記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《32.呵 責》

 ←『記憶の彼方とその果てに』休載のお詫び&今後のお知らせ →記憶の彼方とその果てに -第3章-《33.脱 出》
ナチェリア国王太子セイラル王子の国葬の日、当日。
何の因果か昨夜の雷雨が嘘のように晴天に恵まれた。
セイラル王子の死後天候はいつも雨だったり曇りだったりと言う愚図ついたものが続いており、ナチェリアの国民が神と崇めるナイチ神の神々もきっとセイラル王子の死を嘆いているのだろうと思っていたが、違ったのだろうか・・・・。
このような日にセイラル王子の希望とは言え、純白のウェディングドレスに身を包んだ自分の行いは神を冒涜するものでは無いのだろうか?
いいえ。許されなくても良い。自分はマジミール様に付いて行くと決めた。
セイラル王子の遺言としてでは無く、マジミール様の為にこの衣装に袖を通したのだ。
だが、どう言う訳か晴天に恵まれ、神々がそれを許し導いてくれているような錯覚に一瞬囚われたが、どう考えても自分の行いはとても神々の許しを得られるとは思えず、気分はとても晴れ渡った空のようにはなれなかった。
いっその事昨夜までの悪天候が続いてくれた方が心は幾分か楽だったかもしれないと思えてならなかった。

昨夜は結局今日の事が気にかかり少しうつらうつらはしたが殆ど眠れなかった。
窓辺から差し込む陽射しはとても眩しく、寝不足の乾燥した瞳にはとても厳しく感じられた。

今の心境は正直、セイラル王子の婚約者と言う立場を何もかも捨て去りたい気分でならなかった。
そうすれば何も知らずに婚儀と思い城に赴く来賓等と同じ心境で居られ、心は楽になれたのに・・・・。

「何だか私怖いわ・・・・」

化粧を施されながら、アーリアが思わず口にした言葉だった。

「心中お察し致しますが、でも・・・・、それが王太子殿下のご遺言であるのならば、叶えて差し上げたいとお決めになられたのはアーリア様ご自身なのですから、お心を強くお持ち下さい。“せめて王太子殿下の最後の望みを叶えてやりたい”と願うアーリア様の深く優しいお心は、きっと皆様方にも伝わる筈ですわ」

そう言い終えた途端、鏡に映る指でそっと目頭を拭うターニアの姿に心がズキリと痛んだ。

「ターニア・・・・」

「申し訳ございません。お嬢様を差し置き、私が涙して・・・・。さぁ、髪は出来上がりました。ティアラは今お付けいたしますか?」

「いえ。それは良いわ。控えましょう」

装飾品は豪華なものにはしたくなかった。
そこまでするのは幾ら何でも躊躇われたのだ。

ターニアは、依然アーリアの想い人がセイラル王子の第一従者マジミールである事を知らない。
自分に対し、純粋に婚約者である王太子を挙式間近に喪い、悲しみに暮れる中に有りながらも健気にも遺言を聞き入れ純白のドレスに身を包む優しいお嬢様だと思っている。
故にアーリアを気遣い常に優しい言葉を投げかけてくれている。
これ程までに自分を気遣い尽くしてくれているターニアに、ずっと黙ったままで居る事は何処か騙し続けている気分になり、何だかとても後ろめたく感じられた。

今ターニアに本当の事を明かしたら、どうなるだろうか?
きっと呆れられる・・・・。
ターニアには隠し事をしたくはないと思いながらもずっと黙って来た。
それは全てマジミール様との関係を拒絶される言葉を聞きたくなかったからだった。
ターニアならばきちんと話せば分かってくれるかもしれない。
けれど、そう思いながらもマジミール様との仲を告げる事が出来なかったのは、自分のお嬢様が一国の王太子に見初められたと言う事を我が事の様に喜び、誇りとし語る様子が随所に見受けられたからだ。
そのような事に関係なくターニアならばきっと自分を引き続き大切に思ってくれるであろうと思いながらも、何処かで今の状況を話せば失望されてしまうのではないかと言う疑念が拭えなかった。
ターニアとの間には侍従関係だけでは測れない信頼関係はあると思う。
だが王太子の婚約者としての立場を逸脱し、セイラル王子の理解があったとは言え他の者との間に深い秘密の関係を作ってしまった自分は、ターニアにとっては裏切りとも取れるべき主ではないかと思えば後ろめたさがあった。
出来る事ならば、これからもずっとターニアには傍に居て支えて欲しいと思っていた。
それ故、ターニアならば分かってくれると思っている反面、もし拒絶されてしまったらと思うと怖くて告げられなかったのだ。
身を挺してまでいつも自分を守ろうとしてくれるターニア。
今日の葬儀が終わり、喪が明ければきっとマジミール様は自分との仲を隠すと言う事もしなくなるかもしれない。
ならばせめてターニアにはマジミール様との関係が公になる前に伝えなければならないと強く思った。
告げればターニアとの今までの様な関係は崩れてしまうかもしれない。
けれど、マジミール様との関係を絶つ事に比べれば、どんな事があろうと耐えられる筈だと心に強く思った。

何処か不安気な面持ちをそっと見守る優しい視線があった。
そんなアーリアのターニアに対する想いを知ってか知らずかファンネが耳元でそっと囁いた。

『大丈夫ですよアーリア様。マジミールを信じているのでしょ?』

アーリアは小さくコクリと頷くと踵を正し小さく微笑んだ。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村




総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【『記憶の彼方とその果てに』休載のお詫び&今後のお知らせ】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《33.脱 出》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『記憶の彼方とその果てに』休載のお詫び&今後のお知らせ】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに -第3章-《33.脱 出》】へ