記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第2章-《54.絶 命》

 ←記憶の彼方とその果てに -第2章-《53.内 密》 →記憶の彼方とその果てに -第3章-《1.安 置》
それは、早朝だった。
慌ただしく王太子の部屋へ侍医が入って行った。
何事かあったのだろうか?
セイラル王子の看病で、ここ数日一睡も出来ぬマジミール様を休ませる為に、暫く迷惑をかけてしまうけれど王子付の乳母に戻らせて貰えないかとファンネ様が問うて来たのはつい先日の事だった。
王子の病状はそこまで目が離せない程おもわしくないのだろうか?
あまり立ち入った事を聞くのも無粋な気がして、詳しく聞く事もせずにその様な事情ならばと二つ返事でその申し出を了承した。
5日前よりファンネ様が王子付の乳母として戻り、日々マジミール様と交代で甲斐甲斐しくお世話をなさっていたのは知っていたが、運命とは何と皮肉なものなのだろうか。
その後経過が一向に回復する兆しも無く、一昨日よりアーリア様も毎日時間が出来ると王子の部屋へ見舞いに訪れる事が日課となっていた。

「ずっとお顔の色も良くないの。昨夜はお食事もあまり召し上がられなくなったとの事で、心配だわ。マジミール様は大丈夫だと言ってはくれているけれど・・・・」

アーリア様には告げていないが、王子の症状は決して良いものでは無いらしい。
最初は疲労から来る軽い不整脈だと告げていた医師も、一向に症状が回復する所か今週に入り急激に酷くなって来ているらしく難色を示しているのだと言う。
そして、何よりやっかいなのは病の原因が全く掴めないと言う事だった。
このまま回復しないなどと言う事になれば、アーリア様は今後どうなってしまうのか?
ターニアは王子の病状が気になりつつもアーリア様の今後が心配で仕方なかった。

そんな折も折、従者マジミール様が部屋を訪ねてやってきた。

「申し訳ございませんが、アーリア様はお目覚めでしょうか?」

「いえ、昨夜王子様の部屋に遅くまでおられましたから、今日はまだお休みなのですが・・・・、何かあったのですか?」

「先程一度意識を失われ、今は何とか回復しましたがまだ混濁しているようなご様子で・・・・、侍医は今後どのように急変するか判断がつかぬ為、出来れば今の内に近しいものに会わせておいた方が良いのではないかと・・・・」

「!!」

あまりに突然の衝撃に、言葉が直ぐには出て来なかった。

「・・・・それは、御命が危ない・・・・と言う事なのですか?」

「原因も掴めませんので、それも不明との事ですが、意識を失うこと事態想定外だったようですので・・・・」

事態は最悪だった。

「これより両陛下にも知らせに向かいます。アーリア様にも仕度が整いましたら一度お顔だけでも王子にお見せして頂ければと思います」

「分りました」

急ぎ、アーリア様を起こし、仕度を済ませ、隣にある王子の部屋へ赴いた。


「セイラル様・・・・。お加減は如何ですか?」

「ああ、アーリア。びっくりさせて悪かったね・・・・。大した事は無いんだが、心配してマジミールが騒ぎ立ててしまったようで・・・・。今日は本当ならば午後から式の打ち合わせだったのに、私のせいで予定が立たなくなってしまって申し訳ない・・・・。式までには必ず元気になるから・・・・」

「いえ。そのようなご心配は無されないで下さい。セイラル様のお身体が一番大切ですから。式なんて何時だって出来ますから・・・・」

「そう言って貰えると、少し心が楽になる・・・・」

「ですから、何の心配もせずに今はゆっくり休まれて下さい。そして一日も早く元気になって下さい!」

この時アーリアの口から漏れたこの言葉は本心だった。
セイラル王子が亡くなれば、自分は何の蟠りも無く何れマジミール様と一緒になれるのかもしれない。
だが、この様な形では嫌だと思った。
これでは、式までに何とかすると言って下さったマジミール様のお言葉があまりにもそのままで・・・・。
まさかとは思うが、マジミール様が何かしたのではないかとさえ、疑ってしまいそうになる自分がとても怖かった。

あのマジミール様が、あれ程仲の良いお二人が自分の為に何かある筈は無いと、自分にずっと言い聞かせて続けていた。

だがアーリアの願いも虚しく、結局何が原因だったのか、正確には掴めぬままナチュリア国第一王子セイラル・グレシェード・ボナン・ガブリエラントはそれから二日後、婚約者と両親と祖父、そして長年共に過ごした従者マジミールに見守られながら深い眠りについたのだった。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



※2章完です。明日より3章開始します。

総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《53.内 密》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《1.安 置》】へ

~ Comment ~

NoTitle 

ここまで読みました。

いよいよ総反撃の始まりですね(^^)

怒涛の展開を期待しています。

どこまで読んでしまうかわからないので今日はここまでにしておきたいと(^^;)

ポール・ブリッツ様 

色々有り難うございました。
私としてはあそこに「自分」はしっくり来ない気がして変えた記憶があったので、「その」にしました(笑)

もうここまで読まれたのですか!?凄い!!
3章からはある意味確かに怒濤の展開ですね(笑)
いわゆる解決編みたいなものですから。ただ前作のように緻密には書いていないので(くどくなりそうで実はカットした)、その点は踏まえて頂ければ・・・・^^;
またお時間のある時に楽しんで頂ければと思います。

いつも有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第2章-《53.内 密》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《1.安 置》】へ