記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《30.告 白1》

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式を正午に控えた当日の朝。
朝食を終え、喪服姿に身を包んだ国王の部屋に珍客の訪れがあった。
それは煌びやかな衣装に身を包んだ正妻である王妃と父である退王。それに、元筆頭王宮侍医で現退王の主治医と現王宮侍医補佐である者の4名の者だった。
王妃と退王の訪れは予測していたが、この衣装は解せない。
幾らセイラルの望みと言っても、やはり正式な国葬の場で、全ての状況を知り得た王族が表向きは挙式と銘打っているとは言え、この姿はあまりにも似つかわしくないと思えてならなかった。
それに、何故このような者等を付き添えて来るのかその意味さえ分からなかった。
王には全てが理解不能だった。

「如何したと言うのです。ご自分の侍医まで連れられて来られる程、今日の体調は御心配な状況なのですか?」

とりあえず、その侍医等の付き添い理由が知りたくて声を掛けてみた。

「いや。私の体調は全く問題ない。寧ろ良い程だ」

「では何故?・・・・」

「実は、お前に話しがあって来た」

「私にお話し・・・・ですか? 侍医もですか?」

「無論じゃ」

益々解せない・・・・。

「話を伺います。どうぞこちらへ・・・・」

そう思いながらもこの状況は『拒否する事等許さない!』と言ような緊迫感が何処かに漂っ
ていた。
このような日に、他者を伴い部屋へ訪れる事事態通常では考えられない異常事態だった。
一体何を考えて居るのか?

王は給女に茶の用意をさせると皆をリビングスペースにあるソファーへと導いた。


紅茶を一啜りして、カップを置くと王は緊張した面持ちで尋ねた。

「で、お話しと言うのは?」

今日は王太子セイラルの国葬だ。
それ以外に何かあるのかと耳を研ぎ澄まし話を聞いてみれば、思いもよらぬ言葉が返って来た。

「17年前公になった、セイラル暗殺事件を覚えているか?」

今何故その様な事を?
怪訝に思ったが、その父の問いかけがあまりに真剣な物言いだった為、己も真剣に答えた。

「勿論です。当時私も随分心配致しました。犯人の所在が掴めぬまま時が過ぎ、このままでは今後も命が危ぶまれる結果にも成り得るとの事で、王妃の実家であるジナスに預けたのですから・・・・。ですが、それがこの様な結果になろうとは・・・・」

ずっと傍に居ない息子ではあったが、王にもそれなりの親心はあった。
幼少期のあの利発でいつも『父上!』と、屈託のない笑顔で微笑み掛けられた姿が突如思い出され、思わず目頭が熱くなった。

「実はその事でお話しがあるのです」

王妃も何時になく真剣な眼差しだ。一体何があると言うのだろう。
あれ程毎日地下に眠る息子の許へ甲斐甲斐しく通っていた沈んでいた王妃の面影は何処にも無く、国葬を前に一体何を考えているのか?
全てが疑問だらけだった。

「真犯人が分らぬ以上、戻って来た所でセイラルの身が危険な事には変わりない。そこで私は王妃とある奇策を考えた」

続く父の言葉に胸の鼓動が大きく跳ねた。

(何だ? この何時に無い威圧感は・・・・)

「その‥‥奇策とは・・・・?」

「セイラルが戻るまでに犯人を捕らえることが叶わなければ、替え玉を立てようと言う話になったのだ」

「・・・・かえ・・・・玉!?」

思いもよらぬ話の展開に、王は更に身を固くした。

「そうです。セイラルが不在の中、貴方がセイラルの為にどれだけ手を尽くして下さるのか私は期待致しておりました。ですが、貴方は何もして下さらなかった・・・・。側妃の周囲に怪しい人間ははびこっておりましたのに・・・・」

「・・・・それは!!」

王子を産むと言う大役を果たしてくれたナジリルにあらぬ話を耳に入れ、心配を掛けたくなかった。
それ故身近な周囲を騒がせる事等したくは無かったから、大きく騒ぎ立てる事はしなかった。
だが、何もしない訳では無かった。一応その者等の調書は取った。

「貴方が手ぬるい事ばかりするものですから周りは最低限の働きしか出来ませんでした。それでも退王様は当時何とか掘り下げようと動いて下さいましたが貴方はこれ以上ナジリルの周囲を調べる事はないと深く追求する事に同意して下さいませんでした。それ故やっと追い詰めたのに物的証拠を押さえる事もままならず、事件は結局未解決のまま時が経過してしまいました。セイラルがこの地を離れてしまえば再犯もありえない。でも、犯人が捕らえられてい無い以上再び戻って来れば危険は伴います。ですから私はあの子にこう言ったのです。『従者として戻ってきなさいと・・・・』そうしなければ戻って来たとて同じ事。真の犯人が掴めぬ以上、戻れば再びセイラルの身に危険が及ぶことは目に見えていましたから」

「では、・・・・あの亡くなったセイラルは?」

「替え玉です」

王はその言葉に息が詰まるほどの驚愕を感じ、慄いた。

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