記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《22.裁 可》

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パクパクと口は開けど、ジリルは驚きのあまり中々声に出来ない。

「やはり、お前だけは一緒に連れて出るべきだったな。あの母上と反りが合う訳無いものな・・・・」

「・・・・おっ、お兄様・・・・」

「・・・・サニエル!!」

「・・・・サニエル・・・・さま・・・・」

サニエルは母の傍まで歩み寄ると、その手に持っていたスタンドミラーを奪い取った。

「これは、頂けませんね。何か理由があり手をあげたにしても過剰防衛になりますよ。憲兵に差し出されては言い逃れも出来ない」

「なっ、ななななサニエル! 貴方はこの母を脅すのですか!?」

「滅相もございません。事実を告げているまでです」

「それを脅していると言うのです!」

「と、言う事はご自分が悪い事をなさっていると言う自覚は一応お有りなのですね。良かった。幾ら気位の高い傲慢な母を持つ身ではあっても、流石に己の母を差し出すのは忍びないですからね。まぁ己で反省する術も持たぬ者を見逃す気等私も更々有りませんから良かったです」

「・・・・何を言っているの? まさか・・・・私にこの者に謝れとでも?」

「当然です! まぁ、元より母上が既にジリルに手出ししていたら私も介入するのを止め、即刻憲兵に引き渡していた所でしょうが、今の所ジリルに怪我も無いようですし今少しの間この胸に留めておきましょう。ただ、今後の行動如何によっては差し出す覚悟がありますからそのつもりで発言なさってください」

流石に今の自分の言葉に面食らったのか、母は一瞬黙り込んだ。
何を考えているのか?

「・・・・では・・・・、どうしろと?」

「ご自分でお考え下さい。この状況で今一番に自分がしなければならないのは一体何かと言う事を・・・・」

母は部屋をぐるりと見渡すと口を開いた。

「ほら、何をぐずぐずしているの!? 早くここを片付けなさい!」

「・・・・何を言っているのですか!? それは後です。怪我人が居るのですよ。治療が先です。それに、片づけるのは母上です」

「なっ!!!!」

母の顔はみるみる内に真っ赤になり、まるで茹蛸の様だ。

「これだけの物を壊したのです。先ずは自分で片づけてみて、始末する者の大変さと物に対する価値観を改められるべきです」

「この私に使用人の真似事をしろと言うのですか? 王の寵愛を受けているこの私に!!」

「それが何ですか。王の寵愛を受けている事を傘に着て物を申すのならば、もっと父上から頂いた物を大切になさるべきではありませんか?」

「何を言って・・・・」

「父上から頂いた宝石箱をかなり大切にしていたように見受けられましたが、所定の場所に見当たらないと言う事は何処かに埋もれていると言う事では無いのですか?」

ハッとしたように何時も置いてあるチェストの上に目線を落そうとするが、そのチェストすら所定の位置に見当たらない。
倒れ床の上に転がっていた。

「御存知でしたか? 父上が物に拘りを持っておられると言う事を」

「えっ!?」

「王家の人間は古い物を大切に使われるそうです。中には先祖から受け継がれている物も多いと言いますよ。特に調度品の類には。祖父君はそのような品は今でも使用人には触れさせず自ら磨かれるそうです」

母の顔からみるみる内に血の気が引いて行った。

「この壊れた物の中には父上が拘りを持って敢て送られている物も幾つかあるのではないですか? 寵愛を注いでいらっしゃる母上に送るのですから、半端な物は届けさせないでしょうし、茶器のように割って買い替えで済まさせる程度の物はまぁ、何とかなるにしても割れ物では無い調度類がこれ程酷い有様となり使えなくなるやもしれぬとはよもや父上も想定しておられなかったでしょうから」

「・・・・どうしましょう‥‥それに・・・・。無いわ・・・・王様から頂いた宝石箱が!!・・・・」

慌てて辺りを探し始める母の姿を見てサニエルも視線を落し辺りを見渡した。
サニエルは暖炉の小脇に蓋の壊れた煌びやかな箱を目にし、それにそっと手を伸ばした。

「・・・・この蓋、外れる物でしたっけ?」

「キャぁ――――!!!」

「これ、結構年季が入っていますね。年代物ですよ。壊れた事がバレるのは不味いのでは無いですか?」

「しっ、至急同じものを用意させ・・・・」

「それは無理です。この手の細工を施せる職人は恐らく現存しないでしょうねぇ・・・・」

「では、どうすれば・・・・」

「ご自分でお考えください」

修復技術がある事すら恐らく母は知らないのだろう。調べようと思えば容易に出来る事だが敢てそれは教えなかった。
これで母が父から咎められようと、飽きられようと知った事では無い。
母にこれ以上面倒を起こされるのはハッキリ言って避けたかった。
それに多少叱られた方が母の為には成る筈だ。

「それと、侍女にも一言謝るべきでは無いですか? 使用人とは言えこれだけの怪我をさせたのです。既に御存じとは思いますが王族の使用人はその主人に権限は委ねられますが母上は王族では無く側妃と言う立場だ。よって正式な雇い主は国王である父上です。国王様の御慈悲により与えられている使用人を母上は傷つけたのですから、この件も父上に知れれば大事になるでしょうね。母上の事だ。きっとご自分の侍女の素性すら御存じ無いのでしょうね」

「えっ!?」

それだけ告げるとサニエルは妹ジリルと侍女らと共に自室へ向かった。

側妃が自分の侍女として現在城に上がっている二名の者の素性を知る事になるには更に数時間を要する。
怪我をした侍女の祖父で国の重鎮の一人である公爵が侍医より孫娘の怪我の報告を受け部屋に乗り込んで来たのだ。
その素性を知る事になり側妃はその場で卒倒した。

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