記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《13.巡 る》

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セイラルはマジミールに悪いと思いながらも自室で酒を煽らずにはいられなかった。
そうでもしないととてもやりきれなかったのだ。

「・・・・アーリア・・・・」

ファンネの言わんとしている事も理解出来た。
だから、それに乗ってアーリアにあのような言葉を告げてしまったのだが、今になって実はその事をとても後悔していた。

もし、アーリアが世間一般の常識に囚われ喪服を着ることを諦めきれなけれず選んでしまったら、きっとファンネは納得しない。
でも、ファンネが納得しないからと言ってアーリアを諦めきれるのか?と問われれば、それは絶対に無理だった。
今の自分にとって、アーリアの存在は、ハッキリ言って王太子の地位より重い。
アーリアを諦めきれなければ臣に下れと言われれば、無責任かもしれないがきっとその指示に従うだろう。
勿論その様な事を言う者は居ないとは思うが、自分にとってアーリアとはそれ程までに重い存在なのだ。
故に、アーリアに問うた答えの結果が如何あれ最早関係ないのだ。
思いは既に決まっているのだから・・・・。

もしもの時は当初の予定道理、全てを告げた後着替えさせ、式に臨めばいいだけの話だ。
そう思いつつも、ファンネを納得させる事で周囲のアーリアに対する状況もおそらく大きく変わる事を考えると、その拘りも捨てきれないのだ。
だからファンネを納得させる理由が欲しくてあの後少し出かけた。
聞きつけた話だけでファンネが納得してくれると良いのだが・・・・。

実際問題ファンネはこの婚姻について何の権限も決定権も持たない。
故にファンネが反対した所で婚姻を結ぼうと思えば直ぐにも成立する。
既に王よりの許可は下りているのだから。
だが、ファンネを味方につけておくことは後々の事を思えばかなり有利に働くのだ。
ファンネは自分の乳母と言うだけでなく、現宰相の妹だ。

最初にこの結婚話を持ち出した時、ファンネは自分の想いをずっと知っていた事も有りとても協力的だったが、兄である宰相が最初難色を示したのだ。
アーリアの実家であるマーチェリー伯爵家は今でこそ伯爵の地位に治まっているが元々は候爵の流れを汲む由緒正しき家柄だったそうだ。
だが遠い昔、娘が国に対し不義を働いた事から侯家から離反を余儀なくされ、跡継ぎの座を追われる事となったと言う記述が残されてあるのだと言うのだ。
幸いと言っていいのか、その後妻の実家である伯爵家が跡継ぎを亡くした事から入り婿となり後に伯爵の地位を継承する事を許されるようになったのだと言うのだが本当の所どうかは自分にも聞いて直ぐは判断できなかった。
だが詳しく話を聞いてみると、その国に対する不義と言うのは当時の王族との婚約者選定中に候補に挙がりながらも王家に対する裏切り行為を働いたと言うものだと聞き驚いた。
もしかするとそれは過去における自分とリアの事が関係しているのかもしれないと漠然と思ったが、当時彼女がその様な立場に立たされていた事等聞いた事も無く、半信半疑ではあったが宰相に代々受け継がれていると言う記述書の中にはしっかりその娘の名が刻まれているのだと言う。
娘の名はリアーナ。その名は自分だけが知る、彼女の前世の名だった。
その後娘が死亡した事から、事実は公にされる事も無く闇に葬り去られたのだと言うが、もし、その娘リアーナが自分の知るリアであるのならば過去の自分と通じた事で、彼女の一族は公にはされていなくてもこうやって記述書に不名誉な名を残す結果となってしまったのだ。

この事実を知り得た時、父と宰相は自分の求婚について良い顔をしなかった。
それを間に入り説得してくれたのが母とファンネだった。
随分昔の話だ。おそらくこの事実は当主であるアーリアの父マーチェリー伯爵ですら知らない可能性もある。
アーリア自身でさえも、そこまでの記憶は無いかもしれない。
今更この様な事をアーリアに告げる必要も感じないが、何かあればきっと宰相はこの事実を持ち出し、意義を唱えて来る事も否めない。
今回の事はファンネが耳に入れない限り宰相の耳に入る事は無いとは思うが、ファンネがアーリアとの事を納得してくれなければ最終的にどのような行動に出るかも分らなかった。
宰相にそれはおそらく過去の自分だから関係ないと弁明した所で到底納得して貰えるような話では無い。
自国の王太子が実は何百年も昔に敵国の王子として生まれ、同じ者に恋をした等と言う話を信じるような官吏が居よう筈も無かった。
ファンネには今まで世話になって来た以外にも恩義がある。何としてもアーリアの事は認めて欲しかった。
そろそろ約束した時間だ。

セイラルは少しでも酒を抜こうと冷水を浴びる為、浴室へ消えて行った。

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