記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《21.救 済》

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部屋の中には夥しい数のガラスや花瓶の欠片や調度類が床に倒れ散乱している。
足の踏み場も殆ど無い有様だ。

「お母様・・・・、これは如何言う事ですか?」

「お前・・・・、如何してここへ・・・・」

「ああ、早く手当をしなくては・・・・。お願い。侍医を読んで来て頂戴!」

直ぐに駆け寄り怪我をしている侍女に近付くとジリルはそっとハンカチを取り出し、その傷口に当てた。

「はっ、はい只今!」

「行く必要はありません! それ位の傷で大げさな!! ジリル、お前も何しに来たのですか!? 今はナジルとお勉強の時間の筈でしょ?」

「私の事よりも、今はこの者の手当てが先です! お母さま、もういい加減になさって下さい! このままではお母様のお世話をする侍女なんて居なくなってしまいますわ! もう少し侍女の事をお考えになってあげて下さい。このような怪我まで負わせて・・・・。私にはもぅ黙って見ている事なんて出来ません!」

「お前・・・・、この母に向かって何という口の利き方なの!!」

「母だから言っているのです! これ以上人を傷つけるような事を、私はお母様にして欲しくは無いのです!!」

ジリルはここまで母に逆らったのは初めてだった。
自分がここまで母に逆らえるとも今まで思っても居なかったが、怪我までさせたとあっては、話は別だった。
双子の姉のナジルはあてにならないし、王妃様も頼れず、兄も居ない。
ならば自分がしっかりしなければ!
もう、母を諫められるかもしれない者は他には居ないのだ。

何とか母に分かって欲しくて一生懸命言葉を選んで口にしたつもりだった。
だが、結局それは何の意味も成さず、その気遣いが返って仇となってしまった。

「お前ね・・・・娘に余計な事を吹き込んでくれたのは・・・・。よくも娘の前でこの私に恥をかかせてくれたわね!!」

更に側妃の手には新たな凶器となり得るスタンドミラーが握られていた。

「お母様、いけません!! これ以上人を傷つけないで!!」

危機を感じた若い侍女は急ぎ逃げ出そうと試みたが、震えあがり膝が立たなくなってしまったのか、その場で這うようにジリジリと後退し壁際まで移動するのがやっとだった。

「駄目です! お母さま!!」

ジリルは母に立ち向かい腕に掴みかかりもみ合いになる。

「はっ、離しなさい! お前を謀ったこの者を私が懲らしめてあげようとしているのにッ お離しなさい!!」

15歳のジリルと母との力の差は歴然で、結局体当たりも虚しくジリルは弾き飛ばされた。

「キャアッ!! イッ!!」

倒れた拍子に打ち付けた腰と肘は床に落ちた破片で小さな傷を作った。

「おっ、お嬢様!!」

慌てて若い侍女が駆け寄ろうとするが、足が縺れてついて行かないのか、その場でヘナヘナと腰が抜けたように崩れて行った。
視界の端は今にも振り下ろされようとするスタンドミラーを捕らえて離さない。
『もうだめだ!』とばかりに、侍女が頭を両手で抱え込み両目を瞑るのを見て、自分ももぅ見ていられない状況に陥り、両手で視界を遮ろうとした次の瞬間、勢いよく扉が開かれ呆気に取られた。
一瞬何が起きたのか理解出来ずに面食らってしまったが、その脇を通り抜けた足早な男の影に一瞬我が目を疑った。
その者は、やがて目の前に立ちはだかると視界を遮った。

「大丈夫か?」

膝を擦っている、ジリルの前に差し出される優しい手。
聞き覚えのある声と姿に安堵するとジリルはその者に向けて満面の笑みを零した。

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