記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《19.試 み》

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側妃ナジリルは自分の計画する事を次々と退けられて荒れに荒れていた。
部屋の中は既に滅茶苦茶だ。
あまりの荒れように手に追なくなり、若い侍女は恐怖の余りとても近づく事すら出来なくなり部屋から逃げ出してしまった。
先輩侍女に任せておけば大丈夫といつものように最初は様子を伺っていたのだが、一向に落ち着く気配も無く更に荒れ狂う側妃ナジリル様の様子に更なる危機感を覚えた。
静止を促そうとする先輩侍女の説得も全く聞かずに中から聞こえて来るのは依然物の割れるような音と飛び交う側妃様の怒号。
収まる所か更に増していく様子に流石にこのままでは大変な事になるのではないかと言う不安が沸き起こり、何とかしなければと藁をもすがる思いでお嬢様等に協力を仰ごうと思い部屋の前までやって来た。

側妃ナジリル様には国王様との間にご長男サニエル様の他に15歳になる双子のお嬢様がいらっしゃる。
自分達よりもきっとお嬢様等の言う事の方が聞いて下さるに違いないと思っての行動だったのだが、協力を仰ぐ事は決して簡単では無かった。

「お嬢様方はただ今教養学のお勉強のお時間です。後30分後にいらして下さい」

お嬢様等の侍女にそう言われたのだが、とても待てる状況では無かった。

「そこを何とか! 今こうしている間にも如何なっている事か・・・・。早くお止めしないと!!」

「ごめんなさい。でも、私もお嬢様方に対する責任があるのよ。後でナジリル様に咎められたくないのよ」

勿論、その感情も十分理解出来る。
だが、それでもここは簡単に引き下がれる状況では無いのだ!
何とか食い下がって、暫くお嬢様付の侍女と口論をしていた。すると・・・・。

『五月蠅いわねぇ! 気が散って勉強に身が入らないじゃないの! さっさとその者を追い出しなさいよ!!』

声と共にペンが飛んできた。

『ナジルやめなさいよ! もし当たって怪我でもさせたらどうするの!?』

『自業自得よ! 勉強の邪魔をするあの者が悪いのよ! 私が立派なレディになる事を邪魔立てする者は絶対に許さないんだから!!』

『では、ペンを投げるのは教養ある者がするものなのかしら?』

『お黙りなさい! ジリルでも私の邪魔をするなら追い出すわよ!!』

『分かったわよ・・・・』

長女ナジル様は流石に耳も貸してくれそうにない。
元々ナジル様を当てにする気は無かったのだが、ジリル様ならば分かって頂き協力して頂けるのではないかと期待していただけにここで話を聞いて頂けないのはかなり辛い事だった。

結局半ばあきらめ、項垂れ来た廊下を再び歩いていると後ろから誰かが駆けて来るような足音が聞こえた。
フッと足を止め慌てて振り向いた先にはまさかの人の姿があった。

「ジリル様・・・・どうして・・・・」

「ナジルに追い出されたのよ。だから貴女のせいでは無いから心配しなくても良いわ」

にっこり微笑み助け船をだしてくれた。
きっと、ジリル様はわざとナジル様を怒らせ追い出されて来たのだ。

「申し訳ございません・・・・」

「言ったでしょ。貴女のせいでは無いわ。それで、お母様は? そんなに荒れていらっしゃるの?」

「聞こえておられたのですか?」

「所々だけれどね。そんなに酷いの?」

「・・・・はい・・・・。もぅ部屋の調度品は恐らく全て使い物にならない程に・・・・」

「それは酷いわねぇ・・・・。原因は何? もしかしてお兄様絡みなの? って言うかそれ以外でお母様がそれ程荒れるなんて有り得ないわね」

「・・・・申し訳ございません・・・・」

「何を貴女が謝っているの? それはこちらのセリフでしょ。母が何時もご迷惑をかけて申し訳ないと思っているはこちらなのに・・・・」

ジリル様はとても人当たりの良い優しいお方だ。
茶会などでご一緒した時にナジリル様に叱られた時など、いつも助け船を出してくれるのはジリル様だ。
自分から助けを求めるのは流石に初めてだが、辞めずに居られるのは優しく時には厳しい先輩とこのジリル様のお蔭に他ならない。 
そのような話をしていると部屋も左程離れていないので直ぐに部屋の二つ隣りにある面会室の前に差し掛かった。
するとかすかにだがナジリル様の怒鳴り声と先輩侍女の諫める声聞こえて来た。
ジリル様もまさかここまで声が聞こえる程の騒ぎになっているとは思っても居なかった様で、一様ある種の覚悟をされてこの場に来られたつもりだったのだろうが部屋の前まで辿り着くとあからさまに扉越しに絶えず聞こえて来る食器や物が割れる音に二人して怯え震えあがってしまった。

「・・・・やはり、私には無理かもしれないわ・・・・。と、言うよりもあの荒れる母を止める事の出来る者なんて早々には居ないわ」

結局二人して扉の前に立ち尽くす事しか出来ずに、呆然と佇んでしてしまった・・・・。

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