記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《24.計 略》

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あの後もう一人の若い侍女とジリルと共に再び母の部屋へ入った。
母上は結局殆ど命令するだけだったが、自分達で家具の位地も戻して母の部屋を片付けた。
調度類は多少の損傷はあるものの大きく破損して使えない物は無かった。
茶器を含む割れ物や小物類は殆ど使えず暫く不自由するだろうが、それは仕方のない事だ。

とりあえず部屋は何とか片付き、ジリルを部屋に帰すと自室から茶器を持ちより母と二人だけで話をする事になった。
今回の一件は全て母の傲慢さが招いた結果だった。

「今回のセイラル王子、兄の死については全て他言無用と言う事になっている筈です。それに関連する行動を起こす事事態躊躇せざるを得ない状況だと言う事を、母上は分かっていらっしゃいますか?」

「知らないわよ、そんな事。黙っていろとは言われたけれど、何もするなとは一言も言われなかったわ」

「だからと言って先程の様なやり方では上手い行くものも纏まりませんよ」

「この私に我慢しろとでも言うの!? やっとあの忌々しいセイラルを追いやれたと言うのに、ただじっと手を拱いているだけなんて・・・・。時間の無駄に他ならないわ!」

「言葉を御謹み下さい。まかりなりにも一国の王太子に向かって亡くなったとはいえ忌々しい等と言う言葉を使われるものではありません。誰が聞き耳を立てているか分りませんよ」

こっそりと小声で呟けば、その言葉にハタと気付たのか、慌てて母は辺りを見回した。
勿論周囲に誰も居よう筈が無いのだが、警戒心を植え付ける事で自分たちが周囲に知られてはならない特別な話をしているのだと言う事を強調し印象付けたかったのだ。

「・・・・・サニエル・・・・お前、一体如何したと言うの? あれ程貴方もセイラルを忌み嫌っていたでは無いの。それに先程の私を蔑にするような頑なな態度。やはり退王様の許へ行かせてしまったのが間違いだったのね。私には事後報告で王様が勝手に退王様に貴方をお預けしたものだから、すっかり良いように言い含められてしまって・・・・。ああ、何て嘆かわしいのでしょう・・・・」

母はハンカチを取り出し目頭を押さえた。
本当は涙など出てはいない。何時もの母の手だ。

「・・・・母上・・・・」

だが自分もそれに差も絆されたように話に乗った振りをして、如何にも同情している様に取り繕った。

「もう何があっても絶対に退王様の許になど帰しませんからね。いえ、金輪際行かせてなるものですか! サニエルは私の物なのよ! 決して退王様の勝手に等させないわ!!」

ああ、またこの独占欲か・・・・。
心の中でウザイと思いながらもその言葉を何とか飲み込んだ。

「お言葉ですが、私は父上のモノでも母上の物でもありません。勿論退王様の物でも・・・・。今回の件で退王様の許へ隠れる事を決めたのは他の誰でもありません。この私自身です。私が自分の為に退王様の許へ行く事を決めたのです!」

「何ですって!? 気は確かなの!?」

「正気ですよ。現政権は、表向きは父上の指示の許で動いていると言う事になってはおりますが、裏で手を回しているのは退王様です。退王様を御せなければ今のこの国を動かす事等出来はしませんからね」

思わせぶりな言葉を投げかければ、それは母の興味をそそった。

「・・・・サニエル? 貴方何を言って・・・・」

「分りませんか? 母上の思惑を手に入れるのならば、父上よりも退王様に取り入らなくてどうするのですか!?」

「・・・・サニエル・・・・。では、貴方は全て私の事を思って退王様の許へも赴いてくれたと言う事なの?」

「勿論ですよ母上。私が大切な母上を裏切る訳が無いではありませんか!」

「それならば、何故早くに私に告げてくれなかったのです! 私は貴方があの娘の事で怒って飛び出してしまったから、てっきり私は見放されたものだと思ってやっきになって王太子の座を早く確固たるものにしたいと思っていたのに・・・・。貴方を取り戻すにはそれしか無いと思っていたのに・・・・」

「敵を騙すには先ず味方からですよ母上」

「ええ、そうね。そうだわね」

「ですから、もう暫く大人しくして頂けませんか? 母上に色々と動かれて退王様に不快でも買ってしまえば私の計画が全て不意になってしまうのですよ」

「まぁ、サニエルの計画?」

「はい」

「それはどう言うものなの!?」

更に意味深な気な発言は、母の興味を駆り立てた。

「今はお話し出来ませんが・・・・、そうですね。母上が葬儀まで大人しくする事が出来ましたら、その後で聞かせて差し上げますよ。大人しくして頂けますか!?」

「勿論よ!」

母はとても愉快気に高らかな笑っていた。

実は退王邸を出る前にマジミール殿に呼び止められた。
母の不快を解き、出来れば隙を作るほど上機嫌にさせてくれればもっと良いと・・・・。
実の母を嵌める様な結果にもなり得るから、気が進まななければ忘れてくれても良いとも言ってはくれたが、自分の心は既に決まっていた。
例え母を裏切る事になろうとも、既に自分は母に対し許す等と言う言葉を二度と口に出来ぬ程に失望しているのだと・・・・。
自分の人生を一度ならず二度までも狂わせようとした母を許せる道理が無い。
それは今日の出来事でも確固たるものに拍車をかける結果となった。

母の上機嫌な姿に、表向きは目を細めて対応し、いかにも楽し気に振る舞い続けた。
母が私欲の為に自分を利用しようとする以上、自分も引く気は一歩も無かった。

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