パウリンの娘

パウリンの娘《第8章6》

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「今日の練習は無しだ!」

泣き止んで気丈に振る舞おうとしているローレライにゼロは憮然とそう告げた。

「どうして? 休んでいる余裕なんて私には・・・・」

「そんな精神状態の時に剣を繰り出した所で何の訓練にもならん。おざなりに剣を振り回されても迷惑だ!」

ゼロは厳しかった。
確かにそれは一理ある。
それは先程の表情は何処かに置き忘れて来たのかと思わせるような、いつもの憮然とした態度だった。

「もぅ大丈夫です」

厳しいゼロの姿を見るとローレライも一段と心を強く持たなくてはと更に力が入った。

「逆効果だったか・・・・」

ゼロはポツリと呟くと今度はフゥ―と深いため息をついた。

「粋がるな。こういう時に無理すると怪我をするだろ?」

そう言われた時、自分が気負っていたからゼロが気丈に振る舞ってくれていた事が分かった。
ローレライの表情が柔らかくなるとゼロが少し微笑みながらローレライの頭をクシャクシャっと撫ぜてくれた。
そうなのだ、この人は自分とそれを取り巻く環境に厳しいだけで、本当はとても優しい面を持っている人なのだ。

「ジュリアスの足の状態も良さそうだ。これから先ず草の上で馴らすぞ。調子が良さそうならそのまま騎乗して帰れる」

指笛を鳴らして馬を呼んでくれた。

気持ち良さそうに草原の向こうからジュリアスとイクタシオが駆けて来た。
ああ、本当にこうやって並んで走ってくるとそっくりだとローレライは思った。

傍に来るとゼロはジュリアスの背を撫ぜた後、痛めた足を上げさせて労わるように擦り確認している。

“ほら、こういう所。馬にもやはり優しい”

思うわずローレライは顔がほころんだ。


乗ってみろと言われて恐る恐るジュリアスに騎乗してみる。

「大丈夫!? 痛くない? このままゆっくりで良いからね」

ローレライは度々ジュリアスに話しかけていた。
ゼロはその事が可笑しくて仕方ない。

「もぅそれ位にしておけ。少し過保護ではないか!?」

「でも、また痛めたりしたら・・・・」

「大丈夫だ。こいつも同じ所を以前やった事がある。長距離を走った後は気をつけて薬を貼ってやったりしていたが、今は全然大丈夫だ。その内筋力がもっとついて来れば痛めなくなる」

そうだったのね。
だからゼロは薬の作り方も知っていたのだ。

「薬の作り方はどうやって!?」

「厩舎の馬番にな。俺にとってこいつは戦友だからな。家族と同じだ。こいつが居なければ俺はきっと既にこの世にはいなかったかもしれん」

戦友・・・・。
馬を友と・・・・家族と呼べる人。
ローレライにとって屋敷で飼っている動物たちは皆家族であり友であった。
それを口にすると屋敷の者達や友人の中には笑顔で同意してくれる人もいる。
家族もそうだけれど、他人の・・・・それも男性の口からその言葉を聞くのは初めてだった。
ローレライはゼロの事を今まで自分とは真逆の人だと思っていたが、もしかしたら似ているのかもしれないと感じ始めていた。

“知りたい・・・・ゼロの事がもっと・・・・”

自然とそう思った。

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~ Comment ~

NoTitle 

知って知って~(笑)
早く距離縮まるといいね~~♪
っていうか、私が早くみたいだけ^^;

はのん様 

ホント私も書きながらいつもヤキモキしてた(笑)
一山超える毎に少しずつヤキモキが解消されて行くんだけど、まだジレッタイのがこの二人^^;
少しずつだけど、確実に二人の距離は縮まって行くので今はそれで我慢してね(^_-)-☆

NoTitle 

練習の効率はありますからね。
その辺は。適度に休みとリフレッシュが必要なんですよね。
やってばっかりだとストレスがたまる一方ですからね。
忘れることは非常に大切です。特に命に関することは。

LandM様 

そうですね。
やはりこういう精神状態の時は無理をしないに限ります。
特に一歩間違えれば怪我もしそうですものね。
そうそう気負いすぎてもストレス溜まりますものね。
こういう時はワンクッションいれる事も大切ですね。

いつも有り難うございます^^
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