記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《9.強 固》

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あまりに衝撃的な一言にアーリアと従者姿のセイラルは互いの顔を覗き込みながら握られた手に更なる力を込めた。
二人ともかなり真剣な眼差しで。

「いや、それは・・・・」

「あの・・・・そう言うつもりでは・・・・」

二人の視線が告げた言葉の先から絡み合い、互いが互いの想いを確認するかの様に縋る瞳で見つめ合っていた。

「これから一生運命を共にしようと決めた者を信じられないのであれば、キッパリお別れした方が宜しいです。結婚と言うのは互いに信じ合う事から成り立つものです。政略的なものならいざ知らず、感情に走って短期間で婚姻を結んだものの多くが陥る早い時期に破たんを来たす原因第一位がそれです。激情のまま相手を思うあまり些細な事まで気に掛かり、そこで相手を信頼出来れば良いのですが、結局全てを暴こうとしてしまうのです。お二人を見ている限り、見事にその穴に落ちてしまいそうな雰囲気丸出しです。そうですか、信じられないのですか・・・・。これは早く分かって良うございました」

ファンネは既に二人の別れが決められた事の様に言い放つと腕を組み、とても満足しているかのように頷いて見せた。
別に本当に二人を別れさせたくて述べた言葉では決してなかったのだが、これを率直に捉えた二人が、どう出るのか謀ったのだ。

「ふぁっ、ファンネ!! それはあまりに身勝手な発言だ!!」

「身勝手? 何処がです?」

「私はアーリアを愛しているんだ! 別れるなんて絶対に嫌だ!!」

物言いが既に従者の言葉使いのそれではない。王子が冷静さを失い感情に流されているのは間違いなかった。

「それはそうでしょう。でも、信じて貰えないのが辛いのですよね。それを第三者である私に愚痴る位なのですから、ここは早々に考え直された方が良いと第三者的立場な者としてお話しさせて頂いているまでです」

セイラルは縋る様な瞳でアーリアを見つめ続ける。
アーリアも堪えていた涙がポトリと落ちると大きく首を横に振った。

「・・・・嫌・・・・、マジミール様と別れるのは・・・・絶対に嫌です・・・・」

「アーリア・・・・」

「マジミール様・・・・」

繋がれた右手を引き寄せるとセイラルはがっしりと誰にも間を阻まれないようにアーリアの身をその腕の中に抱え込んだ。
そして、真剣な眼差しでファンネを見据えた。

「今は、感情に流されているだけです。時が来れば分ります」

「違う! そんな事はない!!」

「ならば私に問わないで下さい。私はあくまで世間的一般論を述べさせて頂いているだけですから。まぁ、互いに思いを寄せ合っているのですから今はそう思えて当然でしょうし、今のお二人の感情は理解出来ますから、私もこれ以上は強く言う気もございません。ですが、このままでは婚姻を結んだとしても今の様な考えではいつか必ず終わりが来ると言う事だけは胸に刻んでおいてください。でも、想いを通わせ合って日も浅いと言うのに、今からこれではねぇ・・・・」

ここでファンネは大きなため息を漏らした。まるで呆れて物も言えないとでも言いた気に。

「・・・・だったら、信じます!」

「『だったら?』今度は投げやり気味な口先だけの言葉ですか。口先だけでなく納得した上で、本心で相手を信じきれなければ先程も申しましたが意味はないのです。お別れになった方がアーリア様の為ですのに・・・・」

ここでもファンネはまた一つため息を零した。

「いっ‥‥嫌です!」

アーリアの瞳から大粒の涙が零れ始めた。
見上げた王子は溢れ出すアーリア目元にそっと唇を寄せていた。

「・・・・疑われたままでも構いません・・・・。アーリアがこれからも傍に居てくれるのであれば、私はそれで構わない。世間一般論等私が覆してみせる!」

強固な意志を含んだ強い眼差し。
だが、所詮今の王子にとっては疑われると言っても期間は後1週間足らず。
それ位は如何と言う事も無いのだろう。
だが、王子が何と告げた所でアーリア様のこの王子に対する疑念はおそらく今だけで済まされるような簡単な問題では無い。
今後王子と婚姻し、妃として過ごしていく中でおそらく王子には今まで以上に疑わしく思える行動も出て来る筈だ。王族や国の重要な役職に付く者には誰にも話せぬ秘密は必ず存在するものだ。公私ともに・・・・。
それをその都度いちいち疑われ、最初は小さなものでやり過ごせてもその内諍い事が積み重なれば王子の事だ、きっとアーリア様が不安がられる状況を目にすれば冷静さを保てない状況に陥る。そして冷静さを欠けば政務にも支障を来す結果になる事も否めない。
今ですらこの状況だ。先は自ずと見えて来る。
王子がこれ程までに思いを馳せ、求めて来た方ならばと出来る事ならばこのまま暖かな気持ちで認めてあげたい。だが、最終的に王子を信頼できないのであれば無理なのだ。
何があっても常に広いお心を持ち王子を今後包み込んでくれなければ・・・・。
公務を完璧に熟せない妃でも良いのだ。王子を真の意味で信じ愛し敬い支えてくれる妃であれば・・・・。
王子を立派な王となるべき人材にお育てする事。
それが王子の乳母となった折に先王である退王様と王様、そして王妃様に堅くお約束した誓い。その事はこのまま行けば達せられる。
後は傍に寄り添う者の姿勢のみなのだ。

アーリア様は、頑なな所もあるが本当に純粋に王子を愛して下さっている事が傍に居るだけで伝わってくる。
だからきっと誠意をもって伝えれば分かって頂ける。そう思いたかった。
荒治療と称して賭けに出てみたが、この内なる想いが二人に伝わるようにと切に願った。

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