記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《28.見 舞》

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アーリア様について城の色々な場所を覚えたつもりではあったが、まだまだ城の中は未知の世界で、今日は護衛の者が付いてくれ案内してくれているから良いが一人では地図を書いて貰っても中々辿りつけなかっただろうと思う。
ここまでの道順を覚えておこうと真剣に頭の中に叩き込もうと試みたが一度ではハッキリ言って自信ない。

「こちらがサニエル様のお部屋です」

暫く待つように言われ、少し離れた所から様子を伺う。
入口で部屋の前の護衛兵が中の者と話をすると程なくして中から従者が現れた。

「お聞き致しております。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

従者にそう案内されて中へ通された。

「し、失礼致します」

深々と頭を下げ、そのまま顔を真っ直ぐ上げられないまま足を踏み出した。
側妃様は既にこの場に足を運んでいるのだろうか?
緊張で胸の鼓動は最高潮に高鳴っている。ずっと下を向いたままでは失礼だ。
勇気を振り絞り顔を上げようとした瞬間、見知った者の声が聞こえて来てホッとした。

「マリーサ! ホントに良く来てくれたね。この日を指折り数えて待っていたよ」

てっきり寝台で横にでもなっているのだと思っていたサニエルは普通に着替えも済ませ、リビングを思わせる入って直ぐの広い部屋の長椅子に座り寛いでいた。
辺りに側妃様の姿が見当たらない事に胸を撫ぜ下ろした。
今からこれでは先が続かない。しっかりせねばと自分に言い聞かせた。

「・・・・お加減は、もぅ宜しいのですか?」

「うん。元々大した事はないんだ。母が心配して大騒ぎしただけで、たまにまだ頭痛には悩まされるけれど、それは仕方ないと言うか・・・・。だから心配しないで」

サニエルは何でもない事の様にサラリと物事を捕らえ対処していた。

「・・・・本当に大丈夫なのですか?」

「この頭痛が何時まで続くか分らないからまだ注意は必要だけど、ただ起きる前兆と成り得る状況については侍医の話で理解できたから、これからは自分でも気をつけたいと思っている」

「そうなのですか。それは良かったです。・・・・良かったと言うのも変ですが・・・・」

「そうだね」

柔らかに微笑むサニエルの姿に、あの時と変わらぬ優しさを汲み取ることが出来、この部屋に入ってからの緊張が解け、何処か少しだけ肩の力が抜けた。

「あ、あの、これお見舞いです。庭師の方に用意して頂いて・・・・」

「ああ、温室の花だね。とても懐かしい香りだ。スズラニームにオリオネランか! 有難うマリーサ」

サニエルは花の香りを楽しむ様に目を細め息を大きく吸い込み香りを楽しむと、従者にそのまま手渡した。

「そ、それと、これ・・・・。私の大好きな詩集なのですが、お休みでしたら読んで差し上げようかと思っていたのですが、必要無いようですから良ければ御気分の良い時にでもお読みください・・・・」

マリーサは少し途惑いながらも、そっと差し出した。

「えっ!? 読んでくれるつもりだったの?」

「あっ、はい・・・・」

「では、今から横になろうか?」

悪戯っぽく笑うサニエルの姿にマリーサは慌てて両手を振り否定して一歩後退した。

「いっ、いえ。あの・・・・」

その反応にフッと鼻先でサニエルは微笑んだ。

「冗談だよ」

「・・・・冗談・・・・、ですか・・・・」

安心したようにホッ胸を撫ぜ下ろす姿に、またサニエルはクスリッと笑った。
すると受け取った詩集をパラパラと捲り、中から挟んでいたしおりがポトリと落ちた。

「へぇ、楓の葉とマツロイ花のしおりなんてあるんだ。珍しいね。何処で見つけたの?」

落ちたしおりを拾いながら、まじまじと見つめる姿はとても柔らかで温かい表情だった。

「いえ、それは、私が・・・・」

「何!?」

「いえ、あの・・・・。今日、本当はお誕生の式典が開かれる筈だったんですよね?」

「・・・・そうだってね」

まるで他人事のような、全く興味が無いと言う冷ややかな口ぶりだった。
大勢の人達から祝って貰う盛大なパーティが嬉しくないのだろうか?

「お祝いなんて大それた事は私には出来ませんけれど、これだったら邪魔にもならずに使って頂けるかと思って・・・・。側妃様にお手紙を頂いた翌日、いつもの場所に摘みに行って・・・・」

「えっ!?」

サニエルは驚いたように目を見開いた。

「気に入らなければ捨てて貰えば良いかなと思っていたので、気に入って頂けたようで良かったです」

「・・・・・では、これ、マリーサの手作りなの?」

「はい・・・・。子供の頃に作ったきりで・・・・、しおりなんて子供騙しの作り物なんですが・・・・」

「いや、そんな事ないよ!! 凄く嬉しい! こんな嬉しい事ないよ・・・・」

サニエルは満面の笑みを称えながら熱弁し、マリーサの肩に手を触れたその時だった。
ノックも無しに扉が突然開けられた!

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~ Comment ~

NoTitle 

こんにちは~^^
すみません…忙しくて…貯まりに溜まってました(><)
おバカな弟王子は可愛い弟王子だったんですね!!!
なんか可愛くなってる…(^m^)
誰の所為でそうなっちゃったのか…?
弟王子このまま可愛い弟になって欲しいなぁ~~~^^

はのん様 

今日は^^
いえいえ、いつも有り難うございます^^
馬鹿王子、実は・・・・だったんです♪
で、その経緯はそろそろ大雑把に気付かれたかなと思っていたのですが、まだ気付かれて無いようで何だかホッ(^m^)
誰の所為でそうなっちゃったのかはもう直ぐ書く方がそこに到達するので、明かされるのは今月下旬でしょうか?
弟王子がこのまま可愛い王子になれるのか?暖かく見守って下さいね♪

P.S 例の件有り難うございました^^
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