記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《16.難 い》

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退王邸に赴くと、時間が待ちきれなかったとばかりに執事と共にサニエルも一緒に出迎えてくれた。

「お待ちしておりましたマジミール殿」

サニエルはすっかり自分に信頼を寄せてくれたのか、笑顔で迎えてくれた。

「サニエル王子、出迎え恐れ入ります」

「いえ。この度は兄の件・・・・、心中如何ばかりかと・・・・お察し申し上げます」

出向いた早々深々と頭を下げられ、少々バツが悪かった・・・・。
きっとサニエルは主と従者と言う枠を超えた我らの関係を察しそう告げてくれたのだろうが、そこまで気遣われると全てを隠している今の状況が何処か後ろめたくてならない。
確かにサニエルが祖父の言う様な考えを持っているのならば全てを隠したままと言うのも少々心苦しい。

「いえ。こちらこそご挨拶が遅れまして・・・・」

とは言ったものの、とても自分の事で『お悔やみ申し上げます』とは言う気になれなかった・・・・。
サニエルもそのような言葉はきっと望んではいないだろう。
この状況は自分よりも私の方が身内に近いと認めている態度だ。
確かに今までの関係を思えばサニエルと自分よりもマジミールの方が近しい関係だった。

「退王様は?」

「はい、既に会議室でお待ちです」

執事に告げられ二人して会議室へと向かった。


会議室では祖父はいつも椅子に座りゆったりと構えて待っている事が多いのだが今回は、窓辺に佇み何処か遠くを眺めていた。
何処かに想いを馳せている様にも受け取れる。

「退王様? 如何なされたのですか?」

「祖父君? 何か心 配事でも?」

振り向き、やんわりと微笑むと二人に目を向けた。

「ああ、来たか・・・・。いや、何のことは無い。今あの枝木からススゲ鳥が飛び立ってな。サニエルが生まれたと言う知らせを受けた時もそうだった事を思い出したのだ」

退王は何処か感慨深げだった。

「ススゲ鳥ですか珍しいですね」

ススゲ鳥とは薄茶に白い斑点模様のある雛の産毛のようなふわふわな毛を持つ鳥でこの地でも珍しい吉兆を齎す鳥として珍重されている鳥だ。
ススゲ鳥に勇気を貰っい何か決意した様だった。
退王は視線を落とすとサニエルにある提案を口にした。
その事をサニエルが望んでいないであろう事は確実で、それは昨夜自分と少し話した折にも口にしていた事だった。
やむを得ないと思いつつも自分もその言葉に同意した。
もしかして告げる事に気が重くて窓の外でも眺めていたのだろうか?
心中は計り知れない。

「なぁ、サニエル。この祖父の願いを聞いてはくれまいか」

重々しく告げられた言葉に、サニエルは何の疑いも持たない眼差しで視線を落とした。

「なんでしょうか。私に出来る事であれば宜しいのですが」

「これはお前にしか出来ん事じゃ」

「私にしか?」

サニエルは少し眉を顰め、怪訝そうに祖父を見つめた。

「一時で良い。お主の母の許へ・・・・、ナジリルの許へ戻ってはくれまいか」

「はぁっ!?」

祖父からのまさかの提案に、サニエルは異議を唱えるよりも先に呆気に取られた。
あれ程自分の意志を尊重し戻らずとも良いと言ってくれていたのに一体何があったのか?

「お前に負担を掛けさせぬと誓ったのにな。実は少々厄介事が起きてな。おそらく原因はナジリルだ。葬儀までで良い。母の機嫌をとってはくれまいか・・・・」

「その厄介事と言うのを教えて頂けますか?」

サニエルの問いに、退王は頭を抱え大きく項垂れた。

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