記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《42.計 画》

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セイラルは自室へ戻ると夜着にローブを引っ掛けたまま部屋を整えるマジミールに話しかけた。

「何とかなりそうだ」

「そうですか。それは宜しゅうございました」

「お前は何もせずに寝ていて良いぞ」

「そう言う訳には参りません。セイラル様もここで政務をして頂いているのですから、私も従事ごとはきちんと熟しませんと」

「私の場合は、今は病と言う事になっているからな。そう仕事も回してくれんし暇で仕方ない」

「それは致し方ございませんよ。療養中の身なのですから」

ぼやく主にマジミールは苦笑いを零しつつ主のお気に入りの香りをブレンドした紅茶を差し出した。

「アプリコットか。良い香りだ」

今現在セイラルは疲労の為、暫く政務を休むと言う扱いになっている。
だが休むと言っても急を要する物だけは一様無理矢理引き取ってはいる。
この計画で、これから今まで以上に周囲に迷惑を掛けてしまう事が分かっている分、少しでも彼らの負担を減らしておきたいのだ。
その為、身体に無理のいかない程度に今は自室で政務を熟していると言う形になっている。
故に現在セイラル王子に扮するマジミールは必然的に夜着のままだ。
日に何度も侍医が経過観察に訪れる為、何時でも対処が出来る様にこのような形の方が今は都合がいいのだ。

「来週からが問題だな。お前の病状は悪くなる予定だし人の出入りも多くなるだろう。ずっと薬漬けで辛い思いをお前にさせるのは忍びないが・・・・すまんな」

「確かに薬が切れるまで辛い時もありますが、基本横にならせて頂けるので、今はそう大きな負担ではございません。ですが、これが病状を重くする為に頻繁な服用が義務付けられればどうなるか、私も状況が今一つ掴めません。何分このような経験は初めてですから」

「そうだな」

「ですから出来る事ならば侍医にずっと居座られない状況を作って頂けると有難いのです。幸いセイラル王子が私以外の者を部屋に入れる事を好ましく思っていない事は周知の事実ですし、今のままの状況が持続できれば言う事は無いのですが・・・・」

「しかし、それでは侍医も納得しないだろう。病状が悪化すれば出入りも頻繁になる。何か正式に資格を持つ者が傍に付いていなくてはと絶対に進言して来ると思うぞ」

「ですから、ここは少し心苦しいのですがファンネ殿にお頼みできないでしょうか?」

「今の状況でファンネをここへ戻せるのか?」

確かにファンネに来て貰えるのであれば言うことは無い。
ファンネには結婚するまでさるお屋敷の看護人として働いていたと言う実績がある。
乳母を選ぶ時の審査でもそれはかなり有利に働いたと聞く。
子供の頃、怪我だ病気だと言った時、良くファンネは機転を利かせて対応してくれていた。
だが、今アーリアの所も大変だ。ターニアの足が完治したとは言え、マリーサがまだ万全に働けない状況だ。
その上ファンネまで抜ければ、ターニアの負担は計り知れないものになるだろう。

「そうですね・・・・。アーリア様の侍女の負担が大きくなりますね。王子も私もジナスで騎士団として働いていた折、ある程度の知識を身につけておりますし、何よりファンネは乳母ですので要望すればある程度受け入れられると思ったのですが・・・・」

「ターニアに暫くかなりの負担をかけさせてしまう事になるが、頼んでみるか。侍医等に長く居座られればこちらとしてもボロが出る可能性も高いしな。侍医を騙す訳だからな。事は慎重に進めなければならない」

「申し訳ございません」

計画の遂行を思えば、侍医に不信を抱かせない為に、最善の策を立て、手を打っておく必要があった。

「お前が謝る事では無い。これはこの計画を遂行するためには必要な事だ。とりあえず、ファンネと早速話をしよう。侍女等の事は詳しくは分らんがマリーサは本調子ではないしターニアにはかにりの負担を強いる事になるだろうが」

「今ある症状の震えと喉の渇きについては日にち薬のようですので、日に日に回復しましょう。ターニアの足が完治しているのが幸いでした」

「そうだな」

何とかファンネに話しを付けて貰う他ない状況だった。 

「それよりも、すっかり話の方が私の方へとすり替わってしまいましたが、サニエル様の件、何処までお話しするおつもりですか?」

「それが難しい所なのだが、あの事実がサニエルを変えたきっかけとなったのだとしたら、あいつも不憫だな」

「そうですね。かなり純真な子供の様でしたし、当時12歳の子供が知る事実としてはかなりの衝撃だったでしょうね」

「この事実をサニエルに知らせる事が、果たしてあいつを救う事になるのだろうか・・・・」

「分りませんが、その事実を知れば、マリーサの件に加えて側妃様を許せないと言うお気持ちが強くなるのは確かだと思います」

「そうだな・・・・」

セイラルは迷いながらも何かを決断したようだった。

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