記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《23.愕 然》

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一体彼はどうしてしまったのだろう?
緊張を強いられてここまで足を運んだと言うのに、いつも以上に優しい・・・・。
いや、これは何かの罠なのか?
そう思っていると、サニエル王子が何処か少し神妙な面持ちで眉を顰めた。
いよいよか?
何かが起きる予感がして身構え、自分の使命を噛みしめマリーサは気を引き締めた。

「侍女の詰所にまで押しかけた話、聞いているんだろう?」

「はっ、はい」

突然告げられた言葉に緊張が迸る。

「悪かったね」

「・・・・えっ!?」

有り得ない言葉に、一瞬思考が停止した・・・・。 

「先輩たちから何か言われたんじゃないの?」

「はっ、はい。いえ、・・・・。でも、元はと言えば私が悪かったのですから・・・・」

「皆に謝りたいのだけど、後で一緒に付いて来て貰えるかな?」

「はいっ!?」

(謝りたい?)

今まで人伝に、サニエル様には謝るという文字は無いと聞いて来た・・・・。

「マリーサ?」

「あっ、はい。それは勿論です!」

「そう、良かった。それは心強い」

緩やかに微笑むサニエルの姿に、呆気に取られた。

全然違う・・・・。まるで何か憑き物が落ちた様な変わり様だ。
何があったのか?
茶会を急に断り、あれ程乱れる程に自分に対し怒りを露わにしていた筈なのに・・・・。

謹慎後も直ぐに侍女の詰所に押しかけ、かなりの剣幕で乗り込んできたと聞いていたので、自分も今回ばかりは怒りに任せて殴られるか、或いは唇位奪われる位の覚悟で足のすくむ思いをしてこの場に赴いたのだ。
ずっと緊張していて気が張っていたと言うのに、あまりの想像と食い違う落差的発言にマリーサはその場で気が抜けると足が竦みヘナヘナと腰が砕け座り込んでしまった。

「マリーサ!?」

「すみません・・・・。きっと凄くお怒りだろうと思ってずっと緊張していたもので・・・・。まさかそのような寛大なお言葉を頂けるとは夢にも思っても居なかったものですから、腰が抜けてしまって・・・・」

「ごめん、本当に迷惑かけて・・・・」

(ズキッ!)

何故か心が痛んだ。

膝をつき、そっと差し出された腕に捕まると、ゆっくりと立ち上がる。
腰に手を添えられて二人して楓の木の木陰に腰を下ろした。

「ずっと忘れていた。自然の姿がこんなにも心を安らかにするって」

「えっ!?」

「あそこ見て。鳥の番が巣を作っているんだ」

「まぁ、ホント!」

満面の笑顔でそう告げるサニエルに、思わず自然と肩が触れた。

「あの鳥はねブルーオラフィンチと言うんだ。幸せの象徴とも言える鳥でね、あの番は死ぬまで共に離れず暮らすんだ」

「まぁ、仲がいいのですね」

「私はね、子供の頃ずっと野鳥の観察や植物を愛でる事が好きだったんだ。・・・・そうだ! 良く供の騎士におねだりをして観察に裏の山に連れて行って貰っていたんだ!」

サニエルは子供の様に瞳を輝かせ、告げる事が嬉しい事の様に次々と野鳥の話を語りだす。

「優しい騎士さまですね」

「うん。で、ある時母が熱を出してね。以前その者に教わった『煎じて飲ませれば即効性のある』と言うパシブミの木の実を見つけに一人で裏山に出かけたんだ。でも、浅はかな子供の考えでね。木の実は見つかったものの、道に迷い戻れなくなってしまったんだ。暗くなり、もぅ帰れないと思った時、捜索の者が探し出してくれて・・・・」

あれ程次々と記憶が蘇っていたのに、急にプツリとそこで途切れた。

「サニエル様?」

「ごめん、これ以上は・・・・、思い出せない・・・・」

どうしてだろう?
その後の事を自分は全く何も思い出せなかった。
でも、何だかとても辛い事があったような・・・・。また頭の中に靄のようなもの掛かって来た。
これに邪魔されると、いつも先が見えなくなる。
それを無視して必死に思い出そうと翻弄していると、再び今度は今までに感じた事の無い程の痛みが頭を襲った。

「アァッ!! ぅアぁぁぁッ!!」

あまりの痛みにサニエルは頭を抱え込み、その場で蹲った。
突然の出来事にマリーサは慌てふためく。

「だっ、誰か! 誰か来て!! さっ、サニエル様が!!」

大声で叫べば慌てて影となり待機していた騎士が掛け付け侍医を呼びに行った。
マリーサはとにかくその場で自分の膝にサニエルを抱え込み横にして侍医が来るのを待った。
唯々おろおろするばかりで何も出来ない自分の不甲斐なさを後悔した。
程なく駆け付けた侍医がその場で診察をし、マリーサに『大丈夫だ』と告げた。
サニエルは直ぐに侍医からその場で薬湯を飲まされ、頭痛が収まるのを暫く待ち、痛みの波が軽減した頃を見計らって騎士の肩を借りる様に支えられながらゆっくりと立ち上がった。

「・・・・びっくりさせて悪かったね・・・・、最近良くあるんだ・・・・。でも、心配ないから仕事に戻って。色々有難う・・・・」

微かに笑みを浮かべながらサニエルはそう告げた。

何があったのか?
何が起きているのか?
さっぱり分らなかった・・・・。

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