記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《14.懇 願》

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髪を乾かし、酔い覚ましの冷水を飲んでいたら外の扉が叩かれた。

『ファンネです。お約束していた件で参りました』

時間道理だ。
今日はファンネと葬儀・・・・もとい婚儀についての話を詰める事になっていた。
本当は最初にファンネが現れたあの時点で話す筈だったのだが、アーリアの突然の訪問でその場は回避する事になり時間を夜遅くに変更したのだ。

「入れ・・・・」

護衛の者もまだセイラル王子の死を知らずにいる。
棺は深夜に内情を知る護衛騎士に交代して貰い、誰にも気づかれぬ様に運び出した。
その騎士と言うのは先日仲間となったばかりのファンネの息子のナタニードとその同僚で予てから仲間だった者の一人だ。
偽装の為に朝、夕1回ずつ侍医の訪問も行っており、故に通常の護衛の者はまだ王子が生きているものと思っている。

『失礼致します』

そう告げられ開け放たれた扉から入って来たファンネの顔はとても呆れ顔だった。
おそらく部屋の中に入って直ぐに目に入ったのは空になったワインボトル2本だろう。
それも無造作に机の上に放置されていた。

「やぁ、ファンネ。このような格好で済まない」

ローブの袖を通しながらセイラルは少しバツが悪そうだ。

「・・・・このような時に、自重なさいませ・・・・」

「面目ない。でも、もぅ吹っ切れたから・・・・。今酔いも醒ました。まぁ、座れ。紅茶でも入れよう」

「王子・・・・」

憐れみを覗かせるようなファンネの表情に思わず肩を竦めて苦笑いを零した。

「・・・・アーリアは? ・・・・どんな様子だ?」

「随分と悩んでおいでの様です」

「そうか・・・・」

セイラルはティーセットを机に置くと手慣れた手つきで紅茶をカップに注いで行った。

「王子は大丈夫なのですか?」

「これ位、何のことは無い。それに何があろうと私はアーリアを離す気は無いしな」

「ですがッ!」

「何も言うな。分かっている・・・・」

ファンネが一番気にかけてくれている事が何であるか位・・・・。


式当日の計画はアーリアが婚礼衣装で赴いてくれる事が前提で取り決められた。

「良いのですか? 本当に他の案を立てておかなくても」

「問題無い。その時は私が王子であることをアーリアに告げ、婚礼衣装に着替えさせる。控えの間に用意しておいてくれ」

「しかし、それでは根本的な解決にはなりません。アーリア様には何が有ろうとも、どの様な事が起きようとも王子を信じると言う強い心を持ち続けて頂かなくては・・・・。私は第二の悲劇等見たくは無いのです・・・・」

伏し目がちに告げるファンネの姿に、先程聞いた話をする事にした。

「お前たちが退室した後、思う所があり直後退王邸に赴いた」

「退王様にお会いになられたのですか? では、全てをお話しに?」

「ああ。そこで退王様より覚えている限りの曾祖母君の面影を辿って頂き、話を聞かせて貰った。かなり優しい御仁のようだった。儚げで人を疑う事の知らないお人だったそうだ。だが、アーリアは違う! もっと強いと思う・・・・。だから大丈夫だ!」

半ば自分に言い聞かせるように言葉を吐き出した。
だが、やはり何の根拠も無いそれだけではファンネを納得させるには無理があった。

「過信はなりませんよ、王子。ああ見えてアーリア様は王子の事となると途端に弱くなられます。あの後も食事すら真面に喉を通らず、出かける際にそっと寝室を覗いてみましたがずっと涙しておられました。きっと今も寝室で思い悩み泣きぬれていらっしゃるに違いありません・・・・」

「そうか・・・・」

話を聞き、思わず傍にある隣の主寝室へ続く扉に目線を落した。
傍に行って抱きしめてあげられたらどんなに良いか・・・・。
それが出来ない今の自分がとてももどかしかった。

「恋は人を強くもし、弱くもさせます。アーリア様ならばきっと何があっても大丈夫と言うお考えは危険です」

「そうだな。・・・・出来ればお前にも協力して欲しい・・・・。アーリアを助けてやってはくれないか」

そして自分を救ってくれ・・・・。
心の中で叫び続けた。

「出来る限りは・・・・」

「頼む・・・・」

深々と頭を下げれば、ファンネも最後には苦笑いを浮かべつつも頷いてくれた。

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