記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《45.側 妃》

 ←記憶の彼方とその果てに -第2章-《44.祖 父》 →記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》
時刻が深夜0時を回った頃、時間を見計らったように従者姿のセイラルが退王の屋敷に訪れた。

「いらっしゃいませ。皆様既に会議室にてお待ちにございます」

「早いな。サニエルは?」

「はい。セイラル様よりお手紙を頂いた時には既に」

「!! ・・・・そうか・・・・」

これで納得がいった。
実はあれから暫くして、側妃が自室に乗り込んできたのだ。
部屋を大騒ぎしてかき回した揚句見つけられないと、絶対にここに居る筈だと続くアーリアの部屋から侍女や従者の詰所までくまなく調べ上げ、やがて気が済んだのか何事も無かったように去って行った。
まるで嵐でも起こった様な騒ぎだった。

実はあれからサニエルが如何するつもりなのかずっと気になっていた。
側妃がこれ程騒ぎ立てている事を思えば、何処かに身を隠しているのは間違えないだろうとは思ってはいたが、まさかそれ程早い段階で退王の屋敷へ赴くとは思ってもみない事だった。

従者姿のセイラルはサニエルの早々の決断を聞き、心を弾ませながら急ぎ会議室に赴いた。

「お待たせ致しました。城でちょっとした騒ぎになっておりまして、抜け出すのに手間がかかりました」

肩を竦めてセイラルは祖父である退王に深々と頭を下げて苦笑いを漏らすと、同席しているマリーサの父であるボブスレード男爵と握手を交わし、次いでサニエルにも片手を差し出した。

サニエルはまさか自分にまで握手を求められると思っていなかったのか、暫くじっと従者姿のセイラルを見つめ、躊躇しながらもゆるりと右手を差し出した。

「まさか、あれから直ぐにこちらに来ておいでとは思ってもおりませんでしたが、いや、大した決断力でした。感服致しました」

にこやかに敬意を込めて言葉を発すれば、サニエルはかなり驚いた様な面持ちで暫くセイラルを見据えていた。
まさか自分から好感の持たれるような言葉が発せられるとは思っていない様だった。 

「・・・・いや、戻れば出ることが叶わない事は分かっていたから・・・・。あの時抜け出せたのも奇跡に近かった・・・・」

かなりゲンナリした様子でそう答える姿を見て、セイラルはサニエルがこれ程までに母である側妃の監視に憤りを感じていたのだと十分に理解した。
今思い出しても18にもなろうかと言う息子が部屋から居なくなったと言うだけで城内引っ掻き回す程の大騒動は異常だと感じた。

「そうかもしれませんね」
 
セイラルは柔らかな眼差しでにっこり微笑み弟を見つめた。

「あの、母は今・・・・」

「城から抜け出したと思ったらしく、今城下を捜索中です。こちらにも捜索の者が訪れたのでは?」

「一度訪ねては来たが、知らぬと告げればそのまま引き下がった」

「流石の側妃様も、退王様にはたじたじの御様子ですね」

「退位したとはいえ、私にはまだ側妃の一族位は軽く捻りつぶせるだけの力はあるからな」

在位していた頃より、既に側妃の一族には腹黒い噂が絶えずあった。
現在退王は既に幾つかの証拠を握っていた。

側妃の一族の幾つかの黒い噂を耳にする様になった頃、王家と縁戚になれば何とかなると思っていたのか、調べが進んでいく中で奴らは一族の若い娘をこぞって王太子近付けるようになって行った。
王太子には罠に嵌るなと注意を促してはいたのだが、妻にない当時小悪魔的な少女に魅力を感じてしまったのか王太子はやがて16歳だったナジリルに執着を示す様になって行った。
このままでは大変な事になってしまうと急ぎ証拠を固めている時だった。
やがてナジリルの懐妊が告げられ、側妃に迎えなければならないと言う最悪の事態を招く事になってしまった。
あと一歩と言う所で真相を解明できないまま、縁戚に迎える事になってしまった。
結局当時は側妃の一族の罠にまんまと嵌った形で真相を暴くには間に合わなかったが、その時解明されなかった証拠はその後調べ上げ今では既に揃っていた。
おそらくその事を今は側妃も薄々感じているらしく、強く出れない節があるようだった。
今までは幼い子供等と引き離すには忍びないと思い黙認していたが、もぅそれも限界だろう。
長男サニエルは先日18歳を迎え既に成人し、下の娘等も15歳。来年には成人を迎え、そろそろ嫁ぎ先を決めても良い年齢だ。
側妃を擁護する理由も無くなる。
この際セイラルの本当の姿を公表した暁には側妃一族の罪状を公にしても構わないとさえ思っていた。

「それを今言いますか?」

セイラルは薄笑いを浮かべると退王と視線を絡めた。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《44.祖 父》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《44.祖 父》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》】へ