記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《51.記 憶》

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目覚めた時、あまりに頭の中がスッキリしていて、不思議な感覚だった。
あの従者には告げなかったが、自分が早急に決断できた事には理由があった。
おそらくもぅ、自分はあの酷い偏頭痛に悩まされる事も無いだろう。
何故なら、おそらく全てを思い出したから・・・・。

そう、あの日。
侍医の処方した薬を飲んでいるにも関わらず、母の熱は下がる事無く2晩が過ぎた。
感染症だったら悪いからと見舞に行く事も止められ、母が高熱を出し苦しんでいるのに 何も出来ない自分を歯痒く思っていた。
母を心配し泣き出した双子の妹を慰めながら、いつも自分に親身になって関わってくれるセルから教わったある妙薬の事を思い出した。

『この花は温暖な気候が長く続いた年にしか花を咲かせない珍しいものなのです。季節が移り替わる頃に貴重な実が取れます。その実は解熱効果のある妙薬として珍重されております』

『へぇ、では薬師に教えてあげたらきっと喜ばれるね』

『そうですね。では、その頃にまた様子を見に来て無事実が実っていたら薬師にお教えして差し上げましょうね』

『はい!』

そう約束していた事を思い出した。
そろそろ朝晩の冷え込みが激しくなってきた。もぅ季節から言えば実が実っても良い頃だ。だが今日はセルが非番だ。
道を覚えているから他の者に付いて来てほしいと告げた所で危ないからと止められる事は目に見えていた。
明日になればセルも出勤する。だが、苦しんでいる母の事と、心配して毎夜泣く妹達の姿を思うとその1日が待てずに一人でこっそり城を抜け出したのだ。
セルの言いつけを守り、足場に気をつけ慎重に進む。
そして、ついに見つけた!
思った通り花は実をつけていた!
無事実を採り、迷う事無く順調に岐路に付いていたのだが、脇から出て来た細長い生き物に驚き、途中で足を取られ挫いて動けなくなってしまった。
このままでは大事になってしまう。早く何とかせねばと思ったがどうしても自力で動く事は無理だった。
段々日も暮れて来て、どうしようかと思案に暮れていた所に天の助けだった。
セルが助に来てくれたのだ。

「サニエル様! 大丈夫ですか!? ああ、こんなに足を腫らしてしまって、良く辛抱されましたね。偉いですよサニエル様」

「セル・・・・ごめん。僕内緒で出て来てしまって・・・・。お休みのセルがここに居るって事は、皆に迷惑をかけてしまったんだよね」

「その事にお気づきでしたのなら、以後は黙ってこの様な真似だけはなさらないで下さい。ですがきっと皆も理由を聞けば大丈夫ですよ。王子の無事を聞けば皆安堵するでしょう」

セルに背負われ山を降り、城に着いて直ぐに心配する乳母に引き渡された。
周囲の者達にも謝ると、皆口々に無事で何よりだったと暖かな言葉を掛けてくれた。
母の為に採って来た木の実は乳母の手から侍医の許に届けて貰った。
翌日、妙薬の効果か母が解熱した事を知って安堵した。

母が無事回復し、妹等と母の許を訪れる事が許されたのは更にその2日後だった。
最初に面会した日に母からは二度と危険な真似をしてくれるなと酷く叱られた。
だが、母は妙薬の礼を言って抱きしめてくれた。
だからあの様な事になっていようとは露とも思っていなかったのだ。


あの妙薬の実を山へ採りに行った日を最後に、セルとは配置移動で会えなくなっていた。
最後だと知っていればもっと沢山お礼を言いたかったと思っていた。
その2か月後自分は12歳の誕生を迎え、いよいよ王子としての本格的に政務の基礎などを学ぶようになった。
それから更にひと月後、病気療養中の祖父に代わって王の代理として政務に当たる父の元で勉強していた時の事だ。
最初は政務官より書類の優先順位などの説明を受けた。
急を要する書類がどう言うものか、後回しに出来る事案にはどの様なものがあるか等、新たに届けられた書類がどの分野に該当するのかなど色々と教えて貰った。
書類の中には印を押し、署名するだけで良いものもあれば、そうで無い物もある。
父は日々一生懸命政務を行っていたが、慣れない王としても業務に次第と積み上げられて行く書類の数も多くなっていた。
そんなある日、父が署名した物に関してのみ印を押す仕事をやってみないかと声を掛けて来た任された。
確かに印を押すだけならば自分にも出来る。
忙しい父の手助けが出来るのならばと、自分も二つ返事で了承し、父の署名した書類に一様目を通し、それがどの様な者であるかを確認しつつ印を押し続けた。
そしてある日、罪を問われ死を賜った罪人の戸籍消去の手続きの書類に父が署名し印を押していた時の事だった。
その中に見知った者の名を見つけたのだ。

『セルリアン・マチュアス 罪状、危険指導致死傷罪により絞首刑施行』

セルは配置移動したのでは無かったのだ!!

「・・・・父上・・・・、これは・・・・如何言う事ですか?」

「ああ、それはナジリルが・・・・、側妃が証人として出廷した件だな。本人も弁明は無いとの事で既に刑は執行された」

刑が執行された・・・・・。
セルが罪人として殺された・・・・。
その事実を知った時、今までの自分の全てを否定した。

「・・・・嘘だ・・・・。・・・・こんなの嘘だぁーーッ!! 」

書類を破り捨て、当り散らし泣きわめいている内に気が遠くなって行った。

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