記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《35.恩 情》

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詰所で待機していた第一王子セイラル付第三従者ブロンソは第一従者マジミールからの急な呼び出しにかなり驚いていた。
通常単独で呼び出されるとすれば自分では無く第二従者ロドリコだ。
ロドリコが留守の時に呼び出された事等今まで一度も無かった。
何かあったのか?
それにマジミールの表情は何時もと違いかなり強張っている気がした。
神妙な面持ちで呼び出しを受け、王子の私室へ急いだ。

「セイラル様、マジミールです。第三従者ブロンソをお連れ致しました」

『入れ』

「失礼致します」

「失礼致します」

第一従者マジミールに続き深々と頭を下げると王子の部屋へ入室した。

「お呼びと伺いましたが、如何言ったご用でございましょうか?」

「まぁ、良い。そこに座れ」

「いぇ、私はここで・・・・」

「殿下の仰せだ。良いから座れ!」

何時になく厳しいマジミールの口調に緊張が走った。

「・・・・はい・・・・」

まさか、ついにあの事がバレてしまったのか!?
ならば今日で全ては終わりだと覚悟し、息を詰めた。

「緊急措置を取らせて貰った。申し訳ないがここにサインしてくれないか?」

「はぁ!?」

予測とは全く違った言葉に、全く頭がついて行かなかった。

「随分と苦労して来たようだが、お前の父上には領地を任せられなくなった」

「!!」

まさかの発言にブロンソは瞳を大きく見開いた。

「また、随分と財を使っているそうではないか。側妃が援助した金は復興支援基金として災害で財を損失した場合に補填として国が補助を行う金だ。側妃は正式な手続きを踏んでおり、それについて当時の出資に関して何ら問題は無く思われていた。だが、我らの調べでは原因はそれだけでは無かった。賭け事による金の使い込みも以前から随分とあったようだな。申し訳ないが申請書類の不備が見つかり、今回申請不備による措置を取らせて貰う事にした。お父上には今後男爵領の管理を退いて頂く」

「・・・・何を言っておられるのですか?」

復興支援金など、そう言ったものは全く耳にした事が無かった。
父からは側妃様が全て援助して下さったとだけ聞いていた。

「ここの21項を読め」

そう言われ、書類に目を通せば、“申請書類に不備があった場合、いかなる理由があろうとも地主はその職を免ず”と、あった。

「その件に関しましては、私は何も・・・・。復興支援基金と言う制度についても今初めて伺いました次第で・・・・。現状が上手く飲み込めません・・・・。では、我がウラジオン男爵領は今後どのようになってしまうのでしょうか?」

「跡継ぎが居ない場合は国に返還、居るがまだその地位に就けない子弟や事情のある場合は一時国の預かり、若しくは補佐をしての管理が申請により可能となる。お前はどうする?」

「・・・・どうすると言われましても・・・・」

「このまま側妃の犬として一生を終えるつもりならば、返還するしかないな」

「!!」

ゆっくりと顔を見上げればそこには、何の戸惑いの無い二人の姿があった。

「・・・・・何時からご存じだったのですか?」

「最初から怪しいとは思っていた。ああ言う場に側妃がしゃしゃり出て来る事事態、今まで無かったからな。だから探りを入れた」

「・・・・最初から・・・・」

「だが、お前は真面目に仕事も熟していたし、事情は理解できたから暫く泳がせることにしたのだ。容易に毒が仕込まれるようになり、更に疑いは濃くなって行った。だが、本当の意味で確信したのは、マジミールの上着に仕掛けていた髪の毛が無くなってからだ」

「!!」

「側妃には何と報告したのだ?」

「・・・・そこまで知られてしまっているのでしたら、何も申し上げする事はございません。恐らく貴方の調べられた事が真実なのでしょう。まんまと側妃様の罠に嵌り、この様な事までしでかした恩知らずの私を、どうか罰して下さい。家の事については先祖に顔向けできずに申し訳なく思いますが、これがやはり我が男爵家の運命だったのでしょう。ですが、どうか母だけは私が捉えられましても御慈悲を頂きたく・・・・」

「何を勘違いしている?」

「・・・・はぁ?」

「私はここにサインしろと言っただけだが?」

よくよく書類凝視し確認すると、そこには『領地一時預かり申請書』と書かれてあった。

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