記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《24.身 震》

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休憩から戻ると、マリーサの蒼白する姿に直ぐに気付いたファンネが慌てて駆け寄って来た。

「どうしたの? 何かされたの!?」

「・・・・いえ・・・・、唯サニエル様が・・・・」

「サニエル様が?」

「・・・・倒れられて・・・・」

マリーサはぶるぶると震えていた。

「・・・・倒・・・・れた!?」

「・・・・はい・・・・」

流石のファンネもこれにはかなり驚いた様で、落ち着きなさいと言っている自分も何処か落ち着きを無くした様にオロオロしている態度だった。

「と、とにかくマリーサは詰所でもう暫くゆっくりしてらっしゃい。私は後の事をターニアに頼んで、とにかくセイラル様に知らせて来るから!」

「はい・・・・、申し訳ございません・・・・」

ファンネはマリーサの肩を軽く叩くと、そのまま慌てて部屋を飛び出した。


程なくして政務室に身を置いていたセイラルとマジミールが知らせを受けて部屋に戻って来た。
その様子にファンネはマリーサを連れて何事も無い様に平常心を保つように心掛けアーリアの部屋へ入って行く。
先程アーリアは第一侍女のターニアと共に話術指導のレッスンに赴いた為、部屋の中には幸い誰も居ない。
主寝室を介して王子の部屋へ直ぐに移動すると、促されいつもの席へ座った。

「如何言う事だ!?」

流石のセイラル王子もマジミールも驚きを隠せない。

「分りません・・・・。話している途中で急に頭を押さえて倒れられて・・・・。侍医の話では持病の偏頭痛なので大事は無いと・・・・。ですが、とても凄く痛がられていて、意識を失うって異常ではありませんか?」

マリーサは少し落ち着きを取り戻していたようだったが、話し始め、再び色々と思い出してしまったのか、また手足がガタガタと小刻みに震えていた。

(あのサニエルに持病が? )

正に寝耳に水の話だった。
よくよく考えてみるとセイラルはサニエルの事を詳しく何も知らない。
初めて会ったのは城を出る事になる数か月前、まだ5歳の時だ。
サニエルが生まれ、その祝いの席で目にした初めて見る弟の愛らしい姿に目を奪われた記憶だけは今も残っている。
それ以後はここに戻って来るまで、一切やり取りも無かった。
入ってくる情報は母からの状況的な立場による説明だけだった。
とりあえず、第一王子としての自分の地位は辛うじて守られてはいるが、それを良く思っていない弟王子を跡継ぎにと推す声がある事と、サニエルの素行の悪さを最近よく耳にすると言う程度の知らせだけだった。
城に戻り、帰還祝いの席で初めてサニエルと形式的な言葉を交わしたが、口先だけの言葉に歓迎されていない事を痛感した。
その席でも直ぐに姿が見えなくなり、人伝にサニエルの多くの良くない噂を耳にした。
初めて知り得た弟の素行の悪さは自分の想像範囲を遥かに超えるもので、暫く様子を見ていたが、我儘でやりたい放題の手の付けられない性根の腐った不良王子と言う周囲のレッテルは疑う余地が無く第一印象となった。
ここ数年更にその素行は酷くなり、自分が戻ってからは更に手が付けられなくなったと言う事だったが、元々その気質があったのか何か要因があり今の現状に陥ってしまったのかはセイラルにも実の所、分らなかった。

「頭痛がおきられるまでは凄く穏やかな表情をされていて・・・・。まるで別人のようなお姿でした。お怒りを向けられ、何をされるのか怯えて会いに出向きましたのに、今まで見た事の無い程の穏やかな眼差しで、侍女の詰所まで先日の件を謝りに行きたいとまで申されていて・・・・。もぅ私、何が何だか分らなくなってきました・・・・」

「何だって!?」

(あのサニエルが謝る? 人に対し謝ると言っただと!?)

セイラルも流石に困惑気味だった。

「もしかして、その持病の偏頭痛と今のサニエル王子の状況には何か因果関係があるのではありませんか?」

その言葉に同意以外の言葉は見つからなかった。

「・・・・城に戻る以前のサニエルと言うものを私は知らないが、もし、サニエルが元は真っ当な人間だったとし、今あいつを押している人間も、いつか元のあいつに戻ってくれればと期待して後押ししているのだとすれば、その鍵を解く事もこれから必要かもしれないな」

だが、何故今まで誰もこの事を私に告げなかったのか?
母からも祖父からもサニエルが持病もちだと言う事の話は一切聞いていない。
ただ、思春期の頃に付き合い出した友人が悪かったのか、以降道を踏み外したようだと言う大まかな事しか聞いていない。
それ以前のサニエルについては全く何も知らなかったのだ。
母は違えど、実の弟だと言うのに自分はサニエルの事を何も分かろうとはしなかった・・・・。

「とりあえず、お母君か退王様に聞いてみてはどうでしょうか? 今のサニエル様に変わられる以前のサニエル様の事を」

「そうだな・・・・」

セイラルはアーリアの事があり、目先の事だけで本当の意味で我が弟に目を向ける事の無かった自分を酷く恥じた。

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