記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《52.失 意》

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目覚めた時、自分の視界の中に一番に飛び込んで来たのは、先月従者として召し上げたばかりの乳兄弟であるセグウェイの姿。

全ては夢だったのか?
ああ、良かった・・・・。

ホッとし息をついた時、セグウェイは意味ありげな言葉を告げた。

「あっ、目覚められましたか? 良かった。父君も母君もそれは心配されて。直ぐに母君にご連絡を!」

「待ってくれ、セグウェイ・・・・・私はどうかしたのか?」

「3日前、お父君の政務室で倒れられたのですよ。原因不明の酷い熱で、皆さま本当に心配なされて・・・・」

「・・・・父の・・・・政務室で・・・・倒れた!?」

・・・・ああ、あの夢は夢で無かったのか・・・・。最悪だ・・・・。
では、あの悪夢は現実なのか!?

思い出しただけで目頭が熱くなり、涙が溢れて来た・・・・。
あの優しかったセルが既にこの世に居ないなんて・・・・。

「さっ、サニエル様!? 如何して? 御気分が悪いのでしたら直ぐに侍医を!!」

「大丈夫だから・・・・」

「そうですか? では直ぐに御母君にお知らせに」

「止めてくれ!! 頼むセグウェイ・・・・知らせには行かないでくれ・・・・。特に母とは顔を合わせたく無い!!」

「サニエル様!?・・・・」

セルにつけられた罪状は、『危険指導致死傷罪』だった。
母の証言により捕らえられたと言う事は、おそらく先日の裏山の一見しか考えられなかった。
セルが配置移動したと告げて来たのも母だった。
母が全て嘘をついたのだ!!

「セグウェイはセルを・・・・あの騎士セルリアン・マチュアスの事を覚えているか?」

「はい。勿論です。私もご一緒して何度も野鳥の観察会にも連れて行って頂いて、とても優しくて、良い方ですよね。是非またお会いしたいと思っております」

何も知らずににこやかにほほ笑むセグウェイの言葉は今の自分にとってあまりに残酷なものだった。

「セルにはもう会えないよ・・・・」

「ああ、配置移動されたとか。城に上がる前に母よりそう聞きました」

「違う!! そうじゃない!! ・・・・殺され・・・・たんだ・・・・」

「・・・・えっ!?」

セグウェイも動揺を隠しきれずにその場で微かに口元が震えていた。

声も無く涙する自分と肩を寄せセグウェイは何も言わずにずっと傍に居てくれた。

一しきり泣き、少し冷静さを取り戻した頃、自分の代わりにあの日セルに何が起きたのか、セグウェイが騎士長の許に聞きに行ってくれた。
だが、騎士長も何も話してくれなかったらしい。
それでも、セグウェイは気を利かせてくれ、同僚の騎士よりセグウェイの遺族の住まいを聞いて来てくれた。
両親の住まいと、婚約者だったと言う娘の家を調べてくれ、母の留守の日を利用して内緒でその家を訪ねた。

『この国は王子を救ったら死刑になるんですか? では見殺しにでもすれば良かったですね。そうすれば息子は生きてきっと英雄にでもなれたろうよ!!』

謝罪に訪れた時、母親にそう告げられた。

婚約者の家でも

『・・・・貴方の無配慮な行動が彼を死に追い遣ったのだわ・・・・。幾ら謝罪されてもその事実は変わらない!! 貴方の存在自体が私には許せない!! 私が貴方を殺してやりたい!!』

婚約者は泣き叫びながらサニエルに手を上げようとし、それを両親が謝罪しながらその手を止めた。

謝罪の言葉が通じない・・・・。
自分ですらこれ程辛いのに、家族やこれから家族になろうとしていた者にとっての悲しみは如何ばかりか計り知れないものがあった・・・・。

城への帰り道、降り出した雨は自分の心も酷く打ち付けた。
セグウェイはずっと自分の手を握り、落ち込んだ自分を励まし続けてくれた。

「この様な日に城を抜け出すのはやはり、反対すべきでした」

びしょ濡れになった自分とセグウェイは戻って来た所を給女の者に見つかり乳母であるセグウェイの母に酷く叱られた。
だが、城を抜け出した事情を聞き、その事を理解してくれた乳母は母には内緒にしてあげると言ってくれた。
だがその夜、自分はショックのあまりか再び高熱に魘される事になった。

熱に魘され苦しみ混濁する中、自分も死んでしまいたいと思った。
死ねないのならばせめて今までの想い出を全て消し去り、楽になりたかった。
『セルの事を知らない、セルを死なせてしまった自分とは違う人間になりたい!』と強く願った。

そして、目覚めた時、その願いは叶えられていた。
過去を忘れ、自分の願い道理、かつての非道な自分を作ってしまったのは誰のせいでも無い、弱い自分のせいなのだと気付いた時、今までの行いをも今後自らが受け入れ、これからの一生を・・・・罪を背負いながら生きて行かなければならない事を自覚した。

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