記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《54.心 理》

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ファンネは一言暫くお待ちくださいと告げると、給仕を隣室でお妃教育の為の参考資料を纏めていた第一侍女のターニアに任せ、時間を作ってくれた。
廊下に出ると辺りを見回し、隣の主寝室へと押し入れられた。

「今更何ですか! 見境のない真似をなさるからこの様な事になるのです!!」

「・・・・それは、浅はかだったと思っている・・・・」

「やろうと思えば幾らでも手はあったのです! 何もあの様な真似をなさらなくともサニエル王子の目論みをアーリア様にお話しし、マジミールとの親密さをアピールして貰えば済んだかもしれないではありませんか!」

「それは!!・・・・、そうかもしれないが・・・・、アーリアは見るからに初心だよ。幾ら見せかけだけ繕った所で見る者がみれば直ぐにバレるに決まっている! 女の色香と言うものは初心者が出せるものでは無い。ましてや相手はあのサニエルだ。変な誤魔化しは絶対に効かない!! それに・・・・」

「それに!?」

「それだと、私が耐えられなかった。多分・・・・」

「王子・・・・」

はぁーっと、乳母は大きな溜息をついた。

もしも再びサニエルがあらぬ手段を用いるのではないかと思うと、それだけでとても平素で等いられなかった。
誰にもアーリアを渡したくない! その一心だった。

「で、その結果どうでしたか? アーリア嬢とマジミールが食事で席を並べるだけで、見ているこちらが目を背けたくなるほどのうっとりする様な視線でしたが!?」

「・・・・完全に私の落ち度だ・・・・」

「でしたら今後事が収まるまで、公共の場でアーリア様の前に姿を見せないで下さい。食事の同席も勿論ご遠慮下さい。私とターニアにお任せください。アーリア様が執務に顔を出す事もございませんし、他で会うとすれば公の場が主でしょう。その場合でも王子の同席は認められません。隅からこっそり監視なさる程度にして下さい。勿論アーリア様の目に留まる事も許しません!」

・・・・こっそり垣間見る以外にアーリアに会うなと言う事か・・・・。
身から出た錆さは言え、流石にそれはかなり厳しい選択だった。

「・・・・それはあまりに酷くないか?・・・・こっそりと主寝室で少しぐらい会う事を認めてくれても・・・・」

「何を仰っているのですか!? こっそり会うだけで本当に済まされますか?」

「それは・・・・多分・・・・」

「多分!? 王子のアーリア様への執着ぶりを考えると、それは絶対に無理です!」

「・・・・・・」

「だいたいアーリア様には毒に対する抗体を早く作らせるおつもりだったのでは無いのですか? アーリア様の身をお守りする為に考えられたのでしたら、先ずはそれを最優先にお考え下さい。私には王子も大切ですが、今はこの身に代えましてもアーリア様は私がお守りする心積もりでおりますのに・・・・」

「・・・・済まない・・・・」

「それですのに・・・・、何と心得ておいでなのですか!!」

「いや、だが、しかし、私の気持ちも察してくれ・・・・」

「分りたくもありません! それに、男の身勝手な行いで一番傷つくのはアーリア様であると言う事を忘れないで下さい」

「アーリアが傷つく!?」

「そうではありませんか! 情を交わせば会いたくなる。会えば更にもっと会いたくなり求めたくなる。それが愛する者の心理です。会えば会うほどアーリア様は王子に執着し、もっと離れられなくなってしまいます。ずっと側でお守りできない以上、これ以上会うべきではありません!」

乳母ファンネの熱弁に絆されたセイラルはそっと視線の矛先を落した。

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