記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《8.登 城》

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全ての話が整い、マリーサが出仕を果たしたのはそれから1週間目の事だった。

「アーリア様、こちらが先日お話し致しましたマリーサです」

「あの・・・・お初にお目にかかります。マリーサ・アナキスと申します。この度、退王様のご側近ロベルト様のご紹介で、こちらに上がらせて頂く事になりました。至らぬとは存じますが、誠心誠意努めさせて頂きます。宜しくお願い致します」

とても小さな声で少しおどおどした様子の娘が、最後の『宜しくお願い致します』の言葉と同時に頭を直角に勢いよく深々と下げた。
その必死な態度に思わずアーリアも笑みが零れる。

「聞いているわ。アーリアです。私もまだ色々と初めての事が多すぎて戸惑っている毎日なの。お手伝いして頂ける手が増えて嬉しいわ」

こんな気弱そうな娘が本当に剣を使えるのかしら?と、疑いたくもなったが、聞いた話からすれば恐らく間違いない。
アーリアはニッコリ笑って手を差し伸べた。


話を聞いたのは昨夜。
その日も一人寂しく寝所にてマジミールを思い、ホロリ涙を濡らしていた。
そこに思わず王子の私室側の扉がノックされ、あまりの突然の出来事に戸惑い夜着の前を合わせ直し身を顰めた。

「どっ、何方!?」

「マジミールにございます。少々お話ししたい件がございまして、扉の外から失礼致します」

明らかに公用と思しきその態度は他人行儀に感じられたが、そんな事はどうでも良かった。
10日振りに聞く、懐かしい愛しい者の声に、アーリアはベッドを飛び降りると一目散に扉へと駆けて行った。
扉の外からと言わずに、中へ入って抱きしめて欲しかった。
その温もりを感じたかった。
自ら扉を開けると、アーリアは愛しい者の胸に飛び込んだ。

「マジミール様・・・・・」

「あっ、アーリア、・・・・さま・・・・」

明らかに焦った様な態度に、傍から見ていた王子姿のマジミールは笑みを零した。
アーリアの瞳は涙に濡れ、首に巻かれた腕は一向に離れる様子は無い。
そっとセイラルの傍まで近づくと背中を徐に押し、中へ押し入れると扉を閉めた。

「おい!!」

思わず口にしてしまった溜め愚痴的な言葉にハッとしたが、アーリアの耳にはそのような事は入ってない様子だった。

「マジミール様・・・・、うっく、マジミール様・・・・」

泣きながら告げられる名に胸が熱くなる。
堪えきれずに回せなかった腕をアーリアの背に回すとそっと抱きしめた。

「アーリア・・・・・」

「酷い・・・・、ひっく・・・・・こんなに会えなくなるなんて・・・・、視察から戻られたら・・・・会えると思っていたのに・・・・全然姿も見えなくて・・・・」

「すみません・・・・。傍にいると愛おしい想いを押さえ切れなくなるので、遠くから見守らせて頂いておりました・・・・」

「もぅ、こんなに会えないのは嫌・・・・。傍に居て・・・・」

「アーリア・・・・」

扉の外から話だけをして、触れ合う気等毛頭無かったのに、触れてしまえば自分の中で押さえ続けていた想いがこんなにも溢れ出して来る。

『駄目だ! これ以上触れていては歯止めが利かなくなる!!』

首に回された手を掴んで外そうとした時、アーリアが背伸びをして、そっと唇を寄せて来た。

「駄目なの?・・・・」

涙に濡れながら上目づかいでそう告げられれば、もぅ自制心など粉々に砕け散った。

涙で濡れた頬を指で拭う様に撫ぜると心が震える。
涙に濡れながらも懸命に瞳を大きく見開き、縋り付くように視線を自分に向けて咽び泣くアーリアの顎を軽く持ち上げるとセイラルはそっと唇重ねた。

啄むだけの短い口づけのつもりが、触れ合っているとそれだけでは収まりがつかなくなって行く。
触れた先から熱がこもり、やがてそれは情熱的なものへと変化していく。
舌を絡め、貪るように求め合い、もう抑えが利かないと思った時だった。

『アーリア様、妙薬をお持ち致しました』

アーリアの部屋の内側から扉を叩く音と共に聞こえて来た声に、セイラルは一瞬にして身を固くした。

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