記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《6.手 管》

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視察へ赴く前日、マジミール宛てに一通の書状が届けられた。差出人の名は勿論偽名だ。
中を開くとそこには一言『娘の件、良しなに』と書かれてあった。
誰からの書状であるか一目瞭然だった。

「届いてしまったか・・・・」

「王子?」

セイラルは3日前に祖父である退王に呼び出され、話しをした内容を未だ正確にはマジミールに伝えていなかった。
何処かで期待しつつも話が流れればそれに越したことはないと思っていたからだ。

「実は先日祖父君に呼び出された折、明後日赴く視察にサニエルを同行させる様に告げられた」

「サニエル王子を・・・・、ですか?」

「その先にオニール・ボブスレード男爵からの提案もあり密偵を送り込む」

そこで詳しく事情を説明した訳だが、今回の選択に至る複雑な経緯をマジミールは良く理解してくれた。
だがその一方で男爵の言葉に強く同意した。

「王子は恐らく今回の駆け引きにアーリア様の名が出なければ、最終的には絶対にお許しにはならなかったでしょう。でも、私は違います。少なくとも私は貴方の臣ですから、貴方の今後の為に一番有効だと思える案を私も推進いたします」

マジミールにとってもこれからの事ある計画は今後を大きく左右する。
今の我らは二人で運命を共有していると言ってもある意味過言ではない。
失敗は許されない。事は命に係わる事へと発展する可能性を秘めているのだ。


カンザルに着き、昼食後の視察は内心かなり緊張を強いられていた。
どの様な娘なのか? どう言う風にサニエルを引き付けるつもりなのか、興味津々だった。
そして、書状の内容から今目の前に居る娘こそが、オニールが送り込んだ密偵にして娘マリーサ・ボブスレードであると言う事を、マジミールとセイラルは知った。
人見知りが激しく見るからにおどおどしたその姿は、まさかと疑念を抱かせた。
儚げで初心そうでおまけにサニエルが最も好みとするブロンドゴールドの長い髪にかなりの美貌の持ち主だ。
これは!と思っていたら、間髪入れずにサニエルは既に話しかけていた。

「まぁ、まぁ、マリーサ、殿下を前に失礼ですよ。申し訳ございません。若い殿方と交える機会など滅多にないものですから孫も戸惑っている様で・・・・」

「それは初々しい」

「えっ!?」

祖母がその言葉に、かすかに反応するとサニエルはコホンと軽く咳をして言葉を改めた。

「マリーサと言うのか?」

「・・・・はい・・・・」

娘は蚊の鳴くような声で祖母の後ろに隠れながらほんの少しだけ顔を覗かせて言葉を発した。

サニエルの表情は目に見えて一層輝きに満ち溢れている。
この反応を喜ぶべきか否か。
計画的には喜ぶべき事なのだろうが、セイラルは心なしか気が咎めた。

「どうしたマジミール」

王子姿の従者に咎められ、視線を戻した。
ここは気付かぬ振りをしなければならない場面だ。

その後もサニエルは率先して娘に話しかけ、間に祖母を介してだが娘も少しは討ち解けているように見えた。
少し離れた所から見守る二人の姿は、思った以上に和やかだった。

何処までが演技で、何処までが本当の彼女なのか?
如何にも『初心です。男は苦手です』を前面に押し出してはいるが、全く嫌味が無い。少し気を緩めて話に応じ、サニエルが雄弁になって来た頃を見計らい引く。見事な手管だ。この短期間に、サニエルの好を調べ熟知し、見事に対応していた。
これが計画的に立てられ成されているとすれば、このマリーサと言う娘は末恐ろしいと思った。

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~ Comment ~

NoTitle 

サニエル様にはぜひマリーサどのと結婚していただいて、

「恐怖! 亭主を刃物で脅す鬼嫁!」
「亭主の浮気に鬼嫁の怒りの鉄拳DV!」

などと毎日のワイドショーを盛り上げる存在に(゜゜☆\(^^;)

ポール・ブリッツ様 

この二人については色々とこれからあります。
おそらく現時点では想像し得ない状況に?

ご期待に副えない状況かもしれませんが、最終的には・・・・。
っと、これはまだ言えませんね。

ただ、関連作として二人のその後は只今制作途中です。(今途中で放置して他の話書いたりしてますが^^;)

いやぁ、この二人はとにかくどう転んでも難しいです(苦笑)

いつも有り難うございます。
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