記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《15.安 堵》

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翌日は午後から祖父に呼ばれていた。
昨夜伺った折、何やらサニエルも交えて話があるのだと言う。
聞けば、祖父はサニエルには全てとは言わないまでも状況を明かし協力して貰っても良いのではないかと提案して来た。
その場で返答を求められたが、自分も昨夜は冷静な判断を行える状況では無かった事から直ぐには判断は出来なかった。

一夜明け、それでも状況は変わる事無く、こうもアーリア一人に振り回され翻弄され、冷静さを欠く今の状況を目の前にし、ファンネが心配するのも尤もだと自分の不甲斐なさにほとほと嫌気がさした。
何時もならばここで、マジミールにも話を聞き協力を求める所だ。
だが、今日は母が大掛かりな差し入れ計画を願い出てくれた為遠慮する事にしていた。

当初から母と出来るだけマジミールに負担をかけないようにしようと色々話はしていたが安置所内の詳しい様子も分らなかった為、計画を立てることもままならなかった。
母から待合室のようなものがあった筈だと聞いていた為、昨日安置所へ赴いた際詳しく下見してその状況を母に伝えた。
暗所の中には続間になっている小さなお控所が確かに造られてあった。
本来はお別れに来た身内の待合室の様なものらしく湯を沸かす程度の事も出来る仕様になっており茶器も揃えられてあった。
これならば茶葉を持ち込めば茶ぐらい沸かせるし、より快適に過ごせるだろう。
母に何とか身の回りの物を幾つか持ち込めないか頼み込んでみた所、臨戦態勢で挑んでくれる事になったのだ。
とりあえず時間の許す限り昼間は軽食類を持ち込みマジミールに少しでも快適に過ごして貰えるようにしてくれると言う。
『葬儀まで出来る限り自由な時間は息子と二人きりで過ごさせて欲しい』と頼めば誰も邪魔立てなどしないだろうと言うのが母の考えだった。
その通り直ぐにこの願いは王の協力で『王妃が安置所に赴いている際は何人で有れ入所を認めぬ様に』と護衛兵にも届けられる事となった。
昼間は母がここに詰めていてくれる為心配はない。
それ故マジミールは母が居る時は棺から出て安心して自由に振る舞える事となる。
故に従者ごときが邪魔立てする事は許されない為、母のいる時間はマジミールとの接触も難しかった。
早朝連絡を取ろうと思っていたが昨夜中々寝付けなかったせいか、つい寝過ごしてしまった。
意見を求めるとすれば後は今夜。となれば、全ての判断は自ら考え結論を出すしかなかった。

情けない・・・・。アーリアの事になると、自分はこんなにも本来弱い人間だったのだと認めざるを得なくなる・・・・。

大きな溜息をつき、さてそろそろ退王邸に出かけようかとした時だった。
ファンネが予告も無しに現れたのだ。

「どうした? アーリアに何かあったのか!?」

思わず前のめりになり言葉を吐き出せばファンネにクスリッと笑われた。

「ずっとアーリア様の事が頭から離れていないようですね」

「当然だ!」

恥も外聞もかなぐり捨ててとにかくアーリアの事が心配でならないと素直に認めた。

「おそらく気を揉んでいらっしゃると思い、報告に参りました。大丈夫ですよ。アーリア様は先程お目覚めになられて、すっかり食欲も出て来て、もぅ大丈夫です」

満面の笑みを称えながらファンネはとても嬉しそうだった。

「そうか。それは良かった・・・・」

元気になったと聞いて安心した。だが、と言う事は何処か吹っ切れたと言う事か?
神妙な面持ちでファンネを見据えれば、いきなり吹き出し更に笑われた。

「もぅ、何て顔をなさっておられるのですか? 大丈夫ですよ。今朝は悲惨な状況でしたが、その中で迷いが吹っ切れたご様子で、当日は婚礼衣装をお召しになると決断されてございますよ」

「そうか!!」

その後、詳しく話を聞けば本当は朝にでも知らせに赴きたいと思っていたそうだ。
だが、もしもと言う事がある。
眠りから目覚め冷静さを取り戻した途端『やはり・・・・』と、考えを覆す事も有り得ると懸念してアーリアが目覚めるのを待っていたのだと言う。
今はとってもスッキリした表情で、落ち着いているのだと言う。
まだ何があるのか先の事には全く気付いてはいない様子だが、もしかすると本当にその場で婚姻を結べるような奇跡が起きるかもしれないからと、腫れた目元以外にもパックを施して欲しいと自ら率先して美容に気を配っている程だと言う。
良かった・・・・。これで本当の意味で安心して次に進めると、セイラルはとても満足そうに自室を後にし退王邸へと向かった。

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~ Comment ~

NoTitle 

油断してはいかんぞ殿下。

たぶんアーリア姫は自害するつもりだ。

想像力が豊かすぎる娘だからなあ……。

それとも想像力が豊かすぎるのはわたしのほうか。(^^;)

ポール・ブリッツ様 

←有り難うございました。助かりましたm(__)m

おお!その設定も凄いですね。実はチラリと考えなくは無かったんですけどね^^;
あわやの所を助けに入ってとか。でも、それをすると当初の考えている告知場面が変わってしまうし、もっと長くなりそうなので却下しました。
それにアーリアには精神的にももう少し成長してほしかったし。

いつもコメント有り難うございます。
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