記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《3.妙 案》

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サニエルが見初めた人物の名はマリーサ・ボブスレード。
長身で見た目実年齢より少々高く見えるが実際は15歳の未成年だ。
父を元王宮筆頭騎士オニールに持ち、自らも幼少期より鍛錬を重ねかなりの腕だと聞く。
今回の計画の発端は数日前に遡る。
発案者は数年前まで退王の側近の一人であったこのオニールだった。

「その視察にサニエル王子を同行させるのですよね?」

「臣に下るのであれば必要な事だからな。同行も勉強になろう。それにカンザルは王都からも近いしな」 

「カンザルならば、実は妙案がございます」

オニール・ボブスレード男爵の妻は貴族では無く一般の出だ。
代々酪農業を営む家の出で、退王がまだ王位にあった頃、護衛で視察に赴いた際に今の夫人に出会った。
今回の視察先には、その夫人の実家も入っていた。

「娘のマリーサを送り込もうと考えております。未成年ですが、御存じの通りかなりの剣の腕前です。若い娘からの誘惑は、サニエル王子にとっても魅力的ではないかと考えます」

確かにもし、見初められれば格好のカモに成り得る。
だが素人の・・・・それも未成年の娘にその様な真似は断じてさせられない!

「何を言っている! 男爵は自分の娘を売る気か? サニエルの下に曝して、何事も無しに戻って来ると言う保証は有り得ないぞ。貴方はそれでも良いのか?」

そのセイラルの問いに、男爵はニッコリ微笑み言葉を続けた。

「あれは年の割に結構したたかな娘です。私の今の仕事も良く理解し、常々手伝いできればと申しておりました。告げればきっと協力すると言うでしょう。将来は騎士になる事を夢見ておりましたが現在この国では認められていない。それならばと13の頃より実はカリザスのマゼランド様を支持し、彼の元で訓練を積んでおります」

「マゼランド殿の!?」

カリザスのマゼランドと言えば知る者ぞ知る人物で、退王の時代密偵として他国の内部に潜入しこの国に有益な情報を多く齎し、かつて名を馳せた人物だ。
現在は引退して久しいと聞くが、彼を支持し今でも秘かに教えを乞いに行く者もいると聞く。唯、弟子は取らぬと聞いていたが・・・・。

その問いに退王が何か思い出したかの様に口を開いた。

「そう言えばそうだったな」

「マゼランド殿も娘の資質と覚悟を認めて下さっております。今だかつてこれほど若い女の密偵は存在しません。疑われる可能性も低いと思います。是非使ってみては頂けませんでしょうか。もし、運よくサニエル王子の手中に入る事が出来れば上手く尻尾を掴めるやもしれません」

「そうだな」

その話をやきもきしながら聞いていたセイラルは、段々とその娘を密偵として認めようとしているかのような退王と男爵の話を信じられないものを見る様に、訝しげに眺めていた。
やがて二人の視線の矛先はセイラルへ向けられると、目を大きく見開き制止をかけた。

「いや、しかし幾らなんでも未成年の者を使うと言うのは・・・・・。 それに私は女子供の犠牲を払ってまで事を内密に進める気は・・・・」

「だからです。殿下、お気づきになりませんか? マリーサは未成年です。王家の者と言いましても未成熟の若い娘に手を出せばどうなる事か。お分かりになりませんか?」

「そうか!」

この国では女が16歳、男が18歳で正式な成人とみなされる。
未成年と成人者への法の取り締まりもかなり異なる。
中でも性に関する取り締まりはかなり厳しい方だ。
今までは17歳で若気の至りと済まされたサニエルの行動や言動も来月18歳になれば今までになくしっかり取締りが強化される筈だ。
それは王侯貴族といえども違えぬ。
これはかつて未成熟の女性を側妃とした3代前の王が決めた法度の一つだ。
寵愛した側妃が未成熟のまま出産し、それが原因で若くして生まれたばかりの王子諸共命を落としたのだ。
その後の調査で若くして出産経験者の多くは出産に際し多大な負担が母体にかかる事が判明すると法を定めた。
以降、特に未成熟の女性に対する見方は世論もシビアだ。
妊娠せずとも、そのような行為に及んだだけで罪となる。
この為未成熟の女性に手を出す事は例え王侯貴族とて認められていない。
かつてそれにより身を滅ぼした貴族も幾人いる事か。

「妙案だと思いませぬか」

「いや、しかし・・・・」

とてもはいそうですかと受け入れられるものでは無かった。

「では、殿下はこのままサニエル王子の執着がアーリア様に向けられたままでも一向に構わないのですね!?」

「それはッ!!」

アーリアの名を出され、セイラルの表情は苦痛に歪んだ。

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