記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《28.誘 い》

 ←記憶の彼方とその果てに -第3章-《27.局 面》 →記憶の彼方とその果てに -第3章-《29.虚 言》
サニエルは従者セグウェイとセイラルの第三従者ブロンソを介して従者マジミールから受け取ったいつもの無記名で端的な文章を読むとそのままその場で焼き捨てた。
その手紙を受け二日後、急遽知り合いの家で行われる馬術競技の練習試合に参加出来る様に話をつけると、母と妹等にも見に来て欲しいと誘いをかけた。
実はこの事をジリルにだけは事前に話をしてあった。
競技観戦の話も全ては王妃様からのお誘いを受けてジリルと王妃様を会わせる為の計画だった。
試合観戦の誘いは、表向きはジリルも誘うが直前で断ると言う話が二人の間で既に交わされてあった。
その為、当日になりジリルが少し風邪気味だから用心して外出は控えさせて欲しいと告げればサニエルも直ぐに理解を示した。
母とナジルからは文句を言われたが、それもサニエルが自分の為に無理をして欲しくは無いと言い切ってくれた為、見事に何の問題も無く母とナジルの二人をジリルは見送る事が出来た。
騎馬で行く兄サニエルとその後を馬車で追う母と姉を見送りながら、ジリルはホッと胸を撫ぜ下ろした。

ジリルは当日兄に知らされた通りに指定された時間に図書室へ赴いた。
教養コーナーの辺りと言うのが指定された王妃様との待ち合わせ場所。
足を進めるジリルは何となく辺りを見回し今勉強している「貴婦人の教養と所作」と言う本を手に掛けようとした時、程なくして王妃と遭遇した。
表向きは偶然出会った風を装って。
互いに軽い挨拶を交わす。

「これから丁度お茶の時間なの。良かったらご一緒して頂けないかしら。最近一人でいるのは物寂しくて・・・・」

そう言えば、縁者の者を最近亡くされたのだと聞いた。
身に着けているドレスもグレーに近い落ち着いた色で何処か華やかさに欠けている。

「私のような者で宜しければ・・・・」

周囲には、こちらを気にかけている者は居なかったが、何処かで見られているとも限らない。ジリルは、遠慮がちに王妃の誘いをお受けした。

王妃の誘いを受けた時に付き添っていた侍女にはこの事はくれぐれも内密にと伝えてあった。
侍女もこの事を母である側妃に知られれば自分が叱咤される事は目に見えているので、きっと話はしないだろう。
だが、廊下ですれ違う者達はその様な事等知る由も無い。
誰かが母の耳に入れない事を祈るより他無かった。

部屋の扉が開かれる直前、立ち止まった王妃様が何やら含むような微笑を浮かべて自分を見つめた。
何かと思い、小首を傾け見つめ返しつつ扉の中に入ると見覚えのある従者の姿に驚いた。
その途端、以前一度だけ目にしたあの不思議な映像がまた頭の中を横切った。

「お待ち致しておりました」

深々と頭を下げる兄の従者の姿を改めて凝視した途端、その映像は何故かフッと頭の中でまた再び途切れ消え去った。

(今の映像は一体何だったのか?)

以前初めて兄を紹介された折、頭を突如霞めたあの映像。
きっと何か兄に関連しているのだろうかとずっと漠然と思っていたのだが、もしかして、それはこの従者が原因だったのだろうか?

「あの・・・・これは如何言う!?」

頭を霞めたあの映像と、今ここに兄の従者がいる意図が掴めず思わず尋ねた。

「ああ、御免なさいね。今セイラルが療養の身と言う話は聞いていると思うのだけれど、今回その代理としてマジミールには来て貰ったの」

「・・・・セイラルお兄様の代理!? あの・・・・お兄様のお加減は、まだそれ程お悪いのでしょうか?」

「いえ。もう大丈夫なのですが、挙式を目前に控えたお身体ゆえ大事を取られるようにと私がお願いしているのです」

「そうなのですか・・・・」 

良かった。
ずっとセイラルお兄様が臥せっていると聞き、心配していたけれど母の手前あからさまな事も出来ずにいたから病状の経過が聞けて本当に良かった。

お兄様が城へ戻って来て2年、王室主催の行事で何度かこの従者にも顔を合わせているけれど、こうやって近くで話をするのは初めてだった。

「まぁ、良いからおかけなさい。今日は貴女に折り入ってお話があってお誘いしたの」

「私にですか!?」

「ええ」

「実はその件に関してセイラル様より書状を預かっております」

差し出された手紙を受け取るべく両手を揃えて差し出し手紙に触れた途端、今まで見た事も無い映像が頭の中を駆け巡った。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村


※ 頭部分、サニエル視点で詳しく加筆変更しました。

総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《27.局 面》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《29.虚 言》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《27.局 面》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《29.虚 言》】へ