記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《6.不 審》

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マジミールと今後の話をつめたセイラルは自室へ戻るととりあえず荷物の整理を始めた。
表向きはまだセイラル王子は存命中となっている為、この部屋から退去する事は出来ないが、マジミールとしての役目を終えるのであればそれにりにしておかなければならない事もある。
次の奉公先については既に祖父である退王が手を回してくれ、自らの屋敷で雇い入れる旨、話を付けてくれている。
その為、今までの様に退王邸へ赴くのに周囲を注意する必要もあまりなくなる。
既に身近な従者やアーリア付の者達は自分の今後の行先についても話してある。

今までこの部屋になって一人になる事等無かった。
いつも側にはマジミールが居てくれて・・・・。
今まで自らが時間を気にする生活を送っていなかったせいか一人になると壁にかかる時計が妙に気に掛かりフッと見上げた。
ああ、この時間はいつもマジミールが食後の紅茶を入れてくれ、ゆったり寛いでいる時間だと言う事に気付いた。
その事を思い出し茶器に手を伸ばそうとしたが、マジミールの今の現状を思えばゆったり寛ぐその事すら贅沢に感じられ、伸ばした手を引き戻したその時、主寝室の内側から扉を叩く音がした。

「開いているぞ」

ファンネが後で話があると言っていたので、きっとそうなのだろうと気軽に声をかけたが、扉は一向に開かれる様子も無く、鍵を開け忘れたかと思い戸口に手を掛けたその時、小さく扉が開かれた。
途端に鼻腔を擽る柔らかな香りに一瞬包まれ、慌ててその取っ手を思いきり引き寄せた。

「きゃっ、わわわっ!!」

体制を崩し、倒れ掛かる喪服姿の彼女の抱き止めると、己の胸の中へと抱え込んだ。

「・・・・アーリア・・・・」

こうやって、触れるのは何日振りだろうか。
この部屋で、ここ数日顔を合わせてはいたが、こうやって触れ合う事等出来よう筈も無かった。

「・・・・マジミール様・・・・」

背に回された腕に愛しさが込み上げる。

「・・・・もう直ぐだから・・・・」

計画も一番の難関であったセイラル王子の死も成功し、アーリアとの時を再び過ごすことが出来る事になるのも間近だと思うと、思わず言葉が漏れ、抱きしめる腕には更なる力が籠る。
だが、アーリアはその言葉に意外な反応を見せた。
更に強く抱きしめ返してくれると思っていたのに、急に腕の中でもがき始めると、手で胸をひっしになって押し始めた。

「・・・・離して・・・・」

「アーリア?」

囚われていたのはほんのわずかな時間で、アーリアの蕩けるような柔らかな笑みは一瞬にして消え去り、その腕からすり抜けた。
少し距離を取り俯きながら、何か話し辛そうに言葉を紡いだ。

「・・・・聞きたい・・・・ことがあるの・・・・」

その瞬間、マジミール扮するセイラル王子の死の間際に、自分に向けられたとても不安そうな眼差しがあったことが思い出された。

「聞きたい事? 私にお応えできる事なら宜しいのですが」

全てを話せぬゆえ、言葉を選んで口にした。
するとアーリアは何か戸惑ったように一瞬視線を泳がせた。

「あのね・・・・」

「はい」

「・・・・私は貴方の事を信じても良いのよね?」

「はい!?」

何を言っているのか意味不明で、首を傾げていると次に思いもよらぬ一言が告げられた。

「・・・・セイラル様の死は・・・・本当にご病気が原因だったのよね?」

縋り付くような視線で見つめられ、一瞬息が詰まりそうになった。

何処から聞いてしまったのか?
何処まで知っているのか?
色々な想いが頭の中を駆け巡り、言葉を導き出そうと必死に考えた。
アーリアに教える可能性が一番あるとすればファンネだ。
だが、ファンネが自分に黙ってアーリアに話すなど考えられなかった。
ならば・・・・。

「・・・・如何言う意味か、おっしゃっている事が理解出来ません」

しらを切り通した。

「本当に何も知らないって・・・・信じていても良いのね?」

縋る様な瞳で自分を見つめた。
それはとても衝撃的だった。

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