記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《53.内 密》

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セイラルは自室へ戻ると急ぎ手紙を認めた。
直ちに詰所に赴くと第三従者ブロンソを呼び出しサニエル王子付従者セグウェイが帰城し次第連絡が取れればこの手紙を渡してほしいと手渡した。

手紙には最初にこれはサニエル王子の意向によるものであると言う事と、他言無用に願いたいと記した。
現在サニエル王子は退王の屋敷に滞在中であり、今後部屋へ戻るつもりがない事から必要最低限の物だけを纏め、これから退王邸で過ごせるように仕度を整え、自らも今まで同様サニエル王子に仕えて欲しい旨を伝えた。
上手く手紙が届けば、きっとセグウェイはサニエルを今後も支えてくれるだろう。

これから自分は他の事には中々手が出せなくなる。
そろそろセイラルは寝台から起きられない状況にならなければならない。
あの後ファンネの口利きで、何とか暫くアーリアの世話はターニアに一任する事が決まった。
予定では今後2週間ばかり休みは与えてやれない事から、今日から二日間ターニアには休暇を取って貰って居る。
今アーリアの世話はファンネとマリーサが二人で行っている。

「有難うございました。明後日よりファンネ殿に来て頂けるのでしたら少しは負担も軽くなります」

「ああ、それとお前には吉報だ。お前が寝たきりになれば侍医も中々傍から離れられなくなるからな。それでは辛いだろう。退王様にお願いして専属医をお借りできる事になった」

「本当ですか!?」

退王の現在の専属医は在位していた頃の侍医が王と共に一旦引退と言う形を取り、そのまま退王に雇われたと言う形を取っている。
その為、王家における裏的事情も知っている上、現王室お抱えの筆頭侍医は退王の専属医の愛弟子に当たる。
退王の専属医からこの話が直接行けば、断る道理はない。
おそらく指示を出すのは退王専属の主治医となるだろう。
実は今回侍医を騙すべく疑似的病状の指導にはこの退王の専属医も加担している。
例のレナン・ポカソに不整脈の疑似的症状を出させる為の薬を作らせた折、当人に飲ませ、薬が本当に安全なものであるかを確認し、判断を下したのもこの退王の専属医だった。
今回の計画で一番厄介だったのは、計画の最終日に最後の診断を下す者を如何にして騙すかだった。
どの様な結果になろうとも計画を遂行する為には多少の危険は伴うがこの薬の利用は避けられないとマジミール自らが調べ現在ナジスより秘密裏に手に入れる事の出来た貴重な薬も、念の為に退王の専属医に調べさせた。
マジミールの聞き及んだ話では最高で46時間もの仮死状態を作り出す事に成功した例があるとの事だったが、実際にはそれ程の仮死状態を作り出せば身体には大きな負担となり薬が切れても正常に動けるようになるかは皆無だと言うのが退王の専属医の判断だった。
そのような事をマジミールにはさせられない!
ならば身体への負担を極力避け、安全に使用できるのは何時間であるかを問うた。

『30分が限度です。勿論それ以上も理論上においては可能です。ですが、私の経験から保証できると責任をもってお伝えできるのはそこまでてす。たったこれだけかと思われるかもしれませんが30分以上体内の臓器の機能を停止させると言う事がどれだけ大変な事か想像してみてください』

そう告げた。
確かに一時的にとは言え身体の機能を停止させるのだ。負担にならない訳が無い。
ならばマジミールが幾ら大丈夫だと告げても、自分はそれ以上の量を使う事を認めるつもりは毛頭無かった。

「最後の薬は退王の主治医に管理を任せてある。お前はその者より薬を受け取り服用するだけだ。後はこちらに任せろ」

「分りました。全てをセイラル様と、退王様の主治医殿の判断に委ねます」

実際30分で侍医に死亡を確認させ周囲の者と別れを惜しみ、地下の霊安室へ移動させるのは恐らく至難の技だろう。
だが、何としてもこれをやり告げる必要があった。

「任せておけ」

「では王子のお世話も明日で暫くできなくなるのですね。少し寂しいですが・・・・」

含み笑いを浮かべ、そう告げる穏やかな様子のマジミールだが、その心中をは如何ばかりか、本当の意味で窺い知ることは誰にも出来ない。

運命の時は刻々と迫っていた。

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