記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《25.会 合》

 ←記憶の彼方とその果てに -第2章-《24.身 震》 →記憶の彼方とその果てに -第2章-《26.手 紙》
城の中にある退王の別邸でセイラルは母とマジミールと共に談を取っていた。
本来ここにマリーサも呼びたかったのだが、我等との関係に気付かれればあらゆる面で危険を生じる可能性も更に大きくなる事から、マリーサには後でここでの話を包み隠さず話す事になっている。
最初にサニエルの持病について真っ先に聞いたのだが、二人はその事については全く何も知らなかった。

「では、話を変えます。サニエルはどんな子供だったのですか?」

「恥ずかしがり屋だったのか、人前にはあまり出ない子だったわね」

「元よりあれはナジリルが出そうとしなかったのだ。外は危険だからと言ってな」

「何時だったか庭でガーデン・パーティの時だったかしら、いつも大人しいサニエルがそれはもぅ大はしゃぎでね。お付の騎士と周囲の樹木を見て回って鳥の巣を探索したり、色々と観察していた事があったの。本人はとても喜んでいたのに視界から王子が居なくなったものだから側妃が凄く慌ててね。大騒ぎになった事があったわねぇ」

「その様な事があったのか。ナジリルらしいな」

「確か退王様は、当時療養に出られていてお留守だったかと・・・・」

「ああ、そうか。だが、確かに自然を好む子ではあったな。高価な玩具や、物を買い与えるより書庫を良く好んで利用する子であった。何時だったか書庫で会った事がある。その時は確か分厚い野草辞典を手にし、半紙に何枚も何やら色々書き込み勉強をしていたな」

「今からは想像もつきませんね・・・・」

「もしかして、サニエル王子をカンザルに同行させたのは自然あふれる姿を王子に見せたかったからですか?」

マジミールが付け加えて聞いた言葉にセイラルはハッ息を飲んだ。

「それもある。奴にあの頃の気持ちを思い出して欲しかったからな。虫も殺さぬ聡明だったサニエルがある時療養から帰ってみれば悪い仲間と連れだって街に出歩き悪さをするようになっていた。正に別の者かと最初は我が目を疑ったものだ」

「そうですわね。私も元々サニエル王子とはたまに開かれる正式な場でしか顔を合わせる事も無かったけれど、何時だったか急に風貌もかわってしまって。思春期の頃はちょっとした事が原因で特に男の子は大きく変わる時があるとは聞いてはいたけれど、本当にサニエル王子に何があったのかしらね。当時はこれがセイラルで無くて良かったと思った程度で気に留める事もなかったけれど。私にはサニエル王子の行動を気にかけるよりもセイラル、貴方の帰る居場所を守る事の方が重要だったから・・・・」

「そうですね。母上、そして退王様には感謝しております」

「ただ、・・・・よくよく考えてみれば、何時だったかしら? 貴方も知っていると思うけれどナチュリアでは王子は12歳の誕生を機に王族としての正式な公務の基礎を学ぶようになるのだけれど、それから間もなくの頃だったかしら。確かサニエル王子は政務室で酷い高熱を出して倒れたのよ。王様も酷く心配されていた事があったからその事だけは覚えているわ」

「高熱で倒れた? 流感か何かですか?」

「いいえ。そう言うものでは無くて、原因不明だったの。唯熱が高くて数日魘されて。今思い返してみれば、サニエル王子の変な噂を耳にするようになったのはその後暫くたってからだった気がするわ」

母の話を聞き、セイラルの中に今まであったサニエルに対す考え方が少しずつ崩れて行った。
サニエルに一体何があったのか?
その疑問を投げかけた時、頭を霞めたのは3つの病名だった。
それはともすれば人格をも変えてしまうかもしれない可能性を秘めた病名。
1つは頭の中に何かが出来、それが悪さをしている最悪なパターンと、もう2つは死とは全く直結しない精神的な部分から発症する心意的病。
マリーサの話では侍医は唯の偏頭痛と慌てた様子も無く冷静だったと言う事から、おそらく前者の病名では無いだろう。
サニエルのあの気性の激しい乱れた生活を好む性格が奴の本来の姿で無いのならば、マリーサに向けられたと言う今回の暖か身を帯びた気質も頷ける。
倒れる前にマリーサに向けられた優しさを思わせるサニエルの行動は、今聞いた12歳までのサニエルの様子からは想像出来るものだった。

「私が直接探るのはままなりませんので、サニエルが何故今の様になってしまったのか調べて頂けませんか?」

「その事については、私も過去を十分調べさせた。だが、特別なものは何一つ見つからなかった」

「そうですか・・・・」

「サニエル様に聞く事が叶えば一番良いのでしょうが、まさか易々と会う事が叶うとは思えませんしね」

「そうだな。運よくサニエルが了承しても何よりまた側妃が色々と口を出して来そうだ。今回のマリーサの話を聞いている限り、何かを思い出そうとして頭痛を起こした可能性も否めんからそうなると強く要望するのもな。とは言え、今聞いたサニエルの子供の頃の様子から推察すれば、病的要因でサニエルが変化を齎しているのならば何かをきっかけに昔のサニエルに戻る可能性も否めんな。事実マリーサの告げていたサニエルの興味は先程の子供の頃の趣味を彷彿させるもだからな」

「そうか。では私は、まだあの子を失わずに済むのかもしれないのだな・・・・」

ポロリと退王の口から零れ出た言葉には、サニエルに対する愛情が見て取れた。
退王は一月ほど前の事件に続く先日の騒ぎを聞きつけ、今回サニエルを臣に下らせるにあたり、当初廃爵された公位を継がすべく動いていたが、今回それを中止する旨を伝えるつもりだと口にしていた。
悪しき行いをする者を成人後も庇いだてする必要は無いと思っているようだったが、ここ数年のサニエルが病故の過ちを犯していたのだとすれば状況は異なる。人格が病が原因で変貌を遂げたのだとすれば、その原因を取り除くことが出来れば或いは・・・・。

一つのきっかけに望を託し、どうやら退王様は考えを改めた様だった。

「警戒をしつつ、マリーサに引き続き探らせます。おそらくこれから介入して来るであろう側妃様の行動と共に」

そう告げるとセイラルはマジミールと共に退王邸を後にした。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《24.身 震》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《26.手 紙》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《24.身 震》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《26.手 紙》】へ