記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《11.切 願》

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セイラルはグッと奥歯を噛みしめると視線を再びアーリアに落とした。
一つの覚悟を決め、アーリアに向き合った。

「アーリア・・・・、落ち着いて話を聞いてほしい」

「マジミール様?」

縋りつくような眼差しで見つめられれば、告げようとしている言葉を飲み込みたくなる。
その不安を読み取ったかのようにファンネは言葉を促した。

「信じているのならば告げるべきです。後になって後悔する事になっても遅いのです」

瞳を閉じ、大きく息を吐き出すと、言葉を口にした。

「・・・・私はやはり・・・・どの様な事があろうとも、今後もアーリアに私を信じて欲しいと願っています・・・・。ですから・・・・何も聞かずにこの提案を受け入れて欲しい」

「提案!?」

「今ここで信じる信じないと口論し、結果信じると告げて貰えた所でその真意は本当の意味では分からない・・・・。ならばその真意を形に出来るものとして表して欲しいのです」

「その様なものが形に出来るのでしたら・・・・」

アーリアは不安そうな眼差しをしていたが、それが拒絶されるものでは無いと分り、何処か安心したのか少しだけ表情が緩み、そう答えてくれた。

「有難うございます。では、お願い致します。セイラル王子の国葬においては喪服では無く婚礼衣装をお召しになってお出で下さい」

そう告げ深々と頭を下げた。

「えっ!?」

アーリアは何を言われているのか一瞬では理解できていない様で、瞳を何度もパチクリさせながら首を傾げている。

「この事はセイラル王子の遺言書に書かれたご希望でもあるのです。ですが、それはあまりにも不謹慎だと言う事もあり今まで伏せられておりました。私も状況的には無理に婚礼衣装を着る必要は無いと思っておりましたから・・・・」

「当然です。・・・・葬儀に婚礼衣装だなんて・・・・とても無理な事だわ・・・・」

「ですが、・・・・敢て私はそれをお願いしたいのです」

「・・・・そんな・・・・」

何処か震えているような口調で言葉を紡ぐアーリアの痛々しい表情。
そっと目を伏せると、セイラルは視線の矛先をファンネに変えた。
これならば文句はあるまいと心の中で囁いた。

当初の予定では葬儀の朝全てを告白し、婚礼衣装に着替えて貰う事にしていた。
この事に対しファンネも納得してくれていたのだが、状況が変わった。
独断で決めた新たな提案だったが状況的には何ら変わることは無い。直ぐには他の案等考えつかず口から出た半ば咄嗟的発言だったが、意を察してくれたのかファンネは小さく頷き納得してくれた。

「どうして、そのような理不尽な事を・・・・。とてもマジミール様のお言葉とは思えません」

「感想を問うているのではありません。傍から見て理不尽としか思えない事でも、私にはどうしても貴女にそうして頂きたい理由がある故提案しているのです。貴女はこの私を信じ、提案を受け入れて下さるか否か・・・・、それだけです」

「その様な事・・・・急に言われても・・・・」

「そうですね。では、考えて下さい。私の為に」

「理由は教えては頂けないのですね?」

「はい。告げて納得して貰った所で何の意味も有りませんから。理由の分らない事であっても、理不尽と思える事であっても本当の意味で私を信じて頂けるのであれば何の問題も無く受け入れられる筈ですから。この事をアーリア・・・・、貴女の私に対する信頼の表れと見なします。お願いですからアーリア・・・・私を信じて下さい」

言葉を言い終わるとセイラルは再び頭を深々と下げた。祈りを込めて。

「・・・・どうすれば・・・・良いの?・・・・」

戸惑いを隠せない潤んだ瞳で食い入るように見つめられれば、思わず真相を告げてしまいそうになる。
咄嗟にファンネに目を向けたが、首を縦に振ってはくれなかった。

(アーリア、済まない・・・・。だが、分かってくれ・・・・)

祈る様な気持ちで従者姿のセイラルはアーリアを見つめ続けた。

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