記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《27.局 面》

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いや、別に良い。
母上が前世も自分の母であったと言う事には、何の問題も無い。
しかし、ずっと妹と思っていた者が前世において婚約者候補で、おまけに自分を命がけで守ろうとしてくれた者と言うなら話は別だ。

「・・・・ジリルを見る目が変わりそうだ・・・・」

「私もです・・・・」

「お前は良いさ。所詮妹だ」

「いえ・・・・、だから問題なのです・・・・」

「何を言っている?」

「・・・・忘れて下さい・・・・」

何やらマジミールは何処か感慨深げにため息を一つ漏らした。

「お前は気付いていたのか?」

「いえ。全く・・・・。ただ、ジリル様の事は初めてお目にかかった時から気にはなっていたのです。ですが、まさかレイチェルだったとは・・・・。だからずっと気に掛かっていたのかもしれませんね。無意識に」

「私は全く何も気づかなかった。まぁ、唯一兄妹の中では話が噛みあいそうな奴だとは思ってはいたが、それ位の印象でしか無かった」

「と言う事は、やはりレイチェルの存在と言うのは、かつて身を挺してまでして命をお守りしたと言うにも関わらずそれ位の位置でしかラルフグレード様の御心に触れることが叶わなかったと言う事なのでしょうね。不憫な奴です・・・・。ですが考えようによっては、だからこそ今度は腹違いとは言え兄妹と言う切っても切れない縁の許に生まれたのかもしれませんね。レイチェルは予てよりラルフグレード様の御心に少しでも良いから触れられる存在でありたいと願っておりましたから。あの頃のラルフグレード様にとってレイチェルの存在は私の妹と言う位置付け以外の何ものでも無かったですし、現在は片親とは言え実の妹と言う不毛な立場ではありますが今の状況はある意味望みが叶えられていると言えるのやもしれません。ご本人は何も気づいていらっしゃらないようですが・・・・」

「で、そう言うお前も双子の妹だったと言うのに私の事はあれほどしっかり覚えておきながら妹の事に関してはその程度でしか気付いてやれなかったと言うのは酷い兄だな。当時のお前の妹に対する想いはその程度だったと言う事か」

「そうですね。人の思いなど本当の意味で計る事等難しいのかもしれませんが、あの時、妹はこれで少しはラルフグレード様の御心に触れる存在として残れるかもしれないと満足しておりましたから、妹に対しては思いを残していると言う感覚はありませんでしたね。勿論妹の存在は私にとって大きな存在でしたが、当時の私にとっては親兄弟よりもラルフグレード様は何よりも尊いお方でしたから。まぁ、戦いの中で生死を共にし分かち合って来た間柄でしたし血縁だけでは計れない絆があったのだと振り返ってみれば思えます・・・・。それに、当時の私にはレイチェルとの約束を結局守り切れなかったと言う想いが強かったですから、思いを残すと言う意味では当時の私の中での妹とラルフグレード様に対する比重を比べれば断然ラルフグレード様の方が上であったのは確かです」

「で、今もこの私にこれ程までの忠誠を誓い、あわや命まで賭ける程の忠義を尽くしてくれているお前は、私にとってはとても有難くかけがえのない人物なのだが・・・・、ある意味私はそんなお前が不憫でならない。それでも今再び問われれば、またお前は私が一番大切だとでも言いそうだものな」

「事実現段階ではセイラル様が一番大切で尊い御方すよ」

微笑を浮かべながらしれっとマジミールがそう告げた。

「すまん・・・・。私にはお前が一番だとは言えない・・・・」

すると今度は突如ケラケラと笑い始めた。

「いいですよ。どうせ最初から分かっていますから。全ての事において完璧ともいえる生まれながらの王子としての気質の中に、時折垣間見られる貴方様のそう言う純粋で一途な面も私の憧れるべき所でも有りますから」

「褒められているのか貶されているのか分らんな・・・・」

「褒めているのですよ。私は不器用なので、一つの事にしか意識を傾けられないのです。今度生まれ変わったら少しは柔軟さを持つ人間になりたいとは思っていたのですが全然駄目でしたね・・・・」

「お前と私は似た者同士だ。何れお前にも私にとってのリアの様な存在が出来れば我らの関係も少しは違ってくるのかもしれないぞ」

「・・・・そうですかね。相手が相手だけに難しいかもしれませんが・・・・」

「何だ? もしかして既に気になる相手でも居るのか?」

「今のこの様な状況でそれはお話しすべき事柄ではありません。感化された私も私ですが先程より話が論点を反れ逸脱傾向にあります。今話すべき事はそう言う事では無い筈です」

何となくマジミールが気にかけているのはジリルなのではないかと、この時感じたのだがここで追及するのは得策では無いと思い留まり、そのまま聞き流した。

「ああ、そうだった。済まない・・・・。で、お前から見てジリルはどう見る? あの子がレイチェルだったとすれば、この話を持って行く事は可能だと思うか?」

「可能だと思います。ただ、過去の事を当人があまり覚えていらっしゃらない事が気に掛かります。そのような状況で本当に大丈夫なのか現時点では私には判断致しかねます。ジリル様はお優しい故、実の母親を嵌めると言うような事は、おできにはならないのではないかとも思えるのです・・・・」

「だろうな。ジリルはナジルやあの側妃とは違って優しいからな」

この城へ戻って来た折に部屋に届けられていた歓迎の花。
それは、母とジリルからだけだった。

「母を介して私もジリルと率直に向き合い話してみるか」

「宜しくお願い致します」

式まで既に日はあまり無い。急ぎその場を作る必要があった。

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