記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《26.手 紙》

 ←記憶の彼方とその果てに -第2章-《25.会 合》 →記憶の彼方とその果てに -第2章-《27.温 室》
マリーサが神妙な面持ちでセイラルの部屋を訪ねたのはそれから2日目の事だった。

「あ、あの・・・・、実は側妃ナジリル様からお手紙を頂いたのです・・・・」

「側妃から!?」

セイラルはそう告げるとマジミールと顔を見合わせた。
ついに来た! 心躍るとは正にこの事だ。

「はい・・・・。あの・・・・どうすれば良いでしょうか・・・・。マゼランド様の予測の中にはこのようなケースについての行動は何一つ記されていないものですから、戸惑ってしまって・・・・」

いつものしっかりしている年齢よりもかなり年上に見えるマリーサの表情は、一瞬にして幼い者に感じられた。
今までのあの大人じみた行動と発言は全てマゼランド殿の影があってこその姿で、この少し心もとない姿こそが彼女の本当の姿ではないかと初めて垣間見れた瞬間だった。

「慌てる必要は無い。こちらでは予測範囲の行動だ」

「本当ですか?」

心なし俯いていた顔が、キリリとした表情に代わり前を見据えた。
ああ、先程の姿が彼女の本当の姿なのかと思うと、何処か安心した。

「側妃は何と?」

「はい。サニエル様が私に会いたがっているから、来てくれないかと・・・・。今はまだ頭痛がいつ起こっても可笑しくない状況だから、外には出せぬからと・・・・」

「成る程、そう来たか」

「どうしたら良いでしょうか?」

「何の問題も無い。会いに行ってやれ」

「良いのですか?」

「但し、護衛は付ける。大切なアーリアの侍女だからな。腕に覚えはあるだろうが、剣は勿論持って行けぬし、敵陣に踏み込むのと一緒だからな。扉の外で待機させるから何かあったら叫べ。おそらくその場には側妃が来る」

「・・・・側妃様が!?」

マリーサが目に見えて身を固くした。

「サニエルが会いたがっているのは事実だろうが、実際に切望しているのはおそらく側妃の方だろう。この手紙は、おそらくサニエルを利用したに過ぎない」

「側妃様が、そこまでして私に?」

「今回はお前が利用できる人間かそうで無いかを見定めるつもりかもしれん。くれぐれも悟られる事の無い様に気をつけてくれ」

「は、はいっ!」

当初セイラルがサニエルをずっと警戒し続けたのは、自分が帰城してからの奴の行いと、奴が側妃と画策、或いは側妃個人が奴を利用してマリーサを介しこちらに何か仕掛けて来ると踏んだからだった。
だが、このような手紙が届けられたと言う事は、サニエルが何かをするだの或いはサニエルに何かをさせると言う事を側妃がおそらく諦めたからだ。
でなければサニエルではなく、側妃自らが手紙を寄こすような事はしないだろう。
計画には無かっただろうがサニエルが病に倒れた事で、今までの二人の関わり合い方から言っても、見舞いに来てくれと母として頼む事事態そう不自然な行いではない。
この状況から推察されるべき事は、サニエルが既に利用できない状況か、本人が拒んで手紙を書こうとしないかのどちらかだ。
サニエルを見舞うと言う絶好の名目が作れる状況の中で、あの側妃が手の内に入るかもしれない絶好の獲物を、自ら何も行動を起こさず、みすみす見逃す等と言う事を想定する事事態何処か不自然だった。

「無理にとは言わないが、もし可能であればサニエルの子供の頃の話を聞いて来てくれ。何かあついの不可解な最近の行動を解き明かす糸口が見い出せるかもしれない」

「分りました・・・・」

マリーサは、人伝に聞くサニエル王子の酷い行いを大まかな概要でしか知らない。
それ故自分に向けられたサニエルの現状がとても異質な存在だとは頭では分かっていても、何処か全てを信じきれずにいた。
上辺だけであったとしても彼は自分にとって、とても優しいい人だった。
そう感じさせてくれる人だったのだ。
あの優しい彼こそが本当の姿であったのならば・・・・。
セイラル王子に退王邸での会合の話を聞いて以降、心の中で期待している自分がそこに居た。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《25.会 合》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《27.温 室》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《25.会 合》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《27.温 室》】へ