記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《17.実 行》

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ファンネの案は採用され、マリーサから薬の粉末を受け取ると翌朝出仕前には見るからに美味しそうなプラムの果肉入りクッキーを焼き上げマリーサの部屋へ届けた。

「昨夜はかなりお疲れでしたのに、お手間を取らせ申し訳ございませんでした・・・・。ゆっくりお休みになれなかったのではありませんか?」

「貴方がそこまで気にする必要は無いわ。これは私の為でもあるのよ。セイラル王子の為になるのならば何だってしてあげたい。それが私の本心。でも、王子には内緒よ。それより無茶は駄目よ。上手く食べて貰えなくても他の手を考えれば良いのだから」

「はい」

計画ではサニエルに茶会の席でさりげなくクッキーを勧め、口にするのを見届けられれば早々にその場から引き上げる予定になっていた。

マリーサは非番だがサニエルの行動を少しでも怪しまれず監視する為、仕事着に着替えると約束の場所付近を警戒し監視していた。
ここ数週間サニエルと関わり気付いた事は、興味のある事に関しては随分と執着心が高い事。
それは懸念されている女性関係だけでは無く、それ以外の事も含むと言う事が分かった。
興味を持った事に関しては、決して打算を許さない。
気分屋的な行動も多いが、一度執着したものに関しては、拘りも強く全てを自分で成し遂げなければ気がすまない性格らしい。
既に今朝からそれとなくサニエルの行動を伺っていれば、既に二度もこの場を訪れている。
予想道理の行動だった。

1時間も前ともなれば、セッティングについても黙っておけなくなるだろうと推察し、頃合いを見計らいこの場に午後からも足を運んだ。
こう言う者は計画が損なわれる事を特に嫌う。
ならばセッティングの段階で差し入れしておいた方が、差し障りも無い気がする。
それに突然持って行った所で、その場で口にしてくれる筈も無い。
王族の口にする物には必ず最初に毒見する者が必要だ。事前に持って行けば前もってそれも可能となり、茶会の席で並べられ、目の前で口にして貰える可能性は一段と上がる。

読みは当たりクッキーを届け、給女と丁度話をしている時に遠くからサニエルが供を連れて歩いて来るのが確認できた。
それを目にし、マリーサは慌ててその場を立ち去ると駆け出し、そしてサニエルの肩目掛けて自ら突進した。

こちらの行動に気付いてくれればとりあえずはそれで良いと思っての行動だったのだが、まさか早々にクッキーを自ら口にして貰えるとは・・・・。
想定外の行動だった。

計画が既に実行されたのであれば、自ら出向いて危険を冒す理由は無い。
指示を仰いだセイラル様から頂いた言葉に従い茶会を断り、後は相手の出方を待つだけだった。
逆鱗に触れるか如何なるか緊張で生きた心地もしないまま自室でひたすら時間が過ぎて行くのを待った。
昨夜は緊張で眠れず、今夜は成功すれば密偵として仕事を成し遂げた充実感できっとぐっすり眠れると思っていたのに何処か不安定な気持ちのままで、結果としてあまり良く眠れなかった。
密偵としてでは無く、いつの間にか少しだけ抱いてしまった己の感情に翻弄された。

翌日、昨夜サニエルが酒に酔い障害沙汰を起こしベロベロになり憲兵に連れられ城に戻って来た事を聞いた。
密偵としての初めてと言うべき大仕事をやり終え、セイラル王子も周囲の者もからも自分に対し敬意を込めた労いの言葉を表してくれたが、何処か良心の呵責に苛まれた。

「相手の思い込みを煽り依存させるのに、強壮薬にそのような使い方があるとは想像も出来なかったが、それも今回のマゼランド殿の計画の一つか」

「そうです。色々なケースを想定し、その時の対処法をお教え頂いております。マゼランド様は全て熟知しておりますから、私はその資料を基に選ばせて頂いているだけなのです。まだ駆け出しですから・・・・」

本当に駆け出しだ。ヒヨっこも良い所だ。今は悩むべき時では無いのに・・・・。

「マゼランド殿は調薬学にも詳しいのか?」

「あらゆるものに精通しておられます。私から見れば全てにおいて万能者です。この世の裏の手口に関し知らぬ事は何一つ無いのではないかとさえ思えます」

「マゼランド殿が退王を臣であった事に感謝しなくてはな。絶対に敵にはしたくないタイプだ」

自らの感情が、一時的にとは言え人に左右されて良いものなのだろうか?
真の暗殺首謀者を炙りだす為とは言え、自分の行ってしまった事への罪の重さに急に恐ろしくなり身が震えた。

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