記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《4.騎 士》

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男爵は、淡々と言葉を進める。

「早い話、アーリア様をこちらに抱え込むことが出来れば事は一番簡単だったのです。既にサニエル王子が異常なまでの執着を示しておりますし、それを利用しない手は無い」

「・・・・アーリアに探らせよと言う事か!?」

「可能であればそれが一番の安全策です。ですが、殿下はおそらくそれを御認めにならない」

「当然だ!!」

サニエルにあのような真似をされて傷ついているアーリアに、とてもその様な真似はさせられない。
元より奴の視界にアーリアが入る事事態許せぬ思いだ。
それに一歩間違えれば今度こそサニエルの手中に落ちる事になる。
そのような危険な目には絶対に遭わせる訳にはいかなかった。

「私とて殿下の妃となられるお方をそのような危険な目に遭わせる事は本意では無い。ですから我が娘をと申しているのです。娘は女に生まれるが惜しい程の才能を持っております。親の私が言うのも何ですが、おそらく今では入団1、2年の並みの騎士より剣の腕は立つと自負しております」

セイラルはオニール・ボブスレード男爵を見据えた後、そっと視線の矛先を祖父へと向けた。

「現状は知らんぞ。だが、確か最後に会ったのは、何時だったか?」

「一昨年の暮れにございます。マゼラン殿の許へ修行に発つ事が決まりご挨拶に」

「おお、そうだった。確かあの時、見学と称して騎士見習い共と剣を交じえたな。あの姿は見事だった」

退王はにこやかに笑い、懐かしそうに平然と話を続ける。

「祖父君は御認めになるのですか?」

「見習いとは言え、自分より年上の鍛えぬいた体格の男と剣で競い合い、剣を弾き飛ばすと言うのは凄いと思わぬか?」

「剣を・・・・飛ばした!?」

2年前と言う事は13歳だ。
13歳の娘が騎士見習いの男の放つ剣を弾き飛ばしただと?
とても想像出来なかった。

「認めて下さいますか?」

「・・・・例え剣の腕が確かでも、女性を危険な目に遭わせる事には賛成しかねます。密偵としての修業を積んでいるとはいえ15歳の娘が平然と出来る内容ではないと推察いたします。いえ、常識ある親の勧める事とはとても思えません!」

「殿下・・・・」

男爵は膝を折り、セイラルに深々と頭を下げた。

「では、娘に決めさせます。全てをこれから娘に告げ、全てを娘に託します。カンザルに行くも行かぬも娘次第。私からはこう言う計画があると言う事だけ告げる程度にしておきます」

「何故私にそこまで・・・・」

「実は、私はジナスの出身です。父が王妃御輿入れの際筆頭騎士としてこちらに一緒に来る事になり、家族でこちらに移り住みました。その後私も騎士の道を志し、貴方様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが、貴方がジナスへ向かわれる際には私が護衛の任に着きました。私は貴方が5歳までセイラル王子付の護衛騎士の一人として勤めさせて頂いておりました。貴方をお守りする事は今でも私の責務だと思っております。それにサニエル王子では駄目です。国を滅ぼします。ですから何としても私はセイラル様に王道を歩んでいただきたい!」

「男爵・・・・」

「娘には、決して強要は致しませんから・・・・」

男爵はそれでもやりたいと娘が申した時は、私は承諾しますと最後に一言付け加えた。

「・・・・不本意だが・・・・どうしてもと令嬢が言うのであれば・・・・。済まない・・・・」

未成年にそのような真似は絶対にさせられないと思う反面で、自分が騎士に志願した経緯を思い出した。
最初自分も反対された。
一国の王子として剣を教えて貰えば良いだけの話で修行からする必要は無いと言われたのだ。
だが、正式に騎士となる為には通常下働きから始まる。荷物持ちや武具の手入れ、雑用も経験する。それでもセイラルは自分の為に全てを投げ出し守ってくれると言う約束をしてくれた従者の為に何かしたかったのだ。
当時13歳だったが、その経験を自分は少しも後悔していない。寧ろ良かったと思っている。
その想いと今の令嬢の想いを想像し重ねると、どうしても否定しきれない何かが生まれた。

セイラルはオニール・ボブスレード男爵に深々と頭を下げた。

男爵はその様子に少々呆れたような表情を零す。

「殿下、貴方はもぅ少し威厳をお持ちになられた方が良い。臣は使う為にあるのです。貴方がそれ程寛容になられる必要は無い。それに何れ王となられるお方が臣下の者に対し易々と頭を下げられるものでは無い」

「私は自分が敬意をはらわなければならないと思う者に対し、何人であれ頭を垂れる事を恥じる事とは思わない!」

気迫の籠ったその物言いに、オニール・ボブスレード男爵は苦笑いを漏らした。

「退王様、本当に良い跡継ぎに恵まれましたね」

「私はこれが我が息子であったならばと常々思っている」

退王の部屋に一時だけ気迫の中に柔らかな空気が流れていた。

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NoTitle 

お久しぶりです~^^

ちょっと忙しくしてました~(><)
乳母がいい味出してますね~!王子やり込めてるのに
もっといいよ~!^^bって感じでした~(^m^)
苛めちゃって~(笑)
しかし王子サマ自分の首絞めまくり~ですねぇ~(^m^)ププ
そりゃもう好き好き光線出ちゃうに決まってるのにね~♪

新しい登場人物のお嬢さんも楽しみですね~(^m^)

はのん様 

お久しぶりです^^
乳母気に行って貰えて良かったです^^
実は乳母との会話、もう少し長かったんですが、カットしちゃったんですよね^^;
けど、この乳母はこれからも色々と茶々は入れてくれる予定なのでお楽しみに(笑)

はい、しっかりセイラル自分で自分の首絞めちゃってます(笑)
自分で自分を分かっているつもりでも、恋は盲目ですからね♪
新しいお嬢はもまた今までと違うキャラなのでお楽しみに^^

いつも有り難うございます^^
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