記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《41.情 感》

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サニエルは謁見の間を出てはみたものの、困惑していた。
さて、これからどうしたものか・・・・。
王太子に与えられた私室用のスペースである幾つかの部屋の前を経て角を曲がる直前に足を止めるとその場で佇んだ。

自分の心は既に決まっている。
『必ず行くから』とマリーサとも約束した。
彼女の事は何としても自分が守る!
その事だけは何があっても覆すつもりは無かった。

だが、こう言う事態になろうとは全く想定していなかった為、そこまで深く考えずに部屋を飛び出して来てしまった。
戻ったら暫く部屋から出して貰えないだろうことは十分覚悟しての試みだったのだが、今回それが裏目に出てしまった。
母には後でひたすら謝り、セグウェイに落ち度はない事を分かって貰えるようにきちんと話そうと思っていたのだが、このままではとても戻れない。いや、戻る訳には行かない!
今の状況では戻れば出ることは二度と叶わない。ならばどうすれば良いのか思案に暮れた。

1人部屋に残して来たセグウェイの事は勿論気に掛かるが、もぅ自分の心は後戻りできない所まで来ている。

(済まない、セグウェイ・・・・)

心の中で彼に心から謝罪した。

今は母の所に戻れない!
それは決まった。だが、この後自分はどうするのか? どうすべきなのか?
例え母と言えどマリーサの身に何か危害を加えたのであれば、色々と思う所はあるが最終的に自分はきっと許す事は出来ない!
予てより母には自分が腹黒い思惑を抱いていた頃から、マリーサには手を出さないように重々言ってあった。それを抜きにしても何度も・・・・。
だが、母はその意向を受け入れてはくれなかった。
それ所か、きっとマリーサに何かした。
母にとってマリーサは利用する事で価値を見出せる。ただ、それだけの存在だったと言う事だ。

何も教えてくれなくてもあの全身が小刻みな震え、止まらない状態のマリーサを見ていれば母が何かしたであろう事は十分推察できた。
母に問えばまた全ては私の為だ何だのと聞きたくも無い正論まがいの戯言を聞かされるだけだろう。
それは自分にとって正しい事でも何でも無い。母の自分勝手な自己満足に過ぎない。
今思い返してみれば母が今まで自分の為にとしてしてくれた事の全ては、本当の意味で母の満足感を増長させているに過ぎなかったのだと理解した。
あのセイラルに対してもそうだ。
自分は暗殺してくれなどと一度たりとも母に自ら望んだことは無かった。
兄であるセイラルに対し酷い嫌悪感を抱いていたあの頃でさえ、死んで欲しい等と思った事は無かった。
あの頃の自分は、人に命令される事が嫌で、自分の想い道理にならない事が我慢ならず悪態ばかりをついていた。
今考えれば恐らく何かがあって自分は自暴自棄になっていた事は分かる。確証はないが、そんな気がしてならない。

それが何だったのかは未だに思い出せずにはいるが、色々と本来の自分の姿を少しずつ取り戻して行く中で、母と自分の考え方に大きな溝がある事が分かった。
特に最近色々と思い出して行く中で、感覚的な物の捉え方の違いを酷く感じている。
今の自分はかつての自らの行いを酷く恥じている。
何故あのような真似が易々と出来たのか?
自分本位な物の考え方に周囲を巻き込みやりたい放題。
色々な者を傷つけても何ら囚われる事の無い罪悪感。
優越感すら感じていたかつての自分が今は何処か遠い存在だった。

まだ時折今までの自分の感覚に翻弄され感情を上手くコントロールできない事も多々あるが、心の何処かでそれを制止させようとする自分が今は存在している。
おそらくそれは忘れ去られていた本来の自分と関係があるのだろうと思う。
ならば、ともすれば自分は本来の自分の姿に変われるのではないか?
それはマリーサとの関わりの中で更に強いものへと変わって来ていた。

自分がどう言う経緯で少し前までの考え方に囚われ心が歪んでしまったのかは分らないが、今の自分には世間一般の言う事の良し悪しがハッキリ理解出来る。
その状況の中で、母がしようとしている事が犯意的行為である事も十分に・・・・。
やはりこのまま部屋には戻れない。自室のある棟へ足を踏み入れることも!
既に自分が居なくなったと言う知らせは母の耳にも届いている頃だろう。
まさかこちらに居るとは易々とはバレ無いにしても、それもおそらく時間の問題だ。
ならば、どうする?

思いを巡らせ頭を過ったのは、頼みの綱となるであろうある人物唯一人だけだった。

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