記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《10.妥 協》

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殿方と言うのは何て身勝手な生き物なのだろうか。
自分だって二人の仲を決して好んで裂きたい訳では無い。
許されるのならばずっと傍にいさせてやりたい。だが、この状況で二人をこれ以上親密にさせる訳にはいかないのだ。

「王子も勝手な事をなさらないで下さい。マジミールを想う優しいお心遣いには関心致しますが、この様な事は困ります。これ以上マジミールを煽る真似はしないで下さい。やっと妙薬を飲み始め、一つ重荷から解放されたと思っておりましたのに・・・・」

その物言いにハッとした王子姿のマジミールは少し視線を落とした。

「申し訳ない・・・・」

アーリアが少量の毒入りの妙薬を飲み始めたと言う事の意味をマジミールも感じ取ったらしい。

「とにかく、これ以上アーリア様に関わるのは止めて下さい。良いですね」

「しかし、新しい侍女について話しておかなければならない事が・・・・」

「でしたらそれは、私もご一緒に聞かせて頂いても問題ありませんね」

「「えっ!?」」

セイラルとマジミールが二人して素っ頓狂な声を上げ小首を傾げた。

「さあ、どうぞ。お話し下さい」

思いがけずファンネを囲んで4人で話をする事になったこの状況。
とりあえず立ち話も何だからと言う事で、王子の私室でお茶でも飲みながらと言う事になった。

アーリアには明日から入る侍女が退王の元側近の娘であり信用における者だと言う事と、剣の覚えがあるから何かの時は守って貰える事を話した。
ただ、剣に覚えがあると言う事は他に漏れぬ様くれぐれも口にする事が無い様にと忠告した。

他の余分な話は一切しなかった。余計な話を聞き、行動が不自然になるのも困ると判断しての事だった。
ファンネには他にも話しておかなければならない事があったのだが、それはアーリアの居ない時に話す内容だ。

しかし、これが思いがけない方向を齎した。

「ねぇファンネ。たまにはこうやって皆でお茶するのも良いわよね」

「お茶、ですか・・・・」

「駄目!? 皆でお茶を囲んでなら、セイラル王子とももっと仲良くなれると思うの。そうすれば人前で親密な態度も取りやすいと思うし・・・・。それに、ここだったら誰にも知られずにマジミール様のお姿も・・・・」

口にしながら真っ赤に頬を染めるアーリアの姿がたまらない。
どうせそのような提案をした所であのファンネを説き伏せる事等到底無理だろうと鷹をくくっていたら・・・・。

「アーリア様も最近随分と思いつめた表情を時折なさっていて気にはなっていたのです。ですが、これほど心穏やかでいらっしゃるアーリア様の表情を見てしまったら・・・・」

何か迷って居るような素振りを見せ、そして次に吐き出された言葉に耳を疑った。

「駄目ですとはとても言えませんわね。アーリア様がこの者に会えない事をこれ程までに思いつめておいででしたのなら・・・・、分りました。これからたまにはこう言う場を設ける事に致しましょう。幸いこちらでしたら他の侍女の出入りもありませんし、私は王子の乳母の特権で出入り自由ですし」

「有難うファンネ!!」

アーリアはファンネに満面の笑顔で飛びついた。

「その代わり、これからは渋る事無く、妙薬もきちんと飲んでくださいね」

「勿論よ!」

ああ、やっぱりアーリアは可愛い・・・・。
自分が何と言っても全く動かなかった乳母のファンネがアーリアの一言でコレだ。
思いがけない話の展開にセイラルは微笑まずには居られなかった。

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