記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《47.混 謎》

 ←記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》 →記憶の彼方とその果てに -第2章-《48.追 求》
母は許せない!
だが、本当の意味で自分はあの母と決別できるのか?
母と決別すると言う事は、即ちこのままここへ留まると言う事だ。
妹達の事は気には掛かるが、自分がどうなろうと蔑にされる事は無いだろう。
だが、ここに留まればおそらく従者であるセグウェイはまた母に蔑にされる・・・・。
せっかく記憶の欠片を繋ぎあわせ、思い出せた懐かしい友と呼べるべき者との再会。
ずっと想い出せなかったが、子供の頃の記憶の断片にはいつもセグウェイと言う者の存在があった。
それが誰なのか気になり調べてみれば乳兄弟として幼少期より交流があり12歳になって直ぐに自分の従者として城に召し上げられていた者だと言う事が分かった。
乳母に連絡を取って貰い、母を何とか説得し、やっと再び自分の許へと連れ戻す事に成功出来たのはつい3週間前の話だ。
再会して日は浅いが全てを思い出せない自分を懐かしみ、慰め、誰よりも分かろうとしてくれている事が手に取る様に分かった。
その関わりの中で少しずつ共に過ごした記憶も幾つか思い出せた。
共通の想い出を持つ者の存在が、これ程までに心を温かくするものだとは思いもしなかった。
そして何より彼は本来の自分をとても良く理解してくれていた。
先日までの母の顔色を伺い、自分に何一つ逆らえなかった従者とは違う。
自分の事を常に立て、母であれ自分に対し出過ぎた言葉を述べれば、きちんと苦言を呈する事の出来る者なのだ。
彼以上の従者は今までもこれからも有り得ないと思った。
今周囲に居る者の中で唯一今自分が心を許せる存在だった。
自分にとって、彼は過去においてもこれからも必要不可欠な存在なのだ。
今こうしている間にもセグウェイは母に詰め寄られ、あらぬ言いががりをつけられているかもしれないと思うと胸が痛くなる。
心が決まった事は喜ばしい事であり、それを覆す気は更々ない。だが、それと同時にセグウェイの事だけが気がかりとなり、心に重く圧し掛かっていた。
母は許せない。だが、再び彼を裏切る事だけはどうしてもしたくなかった。

「どうした? サニエル何か他に心配事でもあるなら申してみよ」

迷い戸惑っている自分に気付き、声を掛けてくれたのは祖父君だった。

「実は従者の事が・・・・」

「お前の従者がどうかしたのか?」

「やっと手元に取り戻せた幼き頃より仕えてくれた友を私は部屋を飛び出す時に置いて来てしまいました。制止も聞かずに半ば振り切る形でマリーサの許へ赴いてしまいました。彼の事が心配で・・・・。母に何もされていないと良いのですが・・・・」

サニエルは自分が幼き日の事を忘れていたせいで、その者にどれだけの苦しみと負担を今まで負わせて来てしまっていたかを正直に祖父に話した。

するとその言葉に周囲の者はかなり忙し気に視線を交差させ何やら重々しい雰囲気を作り出した。
何か自分は不味い事でも言ってしまったのだろうか?

「サニエル様はその者を今後どの様な状況下になろうとも手放す気はないのですね?」

「勿論だ!」

セイラルの従者の問いに真剣な眼差しでそう答えた。

「退王様、やはりサニエル様にあの事をお伝えしましょう。従者をこれ程までに重んじる事が出来る今のこの者にならば、この件も正しく理解し判断出来ると思うのです」

「しかし、この事件が幼い頃の事を忘れさせ人格をも変えてしまうほどの衝撃を与えたのであったのならば、告げる事こそがサニエルに更なる負担をかけてしまうのではないのか?」

「そうかもしれませんが、今のこの者は幼いままの12歳の子供ではありません。それに今分かっている事を我等だけの胸に押しとどめて本人に告げぬと言うのは、成人を迎えられたサニエル様に対し失礼ではありませんか?」

「・・・・だが、それでも私は心配なのだ・・・・。やっとサニエルが正気を取り戻し、本来のあるべき自分の姿を見つけ出し、全てはこれからだと言うのに邪魔だてなどしたくないのだ!もとはと言えば、療養中で不在だった私が悪いのだ。私が病に倒れる事無く、全権を王太子である息子に任せなければ・・・・。それだけではない。ナジリルの勝手を許し粗暴な行いを認めさせてしまった事に今まで気付きもしなかった。少なからずこの件は私にも責任があるのだ。知っておればこの様な事も無かったであろうに・・・・。サニエルには本当に不憫な事をした・・・・」

「私も当時のサニエル様の事は不憫に思います。12歳の子供の心が折れる程の衝撃を与えたのです。本来非難されるべき人間はサニエル様では無くあの側妃様であった筈なのに・・・・」

自分の事を自分抜きに話される事に何処か戸惑いを覚えつつもじっと固唾を飲んで聞いていたサニエルだったが母がなにかしたかのような発言を耳にし衝撃を覚えた。

「・・・・如何言う事ですか? 母が何か・・・・私の過去においても関わっているのですか?」

少し震える口調で言葉を口にした。

その事に対し、退王も従者姿のセイラルも瞬時に口を閉ざした。

「退王様のお気持ちも理解出来る。だが、マジミール殿の申されている事の方が私には正論に感じます。これはやはり当人を無視しで話すべき問題では無い。サニエル様をご心配されるお気持ちはわかりますが、ここはどうでしょう。お二人が議論した所で埒があくとは思えませんし、サニエル様に決めて頂くのは?」

自分の言いたい事を代弁してくれた男爵に感謝しつつ、自分は大きく頷いた。

しかし異なこともあるものだ。祖父である退王が自分を心配するのは分かる。だが、自分に対し憤りしか覚えていなかったであろうあの従者から心配されるとは思ってもみなかったのだ。

「私は異論有りません」

「・・・・そうだな。もぅ成人したのだ。本来サニエルが自分で決めるべき事だな。周りがとやかく言う権利は無いか・・・・」

大きくため息交じりの深い息を吐き出し退王も、男爵の言葉にしぶしぶ折れる形で同意した。

「では、サニエル王子。貴方は過去においてどのように酷い内容であろうと、包み隠さず真実を知りたいと思いますか?」

「知りたい・・・・。自分の事ならばどんな些細な事でも知りたいと思う」

サニエルの言葉に退王は深く肩を落した。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《48.追 求》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《46.真 実》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《48.追 求》】へ