記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《9.空 虚》

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うっとりと自分を見つめるアーリアの視線に、セイラルは一歩引くと王子の私室側の扉にぶつかった。

『不味い! 非情に不味い・・・・』

明らかに狼狽している愛しい者の姿に、アーリアは小首を傾げた。

「マジミール様!?」

アーリアはその声の主が協力者の一人である事を知っている。
別に二人で居る所を見られても左程問題はないと思っているのか慌てる様子も全くなかった。

『失礼致します』

開けられた扉の中からはセイラル王子の乳母にして現在アーリア付の第二侍女ファンネの姿があった。

こちらをチラリと横目で見て、何事も無かったかのようにスタスタと歩み寄って来ると思えば、寝台横のサイドテーブルに薬の入ったトレイを置いた。

「アーリア様、こちらに」

無表情で淡々と告げられる言葉にセイラルは恐怖を感じた。
アーリアに回していた腕を慌てて解く。

アーリアは言われた通り寝台の横まで行くと、上目づかいでファンネを見上げた。

「どうしても、飲まなきゃダメ!?」

「駄目です。滋養を高めるお薬です。これは王家秘伝の妙薬ですからセイラル王子の婚約者で有る以上飲む義務がございます」

アーリアはチラリとマジミールに視線を投げかける。
セイラルが小さく頷くとゴクリ、ゴクリと顔を顰めて一気に飲み干した。
飲み終わった後の何とも言えない苦虫を噛み潰したような様な表情がとても可愛くて思わず笑みが零れる。

「何時から飲ませているのか?」

「一昨日の晩からです」

「そうか・・・・。良かった・・・・」

王家秘伝の妙薬と混合して微量の毒を混ぜ抗体を作る計画が実行されたと言う事にセイラルはホッと胸を撫ぜ下ろした。

「良かったではございません! 貴方は一体何を考えておられるのですか!! あれ程申しましたのに呆れ返るにも程があります!!」

急に荒げられた声に慌てたセイラルは、どうにかしてこの乳母を納得させようと頭の中を必死でフル回転させる。

「いや、違う。私は外から新しい侍女の話だけでもと思っただけで・・・・、これはマジミールがッ」

「・・・・マ・ジ・ミ・ー・ル・が!?」

「いや、だから・・・・マジミールが‥‥、いや、私が・・・・話をしようとしただけで、他意はない・・・・」

「・・・・意味が通じません。用件は掻い摘んで的確にお話し下さい!」

「いや、だから、これは・・・・」

まさかのファンネの登場に、流石のセイラルも少々混乱気味だった。すると。

「違うの、ファンネ。マジミール様の声が扉の外から聞こえて、私が勝手に扉を開けて飛び出して抱き付いちゃったから・・・・」

「アーリア様、ここで庇いだてされるのは得策だとは思えません」

その時、カチャリと王子側の扉が開いた。

「すまん。ファンネ。私も煽ってしまった・・・・。無理矢理けしかける様に押し入れた。マジミールに罪は無い」

「もぅ本当に殿方と言うのは!!」

王子扮するマジミールもどうやら事を煽った様子に、ファンネは呆れ返ると大きく深いため息をついた。

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