記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《40.知 得》

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サニエルがファンネに連れて来られたのはセイラル王子とアーリアの部屋のすぐ傍にある謁見の間の一つだった。
そこで、暫く待つように言われ、マリーサに会わせて貰えるのかと落ち着かない気持ちの中待っていたら、現れたのは意外な人物だった。

「・・・・どうして君が!?」

自分の目の前には金輪際姿を見せるな!と言いきったアーリア本人が立っていた。
呆然と立ち尽くしていると、いきなりその頬を叩かれた。

「何を!!」

頬を押さえ、突然の所行に咄嗟に声を荒げかけた途端、目を向けたアーリアの瞳からはポロポロ涙が伝い落ちて行った。

「・・・・貴方になんて・・・・本当にもぅ会う気無かったのに・・・・。でも、私はどうしても貴方が許せない! マリーサがあんなになってしまったのは貴方のせいよ! マリーサが貴方に会いに行った事、私、知っているのだから!! 何も知らないなんて言わせないから!! 戻してよ・・・・。今すぐマリーサを元のマリーサに戻してよ!!」

泣きながら崩れ落ちそうになるアーリアの許に一足遅れて現れたマリーサは慌ててそっと傍に近寄うとその腕を支えた。
その支えるマリーサの腕は小刻みに震えていた。

「!!・・・・マリーサ・・・・」

あまりの衝撃に、呆然と佇むサニエルに、それ以外の言葉は出て来なかった。

「・・・・申し訳ございません、サニエル様・・・・。アーリア様は誤解されていて・・・・。サニエル様はきっと何もご存じ無かったのですよね。そう申し上げたのですが、その様な筈は無いと信じて貰えなくて・・・・」

それもそうだろう。
昔の事を思い出すまでの自分がアーリアに行った所行を思えば、何を言った所で簡単に信じて貰えるとは到底思えない。
だが、マリーサの身に何かが起こっている事は明白だった。

「・・・・一体何があったんだ? ・・・・聞かせては貰えないか!?」

サニエルは神妙な面持ちでマリーサを食い入るように見つめた。
その視線はマリーサ一点に向けられ、他の全てが遮断されていた。
あれ程執着していた筈のアーリアすら傍に居ると言うのに既に自分の視界には入っていない。
その時初めてサニエルは自分がマリーサに向けている感情を理解した。

彼女は欲の対象では無い。自分にとって唯一、守りたい存在なのだと・・・・。


全ての様子を向かい部屋の扉の陰でこっそり見ていた者が居た。
頃合いを見計らったようにその場に現れると、その者はサニエルに対し深々と頭を下げた。

「お前!!・・・・」

突然の好ましからざる者の登場にサニエルは一瞬にして身を固くした。
サニエルにとって従者マジミールはセイラル同様会った時から敵対すべき存在だった。
 
「私に対し色々思う所はお有りでしょうが、マリーサを大切に想う気持ちが少しでもお有ならば私の話を聞いては頂けませんか?」

突然の登場にあからさまに敵意を剥き出しにしたサニエルだったが、マリーサの為と言われた途端、握り上げそうになった拳を下ろし震える様に怒りを鎮めようとしているのが分かった。

「・・・・何だ・・・・」

「マリーサの為に、今のサニエル様は何が出来ますか?」

「なっ、何を行き成り・・・・」

突如告げられた言葉に少し慌てたように目を伏せるサニエルの姿は、ほんのり赤みを帯び今までにない初々しさを感じさせた。

「ファンネ殿より先程の詰所に現れた様子も伺っております。マリーサ嬢の事を心配して来られたのですよね? 最初は何か裏でもあるのかと勘繰り様子を伺っておりましたが、今のマリーサへ向けられる姿を拝見し、ある意味安堵いたしました。その驚き方はとても演技とは思えません。本当に気にかけておいでの様に見受けられました」

「だっ、だったら何だ!」

「ですが、今のサニエル様はまだ側妃様に近いお方だ。その者に今マリーサの現状を詳しくお話しする事は出来ません。サニエル様にとって一番大切なのは何方ですか? お母上か、マリーサか・・・・はたまたこの期に及んでアーリア様と言う事は無いとは思いますが、お選び下さい」

「とっ、突然不躾では無いか!!」

サニエルは一瞬たじろいだ。
視線の矛先を従者からマリーサに移すと、マリーサは目線をそっと落した。
アーリアは強い眼差しで自分を睨みつけている。

「・・・・やはり母上が・・・・マリーサに何かしたのか?」

「今は何もお答えできません」

「・・・・・」

「直ぐに御判断されるのは難しいでしょうから今夜夜半過ぎ、お母上と決別する覚悟があるならば、退王様のお屋敷に供を連れずに一人でお越し下さい。そこで退王様等を交え、証人になって頂いた上で先日マリーサの身に起こった件の全容をお話し致します。勿論、他言は無用です」

「・・・・分かった・・・・」

「それと、貴方様にその意思が有ろうと無かろうと、もし、この事が側妃様に知られる事となれば、その時点でこの商談は無効と致します。そこまでの危険は冒したくありませんから」

用件だけ告げると、従者姿のセイラルは深々と頭を下げ、その場を去った。

「本当に不躾な奴だな」

「貴方に言われたくはありません!! 今までの貴方の行いを思えば当然です!」

アーリアの強い言葉に、サニエルは過去において自分がアーリアに犯してしまった罪を初めて酷く恥じた。
今の自分にとってはもぅずっと遠い過去の様な思いだが、実際はまだひと月少し前の話だ。
おそらくアーリアのつけられた心の傷はそう簡単に癒えるものでは無いだろう。

「あの時は、本当に済まなかった・・・・」

一言そう告げると、サニエルはマリーサの耳元で『必ず行くから』と告げると、その場を後にした。

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