から僅かに柔らかな光が漏れていた。
横には人の温もりが感じられ、それは夢で無ければ愛しい者の姿。
夢なら冷めないでほしい。でも、本当に横にいるのはあのマジミール様ならば・・・・。
気だるい身体と、下腹部に残る圧迫感。
おそらく・・・・、多分・・・・、きっと間違いではないと思いつつも、少し恐れている自分がそこに居た。
勇気を出しそっと少しだけ横に顔を傾けると微かに感じられる彼の精鍛な顔立ちに思わず涙が溢れた。
昨夜は宵闇で全く見えなかったが、柔らかな陽の光にぼんやりと目の前に映し出された姿は間違いなくアーリアがずっと求めて病まないマジミール、その人だった。
自然と涙が溢れて来る。

「愛しています。マジミール様・・・・」

言葉だけでは語りつくせない感情が沸き起こり、アーリアは昨夜翻弄され口に出来なかった彼への想いを、そっと頬を寄せ囁いた。
中々正面切って言い出し辛い言葉でも、今寝ている間だけならば堂々と伝えられる。
顔だって恥ずかしさに目を背ける事無くじっと見ている事が出来ると思うとそれだけでとても嬉しくなってくる。
見ているだけでこれ程の満ち足りた幸せを感じる事が出来るなんて・・・・。
そう思い、暫くじぃーっと見つめていると、いきなり腕が伸びて来て抱き寄せられると軽くチュッと口づけられた。

「えっ!?」

てっきり寝ているものだと思い込んでいたアーリアは、まさかの出来事に一瞬にしてパニックに陥った。
一人でオロオロしていると、今度はクスリッと笑われた。

「ずっと何時キスしてくれるか待っていたのに・・・・」

「・・・・えっと、それは・・・・」

「それに、その名で呼ばれるのも何か複雑‥‥」

元より返事が返ってこようとは露とも思っていなかったから、その言葉があまりに意表をついたもので、アーリアはどう対処していいのか分らず戸惑ってしまい結局、再び困惑し掛布の中に潜り込んでしまった。

(「複雑って、複雑って何!?・・・・」)

自分に愛を告げられる事が、それ程心外な事だったのだろうか・・・・。
幸せに酔いしれていた筈の気分がすっかり悲壮めいて行き、涙が溢れて来た。

『・・・・ひっくっ・・・・ぐすん・・・・』

「えっ!? ア、アーリア!?」

まさかのくぐもった鳴き声にセイラルは慌てた。

『・・・・酷いです。何時から起きていらしたのですか? それにその言い方・・・・。私の愛はマジミール様には重いのですか・・・・』

アーリアは掛布を自分の方へと手繰り寄せ更に引っ張り距離を取ろうとするが、長い腕を伸ばした宵闇の夫に直ぐに捉えられた。

「駄目です。離しません」

『でっ、でも・・・・』

アーリアは恥ずかしそうに身を捩る。

(「可愛すぎる! 如何してくれよう!!」)

遠い過去、リアとの初めての朝もこうやって不意打ちに告白を受けた事を思い出す。
だが、どうしてだろう。今のアーリアの方が何倍も可愛く思えるのは自分がラルの抱える想いを乗り越えられたと言う事なのだろうか?
自分はやっとリアだけでは無く、アーリアの心までをも掴む事が出来たのだと思うと感慨もひとしおだ。思わず顔が綻ぶ。

だが、この雰囲気の中でいつまでも微睡んでばかりはいられない。
自分が従者マジミールだと明かしてしまったからには、これだけはどうしてもアーリアに話しをし、了承して貰わなければならない事なのだから・・・・。

「そう受け取られるのは心外です。私も勿論貴女を愛している。昨夜も言いましたが、その言葉に嘘偽りはない! 信じて貰えますか?」

『・・・・はい・・・・』

セイラルはその言葉に安堵した。

「ただ、先程私が複雑だと思わず告げてしまったのは・・・・」

何かを言いかけて言葉を止めた。

「アーリア、私を見て。この事はきちんと貴女と向き合って話がしたい」

何処か張りつめた声にアーリアは掛布から顔を少しだけ覗かせた。

「実は、貴女に聞いて貰いたい話がある。これはとても重要な事なのです。心して聞いて貰えますか?」

真剣な眼差しで見つめられ、アーリアは何事なのかと緊張し身を固くしながらも掛布から抜け出し姿勢を正した。

「はい・・・・」

きちんと宵闇の夫の方を向き直り、身構える。そして、告げられた言葉は・・・・。

「今の私が、あのマジミールであると言う事は、今この場で全て忘れて下さい」

「えっ!?」

あまりに突然告げられた思いもよらぬ言葉に、アーリアは一瞬我が耳を疑った。

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