記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《43.駆 込》

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サニエルは謁見の間を出ると警備の者を避けながらそのまま下働きの者達が通常使用している使用人通用口に向かった。
少し前まではこの存在すら知らなかったが、先日思い出した記憶の一部にここから抜け出したものがあった。
厩舎に向かい、馬を調達するとその足で隣の敷地にある退王の屋敷を目指した。
急ぎ馬を近くの幹へ繋ぐと、大扉を叩いた。

「祖父君! 私です。御目通り願います!!」

退王の事を祖父君と呼んで良い者は限られている。
先日まで未成年であったサニエルはいつも祖父である退王の事をそう呼んでいた。
執事は慌てて扉を開けると、その姿に驚愕している様だった。

「・・・・サニエル様・・・・如何して・・・・」

「話は後だ! 早く閉めろ!!」

サニエルは執事に有無を言わさず即座に中へ入り込むとそう命令し、扉に鍵を掛けさせた。

サニエルは窓の脇から外の様子をこっそり覗き見、エントランスの椅子に座ると大きく息をついた。

「追っては来ていないようだな・・・・」

執事もその言葉に窓辺から外の様子を覗き込む。
何の変化も無く、外は穏やかないつもの風景だった。

「大丈夫です」

「・・・・そうか・・・・」

「如何なさったのです?」

「申し訳ないが、暫く匿ってくれ。母から逃げて来た」

我が耳を疑うような言葉に、執事は一瞬呆然とした。
つい、ひと月程前の事件の後、初めて屋敷に王様、側妃様と共に現れたサニエル様は、とても不機嫌極まりないと言った態度で、あからさまに嫌々と言う態度が感じられるものだった。
ずっと仏頂面で結局一言も言葉を発しないままだった。

それが今度は自らの意思で、それもあれ程庇護を受けていた母から逃げて来たと言うではないか!
あまりの変わり様に、どう対処して良いやら少し戸惑いを覚えた。

まさか、あのサニエル様の口からそのようなお言葉を聞く日が来ようとは!

「少々お待ちください。とにかく主人に聞いて参ります」

「ああ、突然訪れて申し訳ないが、宜しく頼む」

「えっ!?」

「何だ!? どうかしたのか?」

「いっ、いえ。何でもありません。直ぐに聞いて参りますので、それまでこちらの応接室でお待ちください」

まるで、別人だ。人を気遣う等と言う言葉がサニエル様に存在していたとは・・・・。
少し混乱気味の執事であったが、それを御くびにも出すことなく淡々今ある自分の役割を熟す。
執事はその場で給仕の者に後の事を任せると、深々と頭を下げて急ぎ退王の許へと急いだ。


サニエルは給仕の者が出してくれた紅茶を飲みながら、色々考えを巡らせていた。
先ず、祖父君に会ったら今までの数々の非礼を詫びようと心に決めていた。

前回、前々回と訪れた折もかなり酷い不躾な態度をとってしまっていた。
せっかく視察に誘って頂いていた折も最後は

『行けば良いんだろぅ!? 行けば!!』

等と言う悪態をついてしまった。
あの時は酷い仕打ちだと思っていたが今ならば分かる。
あれは私自身の今後の為を思い言ってくれた好意だったのだ。
よくよく考えればカンザルに赴いた事で自分は変われた気がする。
最初マリーサばかりに目が行った事は、かつての自分の邪な考えから起こった事だったが、今となってはそれが必然的な事だったのではないかとさえ思える。
マリーサと共に関わる事で自然の香りに目が向けられるようになり、その中できっかけが掴めた。
忘れ去られていた子供の日の自分。
どうして忘れてしまっていたのか?
原因は何一つ思い出せないが、今は少しだけだが子供の頃の記憶を思い出せ、あるべき本来の自分の姿を見つめることが出来良かったと思っている。
もぅ、遅いかもしれないが、これ以上人としての道を踏み外す訳にはいかないから・・・・。

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