記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《17.謎 掛》

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退王はセイラルに視線を預けると、大きくため息を零した。

「済まんがお前から話して貰えるか?・・・・」

その物言いはとても気怠そうで、もぅ呆れ返っている様だった。

実はその事が公になったのは昨夜で、出向いたついでにセイラルが退王の耳に入れたものだった。
今朝も側妃に呼ばれた者を城に入れる入れないの大騒ぎがあったとか無かったとか。
城では既に大きな噂にもなっていた。

「はい。・・・・実は今城の敷地内にもう一棟屋敷を造る話が進められているとか」

「何方のお屋敷ですか?」

「お前のじゃ、サニエル・・・・」

「‥‥‥」

退王は再びため息を漏らす。
サニエルは突然の降って湧いた話に驚きの余り言葉が出て来ないようだった。

「サニエル様を正式に王太子に認めて欲しいと側妃様からの要請があったと言う話はお聞き及びでしょうか?」

「はい。祖父君より昨夜・・・・。ですが、私は既に予てよりここへ残りたいとはっきり申しました」

「はい。その件は側妃様にも伝えられております。ですがどうやらそけが痣となってしまわれた感がございまして・・・・・。側妃様はかなりご立腹のご様子だったとか。それに加えて葬儀後直ぐにでもと思っておられました王太子擁立の義が思いの外先延ばしにされると言う事実を知らされ、更に強硬な手段に出られるきっかけになられたのではないかと・・・・」

「はぁ・・・・・」

サニエルはまだはっきりと事を理解しえない状態なのか、まだ他人事のように・・・・、それでも真剣になって話は聞いてくれていた。

「王位継承規約には『王太子の死去により新たに後継者を擁立せねばならぬ場合、その喪より60日経過後に正式に任命されるものとする』と言うものがございます」

「成る程・・・・」

「おそらく側妃様には、そこまで沈黙を貫きじっと待ち続ける等と言う状況を受け入れる事が困難だったのでしょう。ならば何が出来るのかとご自分なりに考えられたのかもしれません。しかしよもや屋敷を建設する等と言い出そうとは想定外でございました」

「建てるも何も、代々王太子には東館を任されるしきたりが・・・・」

「ナジリルにはそのようなものは関係ないらしい」

最早呆れ返って何処か遠い目で退王が口を挟んだ。

「この件につきましては既に王も認めぬと言う決断を下されており、今朝側妃様が呼んだ設計者は城にも入れず門前払い。側妃様は大層なご立腹で、今城内には不穏な空気が立ち込めております」

「ここまで大事になっているとは思わなかったが、既に設計者まで出向いておるとはなぁ・・・・」

「行動力のあるお方ですから」

「大事になる前にと思っておったが既にそこまでとは・・・・」

退王は感慨深げだった。

「その件で、昨夜少し退王様ともご相談し、一つの結論に至ったのです」

「実はな・・・・。その件で、お前に間に入って欲しいのだ」

聞いた瞬間、サニエルは目を閉じ暫く何か考え込んでいるかのような仕草を見せていた。だがその瞳がゆるりと開けられた瞬間、何かを悟ったかのようにとても冷静な判断を見せた。

「・・・・仰りたいことは理解出来ました。私に母に諫めて欲しいと言う事ですね?」

「頼めぬか?」

「いえ・・・・、そう言う事でしたらそれは構いませんが・・・・。ですが、私は王太子になるつもりは無いのですよ。分かっていらっしゃいますか?」

「それは大丈夫じゃ。全く問題ない」

「全く・・・・問題は無い・・・・のですか?」

「ああ・・・・」

サニエルの反応を見て退王はセイラルを見据えた。
『もぅ告げても良いであろう?』と言いた気な様子だ。
だが、セイラルはまだ迷っていた・・・・。
今ここで全てを明かしても本当に良い事なのだろうか?
サニエルは側妃と直接掛け合う、いわば状況によっては一番危険な相手となり得る存在なのだ。
もし、サニエルが全てを知ったとして、僅かでもその事を匂わせる発言をしてしまえば今まで立てて来た計画が無駄となってしまう。
だが、このままただ問題無いと言った所でサニエルも不安でたまらない事だろう。
心中を察し、セイラルは一つ決心をした。

「実は・・・・セイラル王子は二人いるのです」

何かを含んだ様なその言葉。
サニエルは驚愕の眼差しで従者姿のセイラルを凝視した。

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