パウリンの娘

パウリンの娘《第10章1》

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フリードルはランドンと配下のサビエルとミゲルを伴いザンゾール公の領地バラサインへ向かった。
トランゼの街からバラサインまで50マイル弱。
通常馬で移動出来ると言われている1日の最大距離の倍になるが、皆騎士の称号を受けた者たちで馬も鍛えられている。
強行すれば半日でも十分移動できる距離だった。
早朝にトランゼを出ると正午過ぎにはザンゾール公の領地に入った。
領地に入って間もなくプリムナド牧場が見え始めた頃、空が黒い雲に覆われ薄暗くなって来た。
今にも雨が降り出しそうだ。

「ついてるな。小屋でも借りよう」

フリードルがそう言った。

牧場に着いた頃に丁度雨が降り始めた。

「御免下さい。旅の者ですが突然雨に降られて難儀しております。雨宿りに小屋の片隅をお貸し頂けないでしょうか!?」

ミゲルが交渉に赴くと主は留守らしく不機嫌そうに夫人が出て来た。
1人1£と言われ、後でお礼に少し包むつもりではいたが、まさか先に言われると思ってもおらず、後ろにいたフリードルは苦笑いすると5£紙幣を夫人の手に握らせた。
夫人は手のひらを返し、急に笑顔になるといそいそと家の者を呼び出し厩舎へ案内させた。
中では農夫数名が急に降られた雨に濡れた馬や牛の背を拭いたり、藁を入れ替えたりしていた。

「この人たち、雨が止むまで隅にでも置いてやって」

そう告げると家の者はそのまま去って行った。
これ幸いと皆農夫の中に詰所に金を取りに来た男が居ないか探し始める。

「あの男・・・・」

目敏く見つけたのはランドンだった。

「やはり似ています」

見れば見るほど記憶の中のニクソンと重なる。

「何かニクソンにしか分らない言葉や暗号のようなものはないか? 特にお姉さんと関連するような」

フリードルが尋ねる。

「どうでしょう!? 何かあったでしょうか・・・・」

ランドンは必死で6年前の記憶を辿る。
姉が話してくれたニクソンとの事で良く出て来たのは星に関する話が一番多かった。
2人共星がとても好きだった。
中でも姉はタウリンの丘から今の時期だけ見える星が大好きで・・・・確か・・・・サザンクロスだ!
季節になると二人で馬に乗り良く丘に出かけていた。
その事をフリードルに伝えると季節的にも見える時期だしそれは丁度良いと、その事を話題にしようと言い出した。

「星を見に来たのに残念だなぁ。今夜はこれでは見えないなぁ」

「そうですね。サザンクロスが良く見える丘があると聞いて来たのに」

「なんて名の丘だったか?」

「確かタウリンの丘って言ってませんでしたか!?」

そう言いながらニックと言われる男の様子をチラッと伺うとこちらを気に掛けるような素振りかあった。
反応したのは偶然か!?

「タウリンの丘ってここから近いのか?」

「さぁどうでしょうか。私は亡くなった姉から聞いただけですから」

“ガタン!! ガラガララ・・・・”

ニックが傍にあったバケツに躓いた。
それは明らかな反応だった。
こちらを向き、ランドンに目を止めると驚いたような表情を浮かべる。

「・・・・ゴード・・・・」

言葉を言いかけてハッとし止めると、何事も無かったかのようにまた作業を始めた。


「・・・・間違いありません。彼は姉の婚約者だったニクソンです」

ランドンは確信した。

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