記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《12.接 触》

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直ぐに接触すると思われていたサニエルがマリーサに最初に声を掛けたのは乱入事件から4日後の事だった。
随分慎重に事を運んでいると思えば何のことは無い。
こそこそとマリーサの行動を少し離れた所から監視していた。
最初はストーカー行為と思って見ていれば、どうやらそれだけでも無さそうだ。
マリーサが我らと本当に関わりを持っていないか監視している様だった。
それから導き出される答えは、純粋にマリーサ好意を持って追いかけているか、はたまた内に抱え込み側妃と結託して工作的に利用しようといるかのどちらかだろう。
希望としては後者の方が今後の展望を明るくしてくれる訳だが、そう簡単に事はおそらく進まない。
引き続き、我等は一切マリーサと関わりを持つ事もせず、平素に振る舞い続けた。

やっとこちら側と特に接触が無い事を認識したのか、程なくマリーサの休憩時間を見計らい、彼女が好んで休む楓の木の傍までサニエルは足を踏み入れた。

「やぁ、マリーサ。いきなり城に現れてびっくりしたよ。約束したのにカンザルに行けば君はあるお屋敷に上がったって言うからさ」

「さっ、サニエル様!! も、申し訳ございません・・・・」

マリーサは瞳を見開き驚いた表情を一瞬見せると深々と頭を下げた。
そして、さも思いがけない事のようにその場を取り繕った。

「でも何故城に? 人付き合いは苦手なんじゃなかったの? 普通のお屋敷でも大変だろうにまさか城に上がるなんてね。ここの方がよっぽど人の出入りも接触する割合も激しいと思うけど」

この言い方で、まだ何か勘ぐっている事にマリーサは気付いた。
この疑念を振り払うに値する策を『彼の者に恋する乙女』と自らを設定し、この2年間でマゼランド様に教えられた『密偵の立場的行動の全て』と題し教鞭を取った中から早急に知識を総動員し検索する。
そしてひらめいた。

「お声を掛けて頂いたロベルト様には両親を亡くしカンザルに赴きました折、早くこの地に慣れるようにと大変良くして頂いて・・・・。それに・・・・」

「それに!?」

「ここにはサニエル様もいらっしゃったから!」

頬に手を当て染まらぬ頬を隠す様に恥ずかし気に装うと目を伏せた。

「えっ!?」

「あ、あの、そろそろ休憩が終わりますので失礼致します!!」

慌ててその場を駆け出したが、この仕草で成功したのだろうか?

その日、セイラル王子に状況を報告すれば、良い機転の利かせ方だったと褒めてくれた。
セイラル王子からは今ある表向きの姿はサニエル王子には有効だと言われ、くれぐれもこのキャラを崩さぬ様にと告げられていた。

ここでのマリーサの表の姿はサニエル王子の性格などを事前に父より聞き、師であるマゼランド様の指導の下に作り上げたものだった。
『密偵の第一の難関は他者に成りきる事』
一生懸命やってきたつもりではいたが、本当にそれで良かったのか実は半信半疑だった。次にサニエルが現れなければどうなってしまうのか?
その日の夜は思い耽って眠れずに居たのだが、翌日もまた楓の木の側にサニエルは佇んでいた。
自分のはるか後方には護衛の姿。
セイラル王子が未成年の自分を密偵として認め置いてくれ、尚且つこの身をこれ程までに心配して下さっている事に深く感謝した。


「今日はどうだった?」

サニエル王子と接触した時は必ず定時報告する事が義務付けられていた。
他の者に分らぬ様に時間はいつもアーリア様が湯をお召しになる時刻に主寝室経由で王子の部屋で行われていた。
その時間だとターニアも一緒に世話をしに湯殿に向かう為、部屋に残るのはファンネ位だ。
サニエル王子には自分の乳母でもある彼女には隠し事は無いから王子への定時報告に対する気遣いは不要だと言われている。
時間がある時はファンネも同席するが、基本アーリア様とターニアが湯殿から出る間際には戻れるようにと知らせに来てくれる。

「特に問題は。ただ退王様の事を色々と聞かれました。祖母の家には退王様は訪れた事があるのかですとか、何歳から退王様とその従者と付き合いがあるのかですとか・・・・」

「後はアーリア様の事ですとか・・・・」

「アーリアの!?」

セイラル王子の表情は一瞬にして強張った。

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